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NECO MUSIC FES 1370！
『NECO MUSIC FES 1370！』のロゴが入ったTシャツはネコフェススタッフの証。
「はーい、そこの方、あんまり広がらないで下さーい」
カッ、と照り付ける太陽の苛烈さにも負けず、北里 雅樹は拡声器を手に観客整理の仕事に勤しんでいる。
高校三年生、受験勉強真っただ中ではあるものの、気分転換は大切。加えて大学進学後の資金稼ぎにネコフェスの短期バイトはもってこいというもの。
「聴きたい曲があるのはよおーっく分かります、実を言えば俺も聞きたい！ ですが走らないでー、怪我しちゃったら楽しいお祭りも台無しですー」
軽口も交えてメインステージに向かう客の誘導をする先輩を感嘆の眼差しで見つつ、同じくロゴ入りTシャツ姿の恵御納 夏朝は周辺警備と清掃の仕事に精を出す。
(……今年のネコフェスも、バイト頑張ろう)
「ネコフェスへ、ようこそ……楽しんで行ってくださいね！」
通り過ぎていく客に朗らかに声を掛けつつ、
「今年は客席が用意されておりませんのでその点ご留意くださーい！ ビニールシートやパラソルのレンタルもございますのでご活用くださいねー」
ついでに案内もしつつ、手にしたゴミ袋に見つけたゴミを火ばさみで拾って放り込んで行く。流石に海の浮かぶゴミまでは拾えそうにはないけれど、手が届く範囲のゴミは見つけ次第即分別回収。それが夏朝の今日のお仕事。
事前にパンフレットに目を通して、ステージの順番や周辺屋台の情報はあらかた把握している。お客さんに案内するためでもあるけれど、
(休憩時間になったら)
見回りも兼ねて目をつけた美味しそうな屋台で買い食いを楽しんだりするためでもある。
「恵御納」
「はい、北里先輩」
バイト仲間の雅樹に呼び止められてみれば、観客の誘導を主に担当している雅樹の手には拡声器と、いつのまにか小さな男の子。
「迷子、ですか」
「一緒に頼めるか」
知らないお兄さんに捕まって不安そうな男の子に、夏朝はさっと取り出した猫型パペットのハルくんを手に装着してみせる。
「キミ、迷子かにゃ」
作り声で話しかけてみれば、男の子はくすりと笑った。
「だいじょぶにゃ、ハルと一緒に行こうにゃ」
うん、と頷く男の子の頭をそっと撫でて、夏朝は雅樹を伴い救護室併設の迷子センターに向かう。
迷子センターで待ち受けていた母親に男の子を無事引き渡し、
「助かった、ありがとな」
「お母さんが待っててくれて良かった、です」
ふたりで顔を見合わせて一安心したのも束の間、具合の悪そうな女性に声を掛けられ、雅樹は女性と共に救護室へ向かった。
(忙しい、けど……)
てきぱきと立ち働く先輩の背中を見送り、夏朝は警備と清掃の仕事に戻る。大盛り上がりのステージや水着姿の人々で賑わう海岸を一眺めして思うのは、ここ最近の悪魔絡み神魂絡みの騒動。今回ももしかしたらと不安ではあったけれど、
(普通に開催されて良かっ……)
安堵の笑みを滲ませかけたこげ茶のたれ目がぱちり、瞬く。
視線の先にあるのは、海岸の一角に突如として現れた小型観覧車。不審に思って近づけば、そこにあったのはミラーメイズに回転木馬、どれもこれも小規模にまとめられた、
(……移動遊園地？)
奇妙な球体関節人形の着ぐるみスタッフとハイレグ水着にシルクハット姿の女支配人のいる、薔薇や百合の造花で妙にキラキラして見える遊園地に、夏朝は眉根を寄せる。
(何だろう……妙に、)
すごく怪しい。
着ぐるみに見えるスタッフも、どこか周りと浮いて見える女支配人も。以前寝子島を襲った悪魔たちとどこかしら似たような雰囲気を感じなくもない。
(楽しませる為に来てるだけならいいけど、もし寝子島普通破壊の尖兵や手段だったら……)
警戒の視線を巡らせる。とはいえ、遊園地の敷地内を歩く人々は皆楽しそうだ。恋人同士が多いようにも見えるのは夏の海辺だからではある、のだろうか。
(何事もなければそっとしておくべきかもだけど)
そう言えば、パンフレットにも移動遊園地の記載はあった。運営の許可は得てはいるのだろう。
念のためにスマホのカメラで外観を遠くから撮影だけして、夏朝は小さく息を吐く。現時点で何事もないのであれば、平穏を守る為にも突入や女支配人への攻撃は避けた方が良さそうだ。
(今年のネコフェスや、あらゆるイベントが)
祈るように思う。
(平穏に進み、フツウを壊す存在に利用されませんように)
そうしてから、ふと、瞳を和らげる。遊園地内でとても楽しそうに客に声を掛けている女支配人を眺める。彼女が、フツウを壊す存在でないのであれば。
(……そうでないなら、楽しんでいってほしいな)
なんといっても、寝子島はとっても楽しいところだから。
「はーい、そこの方、あんまり広がらないで下さーい」
