狂暑｜リアクション

狂暑

○寝子高水乱（ウォーターバトル）事件

「オラオラオラーーー、どいつもこいつも濡れちまえ！」
　夏休みの寝子高にてシャツもパンツも濡れ透けになりながら、水を滴らせつつホースを振り回すのは。
　普段は可愛く爽やかな羽生碧南でした。

　朝は普通に、バスケ部の練習に訪れた碧南。
　しかしあまりの暑さに頭が痛くなってきました。
　全身を汗というか水分が押し出されて、もはや干乾びる寸前のように思えます。
（これって七輪であぶられるサンマみたいじゃない？）
　そんなイメージが浮かびます。七輪のサンマから、観光大使のサンマさんへとイメージは変わり。
（サンマさんもこんな日はきっといい感じにこんがり焼けてるに違いない）
　そんな思いを振り切るように水筒をあおりますが。
「あ、もうない……」
　灼熱の体育館で練習していると、水筒の水などまさに焼け石に水です。
（頭蓋骨の内側で、ギスギスバキバキと変な音を立てて脳みそが爆裂しちゃいそう）　
　なんというかもう、地獄の様相。
　そうこうしているうちに頭がいよいよおかしくなってきた気がして。

　休み時間に入り、碧南はフラフラと体育館の外へ出ました。
　目の前には蛇口とつながったホース。
　引き寄せられるように、キュッキュと蛇口をひねり。
　あふれ出る水に手を伸ばせば、冷たさに全身を貫くような快感。
「あ～！」
　すでに８割ほど溶解していた理性は、そこで完全に吹き飛んだのでした。
　後を追うように外へ出てきた他の部員たちも、水のそばに近づいてきます。
　そんな中碧南は、Ｔシャツとハーフパンツのまま全身に水をかけました。
　濡れた体の線がくっきり浮かびあがり、目をこらせばいろいろ透けて見えてしまっていますが、そんなのは知ったことではありません。
「ヒャッハー！！」
　雄叫びを上げてその辺の子に水を浴びせました。
　キャーキャーと悲鳴が上がる中、手当たり次第に水を浴びせまわり、手近にあったバケツで他の子も碧南に反撃します。
　水をかけられた拍子にホースを別の子に奪われ。
「水、返してよ！」
　ホースを持って逃げる子を追いかけようとした碧南の目に映ったのは、消火用のスプリンクラーでした。

　プシャー！！！

　迷いなくひねられた栓は、学校中でウォーターバトルが展開される引き金となりました。
　後に『寝子高水乱（ウォーターバトル）事件』と呼ばれることになるのですが……
　今この瞬間、冷たい水を全身で感じる碧南は、どうしようもなく幸せなのでした。

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