携帯戦記カプセルギア　練習しよう、カプギアアスレチック！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　練習しよう、カプギアアスレチック！

「カプギアアスレチックへようこそ！」
（かなりの盛況っぷりね･･････）
　受付嬢の元気な声を聞きながら、八重崎五郎八は賑わうブース内を見回した。
　ぶち抜きのトラス構造の建造物をパーティションで仕切った建物に、資材を運び込んだだけの簡素な設備だったが、VRやアスレチックの設備は立派なもので、主催者側の力の入りようが伝わってきた。
　普段シーサイドタウンのホビーショップでバイトをしている五郎八。カプセルギアに関する情報も精力的に仕入れている。
『カプギアアスレチック開園！』の報を聞き、いち早く駆けつけた。
（シーサイドタウンの、カプギアスポット同士として、敵情視察･･････）
　それは冗談にしても。
　職業意識と興味本位、あとギア使いとしての本能的なものでやってきたのだが･･････。
「面白そうだしね･･････。
　――それにしても」
　こういったイベント事に詳しい五郎八、ぐるりと会場を見回す。
（人手、足らなくない？）
　一つ一つの設備の充実に比例するように、人員の不足が目立つ。
　オペレーターがスマホに向けて大声で怒鳴り、インストラクターが駆けずり回る。
　思った以上の盛況なのだろう。
「す、すいません、ギアが動かなくて･･････」
　おずおずとスタッフに声をかける少年、しかし走り去られて困惑する。
（いや、今日はお客だから、あまり出しゃばるのも･･････）
「え、ええと･･････」
「――ちょっと見せてね」
　言うなり五郎八は、おどおどする少年のギアを覗き込む。
「ここ、ここのインターフェースが緩んでる」
「あ、ほんとだ」
「それから初めてなら、あの講習会って出た方がよさそうだよ」
「ありがとうございます！　スタッフのお姉さん！」
　頭を下げる少年に、笑って手を振る五郎八。
　――――あの･･････。
　その背後からかけられる声。
　振り向く五郎八。
　その視界に飛び込むのは、めいめいギアを抱えた、一小隊の少年たち。
　――――ＡＩＣＯが動かなくなって･･････。
　――――ガチャが良いのがでなくて。
　――――スタッフに聞かないとわからなくて･･････。
　引き攣る五郎八。
　だが、瞬時に心を決める。
「はいはいじゃ、順番に並んで！」
　列を捌いて、相談を確認しつつ、ギアのコンテナボックスを開く。
　四体収納できるボックス、もちろん五郎八はサブも含めて4体常備。
　使わないかもしれないが、たしなみというものだ。
　そのうちの一つを開け、ギアを取り出す。

（アスレチックの救援にもいかないとね）

　優美な翼を陽光に照らす鷲獅子の姿を見て、歓声が上がる。
　猛禽型と龍型の特性を兼ね備える、五郎八チューンドのギア『グリフィージス』。
　計算され尽くした空中機動、バリアフィールドと鉤爪の殺傷力を生かした吶喊による一撃離脱の破壊力によって、勇名をとどろかせるギアだ。
　片手でＡＩＣＯを起動、スタッフに眼で合図を送るとアスレチックブースにグリフィージスをスタンバイ。
「おねーさん、がんばえー！」
　子供の声援に悠然たる笑みとサムズアップで応え、五郎八はギアにコマンドを送り込む。

（何をやっているんだろう、私･･････）

　鷲獅子の魁偉な姿が仮想現実の空めがけて跳躍する瞬間、そんな疑問が五郎八の頭をかすめた。

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