学食百景　～プレミアムメニューを堪能せよ！～｜リアクション

学食百景　～プレミアムメニューを堪能せよ！～

　放課後、熱く照り続けた太陽が沈み校舎の光が校庭を照らす。
　羽生碧南は体育館から帰ってきたばかりだった。
　シャワーを浴びて着替えたものの、すっきりした身体とは裏腹に、お腹が減って仕方が無い。
　桜花寮までもつかと聞かれれば、答えは限りなくノーに近かった。
　なにせ羽生の身長は180cmに届く。体重はその割にかなり軽いが、かといって燃費が格段にいいという訳でもない。
　ハードな部活を終えたあとは、どうしたってお腹が空いてしまう。

（そういえば）

　ふと、食堂のことを思い出した。
　夏期メニューが期間限定で発売されているらしい。その期間中は、たしか営業時間が普段よりも長かったはずだ。
　荷物をまとめ、ダメ元で向かってみることにする。
　本当に営業していた。
　暗くなった廊下に、食堂の活気のある明かりが差し込んでいる。
「うわ、いい匂い」
　一度近付いてしまうともうダメだった。食欲が刺激されて仕方が無い。
　もう我慢が出来なかった。ふらふらと、惹かれるように近付いてしまう。
　同じように部活動を終えた学生がたむろしていた。夜の少しのわくわく感と、空腹と、期間限定の美味。熱気が渦巻く中、券売機待機列の列はどんどんハケているはずなのに短くなる様子がない。

　さて、何を食べよう。
　券売機でＡ定食とＢ定食を見比べる。
　やっぱりここは王道のチキンカツにしようと決めて、食券を購入したのが、今日の昼のことだ。
　実は学食は結構ひいきにしているほうだ。丼物はこの前ついに制覇したし、麺類ももう一巡が終わっている。カレーはこの前ずいぶんアツいお付き合いを果たしたばかりだから、もうしばらくはいいだろう。

　色々と迷った末、寝子まんまの大盛りを注文した。
　少し値段の張る一品だが、ご夕飯と考えれば悪くないはずだ。サンマの蒲焼きと釜揚げしらすが食欲をそそる。一度食べてみたかった一品だから、悪い選択ではいだろう。
　それにきつねうどんも付けてしまうことにした。

　すぐにおばちゃんが、あつあつの定食とうどんを出してくれる。

「いっただっきまーす」

　さっそくしらすを口に運ぶ。
　さっぱりとした味わいがたまらない。そこにサンマの蒲焼きを一緒に食べると、コントラストの利いた濃厚な味わいに多幸感が止まらない。

「最高……美味しい……」

　今が極度の空腹であることももちろんだが、これは絶品だろう。
　ほのかに甘いきつねうどんの厚揚げを口にして、つるりとうどんをすする。至福のひとときだ。
　しばらく食べることにだけ専念してしまっていた。
　気が付けば定食はからっぽになり、うどんも出汁まで啜りきっている。

「まだもうちょっと、食べたいな」

　メニューを見遣ると、期間限定のかき氷が目に付いた　噂のプレミアムかき氷パフェだ。

「ん、食べちゃおっと」

　てんこ盛りになったフルーツもトッピングも、食欲をそそってくる。先ほどあれだけ食べたが、甘い物は別腹だ。
　溶ける前に食べようとして急いだせいで、途中でずきりと頭痛がする。
　それでも、完食には差し障りなかった。

「あー……幸せ……」

　しばらく、幸福の溜息をついて満腹感を味わう。

　これなら寮に帰るまで、もつだろう。
　高身長女子アスリートは荷物をまとめ、寮までの道を急いだ。