狂暑｜リアクション

狂暑

○二人の暑い時間
　
　目が覚めたら、ベッドで朝チュン状態でした。
「え……あ……紗月……？」
　初瀬川理緒は、一瞬何が起きたかわからず挙動不審に陥りました。
　ベッドに広がる解かれたロングヘア。裸の自分の横に、やはり裸の恋人。
「よかったよ、理緒ちゃん……」　
　佐和崎紗月が、からかうように笑いました。
（……え、あたし……何しちゃったんだっけ？）
　焦りながら理緒は、あの熱かった時間のことを思い起こしたのでした。

　グラビアアイドルであり高校三年生である理緒は、『偏差値30からの大学受験』企画を事務所から言い渡されています。
　恋人である紗月と共に猛勉強したのが功を奏し、期末テストでは急激に成績が伸びていると評価されました。
　ここはもう一頑張り、と夏休みに紗月を桜花寮に招いて受験勉強を始めたのですが……
「これ……クーラー、効いてるの？」
　凶悪な暑さに余り体力のない紗月は早くもバテ気味。セミロングの髪が首筋に貼りつきます。
「全然はかどらない。今日に限ってエアコンぶっ壊れるとかありえん」　
　元々勉強嫌いな理緒、その上にこの暑さではかないません。
　二人とも全身汗まみれです。
「もうダメ。勉強どころかそもそも熱中症になりかねない」
　ペットボトルの麦茶はもう空でした。
「部屋を出て買いに行くのも億劫だし。あ、扇風機回そう」　
　理緒はクーラー代わりに扇風機のスイッチを入れましたが、温い空気がダラダラかき回されるだけでした。
　耐え切れずテーブルに突っ伏す紗月。
「ああ、もう鬱陶しい！」
　理緒はポニーテールにしている髪のリボンを乱暴に解きました。
　髪がさらりと広がりますが、それで涼しくなるわけもありません。
　二人部屋を一人で使っている理緒には、気兼ねすべき同居人もなく……
　ごそごそと気配を感じたので理緒に視線を向けた紗月は、ぎょっとしました。
「こんなの暑いんじゃー！」
　理緒は今しがた着ていたキャミソールワンピースを脱ぎ捨てたところでした。
「ちょ、ちょっと」
　さらに下着まで脱ぎ掛けたところで、紗月が慌てて止めに入りましたが。
　暑さで精神がイッちゃった理緒は構わずキャストオフ！　
　グラビアアイドルとして活躍中の理緒の全裸が、惜しげもなくさらされました。
　
　唖然としている紗月に、理緒はエロく妖艶な笑いを浮かべて迫ってきました。
「さーつーきー、そんな余計なもの脱いじゃいなよ～」
「やっ、やめて……」
　抵抗する紗月ですが、理緒は手慣れていました。
「抵抗されると燃えるんだよね～」
　あっと言う間に服を脱がせてしまい、二人は一糸まとわぬ姿になりました。
　あれよあれという間に、紗月はいつの間にかベッドに押し倒されて。
　理緒の大きな胸が押し付けられました。
「紗月ぃ……二人でこのまま一緒に蕩けちゃおう……」
「理緒ちゃん……」
　理緒の舌が、紗月の舌に絡みつきました。
　その甘いキスに溺れながら、紗月は思います。
（キスは何度かしたけど、こんな形で私の『初めて』を理緒ちゃんに捧げるなんて……でもいいか）
　臆病で内向的な紗月ですが、理緒は離れたくない大切な恋人でした。
　そして理緒も自分を愛してくれていると感じていました。
（理緒ちゃんが望むなら……）　
　覚悟を決めた紗月は、唇を離された後、理緒の動きを目を閉じて待ちました。
　しかし。
「……？」
　しばらく待っても理緒は何もしようとせず。
「ｚｚｚ……」
　やがて規則正しい寝息が聞こえてきました。
　まさか、と目を開けてみると、案の定理緒は眠ってしまっていました。
　疲れ果てたのか、紗月の胸の中で。
「もう……」
　ほっとしたようなちょっと残念なような気持ちで、紗月はしばらく理緒の寝顔を見ていました。
　理緒を跳ね除ける気にもならず、そして疲れた紗月もそのまま眠ってしまったのでした。

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