きらきら☆スイーツバイキング～魔法のプリンを添えて！？～｜リアクション

きらきら☆スイーツバイキング～魔法のプリンを添えて！？～

　この夏は、落合まゆらにとって、かなり厳しいものだった。
　言ってしまえば、何かと物入りだったのである。
　酷暑の中、安物のエアコンが壊れて思い出したくもないような大変な目に遭ったのも、まだ記憶に新しい。
　その後、何とか新品のクーラーをゲットしたものの、
「おかげで、電気代が結構なことになったっていう……」
　星ヶ丘の『ネコット』の前で、まゆらは深い深いため息を零した。
　クーラーの電気代は、新品のそれでも馬鹿にならない。
　思い起こされる、倹約また倹約の日々。
　けれど、今日は！
（バイトのお給料がちょうど入ったところだし！　このタイミング、これはもう、突撃するしかない！）
　いざ！　と、まゆら、倹約生活の鬱憤を晴らすべく、『ネコット』店内へ。
　途端、ひやり、心地の良い冷気と、芳しい香りがまゆらを包む。
　先ほどとは異なる、感じ入るような息が唇から零れ落ちた。
　胸をときめかせる甘い匂いと、その香を発するきらきらしいばかりのスイーツ達！
　まゆらの目の前に並ぶそれらは、もう、見た目から美味しい。断言できる。
「これだけのスイーツを９０分間食べ放題で１５００円って、マジ？」
　ついつい、声が漏れた。
　ハッと我に返って、いそいそとバイキング用の皿を手に取るまゆら。
（さーて、何から食べようかな～）
　あれも美味しそうだし、こっちも気になる。
　え？　今運ばれてきたケーキは、もしや作り立て！？
（これはもう、目についたものを片っ端から皿に乗せていくしか……！）
　心の中で拳を握り、限界に挑むかのように、皿の上を埋めていく。
　スペシャルなフルーツタルト、気分も上がるマンゴーのババロア、しっとりずっしりチーズケーキ。
　ゴージャスなメロンのショートケーキも外せないし、大人なティラミスにも心惹かれる。
　カスタードと苺が覗くミルフィーユ、特製マロンクリームがそびえ立つモンブラン。
　パッションフルーツのムースにタルトタタン、爽やかなレモンパイ、エトセトラエトセトラ……。
　目に付いた甘味を余すことなく皿に並べて、まゆらは揚々と席へ向かった。

※

「なにこれ、いやー、本当においしい！」
　燦めくようなフルーツタルトを口に運んで、まゆらは声を華やがせた。
　次は……メロンのショートケーキ！　決定！
　もぐもぐと口に味わえば、幸せに、口元が緩んだ。
「これ全部食べても１５００円だなんて、最高！　次は、うん、レモンパイにしよう！」
　サックサクのパイ生地と、甘酸っぱいフィリングのコラボレーションたるや！
　こういう具合で、まゆらはどんどんずんずん、ひたすらにスイーツを食べ進めた。
（もう、何食べてもおいしい！　……けど、流石にちょっと、口の中が甘くなってきたかな……？）
　ここで登場、伝家の宝刀・ブラックコーヒー！
　喉に流せば、奥深い苦みが、一旦舌をリセットしてくれる。

「よーし、まだまだ食べなくっちゃね！」
　スイーツばかり食べていては飽きてしまうので、今度は軽食を取りに行くまゆら。
　サンドイッチ各種に、生ハムと枝豆のクリームパスタを少々。
　時折それらを摘みながら、これでもかと、食べる、食べる。
　勿論、魔法のプリンも忘れない。
　口に入れた瞬間、
（――ふわぁ、）
　と、まゆらは表情を蕩けさせた。
　今まで食べたこともないようなトロトロ感に、すっかり全面降伏ならぬ、全面幸福状態。
　ひと匙、またひと匙と滑らかな甘さを口に楽しみながら、
（願いごとがが叶うというけど、本当かな？）
　と、まゆらはふんわりと思案して、軽く首を傾けた。

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