シエスタ・フェスタ！｜リアクション

シエスタ・フェスタ！

●遅くなりましたがランチタイム

　可愛らしいイラストと共に、二ページに渡りひとつの料理――しかも人を馬鹿にしているのかと問いたくなるほど簡単な料理。例えばおにぎりなど――の作り方を説明していた。
　桜花寮のキッチンには彼女がひとり。ふん、と桃川圭花は鼻を鳴らして、ページを捲った。
　料理は、まぁ普段はしないけれど……以前家庭科の白沢絢子先生の手伝いをしたことはある。だからさすがにそれくらいはできるはずだ。
　とはいえ、このレシピ本自体その際に受けたアドバイスを元に購入したものなので、あまり斜に構えるのも考えものだった。
　きゅるりと腹の中が渦巻いた。
　なんにせよ、あまり時間は掛けたくない。
　冷蔵庫の中身と見比べながら、圭花は決断を下す。

　まずトマト、人参、パプリカ、玉葱、きゅうりを適当なサイズに切り刻んでいく。無論、皮をむくのも忘れない。
「えっと、」
　トマトの皮は剥くんだっけ？
　圭花は悩んでから、口の中にひっつく皮を想像して、剥くことに。
　やさしく、潰さないように気をつけながらトマトの肌にピーラーを当てる。
　けれど、いや予想はしていたことだが、ツルツルと滑ってなかなか思うようにいかない。
「……ん」
　その勢いで指を切りそうになって、圭花はトマトを置いた。
　まだ多少皮は残っているが、このくらいは気にすることはないだろう。
　他の野菜と一緒に、トマトをミキサーの中に突っ込み、それから水を含め調味料も注ぎ込む。
　蓋を閉めて、スイッチを、ON。
　ぎ、ギギギ。最初歯が噛み合わないような音がして、三秒ほど待ってようやくギュインギュインと滑らかに回り始めた。
　すっかり野菜の形がなくなると、「適当、って嫌な書き方するわね」とぼやきつつ、塩コショウを振り入れ、あとは一瞬だけでも冷やしておく。
「ん、まぁいい感じなんじゃないかしら？」
　次に圭花は卵を器に割って、牛乳と砂糖を加えて泡だて器で混ぜる。
　そこに食パンを浸けこんで置く間に、フライパンを温める。
「バターが、５ｇ？」
　５ｇを図るにはどうしたらいいんだろう。
（確か……小さじが５グラムだった気がする）
　残念ながらさじは体積を測るものなので、５ｇ、ではなく５ｃｃ。
　それに気がつくことなく、小さじにたっぷり（！）のバターをフライパンの中に落とした。
　ジュワという気持ちのいい音と共に舞い上がる、バターの香り。
　今すぐにでも齧り付きたくなる衝動を抑え、パンの器に手を取った。
「……あんまり染み込んでないわね」
　卵の液はたっぷり残っている。フライ返しで押し込んで、早く染みこむようにと促して、ようやくいくらか液を吸い込んでくれた。
「よし」
　パンを焼こう。フライパンを見ると、「あ！」。
　バターが焦げかけていた。
　それでもどうしていいのかわからずパンをフライパンの中に入れるのであった。