携帯戦記カプセルギア　練習しよう、カプギアアスレチック！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　練習しよう、カプギアアスレチック！

　ギアケースを片手に現れたのは、瀬名由枝。
　細身で華奢な少年は、興奮した面持ちでロビーを見回す。
「オープンをずっと待ってたんだ。楽しみ･･････」
　自然に鼓動が高鳴る。不思議な予感だ。
　由枝にとってカプセルギアは、もちろん大事な趣味だが、最近はそれ以上のものになりつつあった。
　ギアのことを考えることが一日の中で多くなった。
　ギアを通して、新しい友達もできた。
　おとなしくて引っ込み思案だと自分のことを思っていたのに、ギアを通じて知り合った仲間なら普通にしゃべることができる。
　穏やかだと自分のことを思っていたのに、ギアのことになると、もっとうまくなりたい、強くなりたい、という気持ちがわいてくる。
　そんな自分が、すこし面白かった。
（もっと楽しく、たくさん遊べるようになるために――特訓するんだ！）
　グレーの瞳を輝かせる。

「やっほー！　来てたんだね！」
　そんな由枝に、声をかけてくる女の子が一人。
　振り返ると、彼女が抱えたギアケースが眼に入った。
　それで思い出す。あんな特徴的なギアを使えるのは、一人しかいない。
　環的子。由枝のカプギア仲間。
「一度、すごく動かしてみたかったんだよね･･････」
　んへへへと笑いながら、そっとギアを取り出して由枝に見せる。
　目鼻のない頭部に、黒い蛇腹の四肢が備わった全身。
　蛇めいた異形のギアを、的子は嬉しそうに見つめる。
「新しいカプギアの施設だって！　楽しみだなぁ」
　無邪気にギアに語りかける的子。
　緊張しつつも、由枝は眼を話せない。
　彼にとってギアは、ただのオモチャだった。
　けれど的子にとってはそれははじめから、遊び道具以上のものだったのだ。
　的子のギア操作は卓絶している。自分や、ほかのギアマスターとは、何かが根本的にちがうようなのだ。
　今日のアスレチックで、何かわかるかもしれない。
　的子だけじゃない。さっきちらりと見えたのは、青い量産型のギアを使う女の子。
（周りの上手なマスターみたいに動けないんだ。一瞬の立ち回りとか、身のこなしとか･･････）
「やっぱり、ああいうことができたら、楽しいんだろうな･･････。
　もっと、たのしく遊べるようになりたい」
　思わず漏れた独り言に、的子も全身でうなずきを返す。
　彼女もきっと、自分の思いをわかってくれるのだ。
（今まで見てきた何よりもっと･･････楽しく遊べるツールだから）　

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