カッ、と照り付ける太陽の苛烈さにも負けず、北里 雅樹は拡声器を手に観客整理の仕事に勤しんでいる。
高校三年生、受験勉強真っただ中ではあるものの、気分転換は大切。加えて大学進学後の資金稼ぎにネコフェスの短期バイトはもってこいというもの。
「聴きたい曲があるのはよおーっく分かります、実を言えば俺も聞きたい！ ですが走らないでー、怪我しちゃったら楽しいお祭りも台無しですー」
軽口も交えてメインステージに向かう客の誘導をする先輩を感嘆の眼差しで見つつ、同じくロゴ入りTシャツ姿の恵御納 夏朝は周辺警備と清掃の仕事に精を出す。
(……今年のネコフェスも、バイト頑張ろう)
「ネコフェスへ、ようこそ……楽しんで行ってくださいね！」
通り過ぎていく客に朗らかに声を掛けつつ、
「今年は客席が用意されておりませんのでその点ご留意くださーい！ ビニールシートやパラソルのレンタルもございますのでご活用くださいねー」
ついでに案内もしつつ、手にしたゴミ袋に見つけたゴミを火ばさみで拾って放り込んで行く。流石に海の浮かぶゴミまでは拾えそうにはないけれど、手が届く範囲のゴミは見つけ次第即分別回収。それが夏朝の今日のお仕事。
事前にパンフレットに目を通して、ステージの順番や周辺屋台の情報はあらかた把握している。お客さんに案内するためでもあるけれど、
(休憩時間になったら)
見回りも兼ねて目をつけた美味しそうな屋台で買い食いを楽しんだりするためでもある。
「恵御納」
「はい、北里先輩」
バイト仲間の雅樹に呼び止められてみれば、観客の誘導を主に担当している雅樹の手には拡声器と、いつのまにか小さな男の子。
「迷子、ですか」
「一緒に頼めるか」
知らないお兄さんに捕まって不安そうな男の子に、夏朝はさっと取り出した猫型パペットのハルくんを手に装着してみせる。
「キミ、迷子かにゃ」
作り声で話しかけてみれば、男の子はくすりと笑った。
「だいじょぶにゃ、ハルと一緒に行こうにゃ」
うん、と頷く男の子の頭をそっと撫でて、夏朝は雅樹を伴い救護室併設の迷子センターに向かう。
迷子センターで待ち受けていた母親に男の子を無事引き渡し、
「助かった、ありがとな」
「お母さんが待っててくれて良かった、です」
ふたりで顔を見合わせて一安心したのも束の間、具合の悪そうな女性に声を掛けられ、雅樹は女性と共に救護室へ向かった。
(忙しい、けど……)
てきぱきと立ち働く先輩の背中を見送り、夏朝は警備と清掃の仕事に戻る。大盛り上がりのステージや水着姿の人々で賑わう海岸を一眺めして思うのは、ここ最近の悪魔絡み神魂絡みの騒動。今回ももしかしたらと不安ではあったけれど、
(普通に開催されて良かっ……)
安堵の笑みを滲ませかけたこげ茶のたれ目がぱちり、瞬く。
視線の先にあるのは、海岸の一角に突如として現れた小型観覧車。不審に思って近づけば、そこにあったのはミラーメイズに回転木馬、どれもこれも小規模にまとめられた、
(……移動遊園地？)
奇妙な球体関節人形の着ぐるみスタッフとハイレグ水着にシルクハット姿の女支配人のいる、薔薇や百合の造花で妙にキラキラして見える遊園地に、夏朝は眉根を寄せる。
(何だろう……妙に、)
すごく怪しい。
着ぐるみに見えるスタッフも、どこか周りと浮いて見える女支配人も。以前寝子島を襲った悪魔たちとどこかしら似たような雰囲気を感じなくもない。
(楽しませる為に来てるだけならいいけど、もし寝子島普通破壊の尖兵や手段だったら……)
警戒の視線を巡らせる。とはいえ、遊園地の敷地内を歩く人々は皆楽しそうだ。恋人同士が多いようにも見えるのは夏の海辺だからではある、のだろうか。
(何事もなければそっとしておくべきかもだけど)
そう言えば、パンフレットにも移動遊園地の記載はあった。運営の許可は得てはいるのだろう。
念のためにスマホのカメラで外観を遠くから撮影だけして、夏朝は小さく息を吐く。現時点で何事もないのであれば、平穏を守る為にも突入や女支配人への攻撃は避けた方が良さそうだ。
(今年のネコフェスや、あらゆるイベントが)
祈るように思う。
(平穏に進み、フツウを壊す存在に利用されませんように)
そうしてから、ふと、瞳を和らげる。遊園地内でとても楽しそうに客に声を掛けている女支配人を眺める。彼女が、フツウを壊す存在でないのであれば。
(……そうでないなら、楽しんでいってほしいな)
なんといっても、寝子島はとっても楽しいところだから。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年03月28日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年04月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年04月04日 11時00分
