夏のお泊り会、ゲストもいるよ♪｜リアクション

夏のお泊り会、ゲストもいるよ♪

☆お化け屋敷～　一心の場合

（お泊り会は去年も来たっすが、今年は自分にとって大きく違うところがあるっす……桃井さんがいるんっすよ！）
　５年生の剣崎一心は張り切っていた。
（夏休み前に遊びたいと言ってたら、こんなに早く叶うとは思わなかったっす。これも宿題をキチンと終わらせたからっすね！
　お泊り会は色々遊べるみたいっすから、どこかで一緒に遊ぶっす！）
　桃井かんなの行くほうへついていくと、廊下で立ち止まった。
（？　なんか不安そうっす）
　見ると、そこはお化け屋敷の前だった。
「お化け屋敷っすか！」
（オバケはちょっと怖いし、七夕の時みたいに変な事が起こるかもしれないから油断できないっす）
　それにかんなの表情が気にかかった。
（桃井さんがそんな顔しっぱなしは嫌っす！）
　一心の姿を見つけたかんなが声をかけてきた。
「剣崎もお化け屋敷行くの？」
　一心の心は決まっていた。　
「一緒に行くっす。いざとなったら自分が頑張って守るっす！」　
「べ、べつに怖いわけじゃないからね？　剣崎が怖いんなら一緒に行ってもいいよ」
　かんなは平静を装っていたが、さっきの不安そうな表情を見ているから、本心とは思えない。
「桃井さんを守るために頑張るっす。あとはぐれないように手も繋ぐっす」
「ええっ？　……」
　恥ずかしそうな顔で文句を言いかけたかんなだが、一心の差し出した手を黙って掴んだ。
「ここを出るまでは絶対離さないっすよ！　……それじゃ、行くっす」
（滅茶苦茶緊張するし恥ずかしいっすが、男は我慢っす！）
　お化け屋敷の中は暗くて、赤くなった顔が見られなくて済むのは幸いだと思う一心だった。
　でも汗ばむ手はごまかせず、やはり恥ずかしい。
　
（きたッスね！　今度こそ！）
　待ち受けるはリベンジに燃える桐子。
「うーらーめーしーやーッス！」
　恐る恐る進む一心とかんなの前に、白いお化けが飛び出してきた！
　一心はかんなを背中に隠しかばった。
「怖くないっすよ！」
　竹刀があれば構えたいところだが、去年と同じく受付で没収されている。
　怖いけど、本物のお化けではないだろうから攻撃はされないだろう。
　そう思いつつも緊迫した空気の中、シーツおばけがしゃべりだした。
「うーらーのーめーしーやーはーかーつーどーんーがーうーまーいーッス！」
「えっ？」
「何？」
　思いっきり怖そうに、桐子は言っているつもりであるが。
　言ってる事のシュールさに思わず固まってしまう二人だった。
　我に返った一心がかんなに声をかける。
「……行くっすよ」
「うん……」
　手をつないだまま、一心とかんなは先へ進んでいった。
「今のは怖がってたッスね！」
　ドヤ顔の桐子である。
「むー、おどかし疲れてお腹がすいてきたッス……後で模擬店で何か買い食いッス！」

「きゃっ！」
　突然現れた金色の仮面に、かんなは悲鳴をあげ、一心は強く手を握られたのを感じた。
「大丈夫っす！　桃井さん」
　自分も焦りながら、一生懸命かんなに声をかける。
（竹刀はなくても指一本触れさせないっす！）
　にらみつける一心に、黄金仮面のお化けはそれ以上追って来なかった。