【星幽塔】第一階層　マダムSの危険な館｜リアクション

【星幽塔】第一階層　マダムSの危険な館

●昼刻、Ｂａｒアストラル

　昼食時のＢａｒアストラルは、夜ほどではないが混みあっていた。
　修はカウンター席に座っている小柄な盗賊風の少女の隣に腰かけた。
「おつかれ。首尾はどう？」
「八神君……よかった無事で」
　午前中、聞き込みを行っていた恵御納夏朝はほっとした顔で修を見上げる。
　本当に心配だったのだ。
「聞き込みしたら、夕べも三人連れ去られたっていうんだ。……それが、どうやら……」
　夕べの犠牲者がレオンと武道とアケーチであることを、夏朝は突き止めていた。
　修も知りえた情報を伝えると、夏朝はじっと考え込み。
「そう、マダムは四月下旬の生まれ……おうし座だね。……魔星の光なら、確か……」
　――『魅了』。
　だとすると、捕らえられた者たちは魅了されて逃げ出す気をなくしているのかもしれない。
「八神君、お茶の誘い、本当に行くの？」
「ああ。だがその前に」
　修は知りえた情報をメモ書きにして、Ｂａｒの掲示板に貼った。
「こうしておけば俺たちのあとに館に潜入する人たちの助けになるかもしれないだろ？」

◇

　それからしばらく、昼と夕の間の時刻。
　忙しさが一段落したＢａｒアストラルの給仕娘、アリス・ミーティアが修のメモを見つけた。もともとマダムＳの調査依頼は気になっていたので、マスターに思い切って休みを申し出る。
「ええっ、やめた方がいいって。アリスちゃんに何かあったらお客さんも泣くし」
　そんなマスターの制止も振り切り、アリスは元気よくＢａｒアストラルを飛び出していく。