うさぎが質屋を襲撃しました。現場からは以上です。｜リアクション

うさぎが質屋を襲撃しました。現場からは以上です。

【緊急指令　うさぎを転がせ！２】

「おお、本当に二本足のうさぎだ」
「……」
　シーサイドのとある一角。質屋の陰で張り込みをしていた北里雅樹と椎井莉鳥は、その目標となるうさぎを、いともあっさりと見つけてしまった。
　現地入りした二人の側にある、質屋のショーウィンドウが見える所で待機していたところ、タイミングが良かったのか五分と待たずに、どこからともなく一匹のうさぎが鼻を鳴らしながら歩いてきたのだ。
　まだ夜ではなく、周囲の目もある。だが、何しろ興味本位で近づき携帯のカメラを向けても写らない為、皆、真夏の蜃気楼やら錯覚としか判断出来ないで、首を傾げてはその場を立ち去っていくばかりなのだ。

「うん、ここはやっぱりキラキラしてるなぁ……。一人でもいっぱい欲しいなぁ……もう、ここで──」
　距離が近い。そして言葉と共に、うさぎは爆弾『うさきんぐα』を取り出した。
　とっさにそれが危険物だと判断した莉鳥は、即座にその場に飛び出した。

「そこまでよ。今なら痛い目には遭わせない」
　指先をうさぎに向ける。莉鳥のろっこん【スタンハンド】の発動条件の一端だ。指先から僅かに細かな火花が散った。後は気を集中させるだけで、人が気絶する規模の電気が放出される。
　その一歩手前の状況。だが、もし人が拳銃を突きつけられた際と酷似する、この緊張感にうさぎは堪えられなかった。
「ぴゃっ！」
　あまりの怖さに、莉鳥の方を振り向く余裕もなく、うさぎは文字通り脱兎の様相で逃げていく。
「逃げたな」
「あっちから回って！」
「はいはいっと」
　脇目も振らずに逃走に入られた事に驚きつつ、莉鳥は慌てて、その場を観察していた雅樹に協力要請を出した。
　それを聞いた雅樹は、うさぎが入って行った方向とは反対の建物の路地裏へと走っていく。シーサイドタウンでもこの辺りは入り組んでいる。半ば博打だが、雅樹には何故だかふと、どの辺りで莉鳥がうさぎを追い込んでくるか何となくだが予測がついた気がした。
　走り、待ち構える。すると、本当にその場所にうさぎと、それを追い立てていた莉鳥が飛び込んで来た。
「ぼく、わるいうさぎじゃないよぉ……！」
　完全に挟み撃ちにされて、退路を断たれたうさぎが、涙目になりながら莉鳥を見つめてきた。だが、莉鳥は一度警告している。故に、心は氷の如く揺らぐことなく、いつでもろっこん使用可能な状況のままに改めてうさぎに詰め寄った。
「大人しくしていれば、今なら痛い目には遭わせない。
　話を聞かせてもらおうかしら」

　そして、うさぎが逃げる気力をなくしたところで、莉鳥は情報交換を行っていた志波武道に連絡を入れた。
『うさぎを捕まえたのだけれども、どうしたらいいかしら』
『こちらでもうさぎを確保したから、連れてきてくれると助かるかも。皆の情報のお陰で拠点が見つかったから、場所は──』