悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！｜リアクション

悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！

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「お前はただの人間だ！　お前はただの人間だ！」
　キックボードで軽やかに、虚栄心はアウトレットを駆け回る。
　『人間惨禍』を拡声器でめちゃくちゃに拡散し、手当たり次第に混乱をばらまきながら。
　そんな彼女が、不意に足を止めた。
　視線の先に居るのは、声を聞いても変わらぬ様子の人影。
　つまりもれいびだ。
　じくじくと刺激される劣等感に背中を押された心は、キックボードを無茶苦茶に蹴ってもれいびを追いかけた。

　角を曲がったすぐのところで、修は心を待ち構えていた。
（彼女は確か、杜の湯で島岡先生を助けていた……。洗脳されてしまったのか）
　誰であれ、悪魔探しの邪魔をされるわけにはいかない。
　追いかけてきたところを、一気に制圧しようと修は待つ。
　制圧しようと修は待つ。
　修は待つ。
　待つ。
（……来ないな）
　他のもれいびが止めてくれたのか、それとも他の標的を見つけたのか。
　いつまでもジッとしているわけにもいかず、ひとまず手鏡で角の向こうを覗く。
　真っ暗な瞳が、鏡越しに修を見ていた。
　ヘドロのようにうごめく視線。修の背筋を、ぞくりと怖気が走る。
「――きゃはっ♪」
　どこかひび割れたような笑い声。
　虚ろな笑みが屈みいっぱいに映ったかと思うと、角を曲がって現れる。
「キョエエエエエエー！！！！」
　不協和音じみた奇声をあげて、心が襲いかかる。
　拡声器のストラップを掴み、モーニングスターの如くに振り回す。
「――なっ！」
　咄嗟に鞄を盾にする修。
　金具がひしゃげ、電源がついたままの拡声器から耳に響く異音が漏れる。
　鞄を叩きつけるように押し出し、なおも拡声器を振り回す心を思いきり突き飛ばす。
　そのまま走って、角を曲がって。
　心が追いかけてきたところに、すかさず足払い。
　――ゴイン、と。
　バランスを崩した心の頭を、振り回していた拡声器が直撃する。
「キョェッ！？」
　断末魔の奇声をあげると、そのまま床に沈んで動かなくなるのだった。

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