赤い実鳴らそ、ほおずき市｜リアクション

赤い実鳴らそ、ほおずき市

　お土産をひととおり見物して参詣も終えて、
「野々さん、何か食べようか？　僕はかき氷が良いな」
　と佐藤英二が呼びかけると、
「待ってました！」
　野々ののこは諸手をあげて賛成した。
「ほらほら、こないだのお礼だから。遠慮しなくていいって♪」
　当初の宣言通り、ののこがふたり分買ってきてくれる。ベンチに腰掛けて食べた。
　ののこのかき氷はなんと茶色だ。
「私はねー、チェリーコーラ味にしたんだよ！　といっても全然サクランボ味じゃなくってね、普通のコーラよりずっと薬っぽくておいしーの☆」
「薬っぽいのにおいしいの？」
　かく言う英二は定番中の定番、赤い色した氷いちごだった。
「そうだよ。昔のコーラってこんな味だったって言われてる。なんていうかね、まったく自然じゃないケミカルな感じが最高♪」
　サクサクとののこは食べているが、ふと思いついたように言う。
「そうだ。英二くんちょっと食べてみる？　ほれ」
　自分のスプーンですくって、無造作に英二に差し出した。
「あーん、ってしてみ？」
「えっ！？」
　英二はどう反応したらいいのかわからない。
　それって間接キス……になるよね。
　どうしよう。
　迷ったけれど英二は安全策を取ることにした。自分のスプーンで、
「じゃあちょっとだけ……」
　ののこの氷の、端っこのほうだけもらったのだった。
　ケミカルかもしれないけれど、味はよくわからなかった。
　英二の微妙な反応を見て、ののこはきっしっしと笑った。チェリーコーラ味にカルチャーショックを受けたとでも思ったらしい。
「じつは私、寝子島でただひとつだけ、チェリーコーラが売ってる自動販売機を知ってるんだ。今度飲みに行こうよ♪　牛丼と一緒に食べると味覚むちゃくちゃになって楽しいんだよ」
　うんともいやとも言えず、英二はただただ目を見張るばかりだ。
　野々さんから牛丼の誘い？　昼間の牛丼すなわちデー牛丼？
　それって、もしかして……？

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