【星幽塔】第九階層　サルベージ！｜リアクション

【星幽塔】第九階層　サルベージ！

●沈没船引き上げ！

　輸送船や漁船が群れを成し、海原を島へ向かって進んでゆく。
　海中の沈没船と、ぷっかり浮かんだダンクレオステオスを曳いて、白い波を立てながら船は行く。
　漁船の船長たちは、景気よく大漁旗を掲げ、ご機嫌に歌を歌っている。
　冒険者たちは甲板で気持ちよく海風を浴びながら、その歌声に聞き入っていた。
「星幽塔にも大漁のときの舟歌があるんですね」
　人の姿に戻ったエリオットが感心していうと、海パン一丁のルークは腕組みして海の男風に言った。
「勇者の心得その９７、勝利はみんなで祝うべし！」
「ははは」

　島には多くの人が集まって手を振っていた。
　浅瀬まで来ると、沈没船につないだロープを今度は馬たちが引いた。
　やがて海中から姿を見せる沈没船。
　お日様の下に、その朽ちた船体を晒すのはいったい何百年ぶりであろうか。

　そして、沈没船以上に島民が熱狂したのは、続いて同じように引き上げられたダンクレオステオスである。
　昔から、『ダンクレオステオスが上がると島三つが潤う』と言われるくらい貴重な魚だと、のちに島の古老が語っていた。
　島の男たちが身長より長い刀身の包丁を持って来て、数人がかりでその場で解体をはじめた。
　剛糸輪で解体を手伝った亮が、食用、装備の素材用として持ち帰りたいと島の男たちと交渉しすると、男たちはからからと笑って言った。
「あんたらが倒した魚だ。一番いいとこもってけ！」
　そんなわけで、一番美味しいというホホ肉の部分と、顔と同じくらいの大きさの前牙を貰った。
「この肉で打ち上げ料理を作るかー」

「それにしても」
　と、砂浜に上がった沈没船を前に、サキリは腕組みする。
「この船、ただの漁船に見えるけどオーパーツと関係があるのかな？」
「オーパーツって浪漫があるよね」
　真白が言うと、サキリはすこしだけ肩を竦め、
「ロマンに水を差す様で悪いけどオーパーツって勘違いが多いんだよね」
　と斜に構えた様子だ。
「みんな～。お疲れさまだよぉ。疲れているところ悪いけれど、さっそく沈没船の中を確認するよぉ～」
　ピエロットが手招き、冒険者たちは藤壺がびっしり張り付いた沈没船の船内に立ち入る。

このページにイラストを設定する