【星幽塔】第一階層　マダムSの危険な館｜リアクション

【星幽塔】第一階層　マダムSの危険な館

●エピローグ

　修の言った通りだった。
　館から然程離れていない森の中で、巨大な蝙蝠の死体が見つかったというニュースがサジタリオ城下町にもたらされたのは、救出劇から数日後のことだった。
「その死体は、まるでミイラみたいに干からびていたって」
　事件解決後のＢａｒアストラル。
　給仕姿のアリスが、集まった関係者たちを相手にそう話す。
「それがマダムの正体だったってわけか」とレオン。
「法的な裁きを受けさせたかったが」と修。
「老執事は？」と刀が訊ねれば、
「混乱の最中に姿を消して行方不明だそうですよ……」と冬華が答える。
「ま、あたしは依頼が果たせて報酬も貰えたから充分」
　ティオレは頬杖をついて、依頼主から報酬に貰ったネックレスを指でもてあそぶ。
「……私はもう少しマダムと楽しみたかったですが……」
　アケーチはそう言って、期待いっぱいの眼差しを楓子に向ける。
「うん？　いや、まあ……そのうちな？」
　楓子は目を合わせないようにして、そう答えた。

　館は警備隊が調査中で、立ち入り禁止だ。この先は城の司法に任せるのがいいだろう。
　すでに死亡してしまっていた者たちの葬儀は合同で行われた。
　助かった者たちはそれぞれ、家族や恋人や友人たちの元へ戻っていった。
「体の傷は、養生すればいずれよくなるよ。ただ、心の傷の快復には、少し時間がかかるかもしれない」
　武道は首をそっとさする。痕は消えても、感触はまだ消えない。
「……そうだね、でもきっと」
　夏朝は思う。
　支えになってくれる人はいる。
　いずれ快復していくことを、今は信じよう。

「さ、みんなグラスを持って！　今日はマスターの奢りだって」
　アリスが明るい声でそう促す。
　カウンターの中で皿を拭いていたマスターが、街の功労者たちにウィンクする。
　アリスが高々とグラスを掲げ、みなもそうした。

「街の平和がまたひとつ守られたことに――かんぱーい！」

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

この度は、マダムＳの危険なシナリオにご参加いただき、誠にありがとうございました。

今回は内容的にどこまでやっていいのか、ドキドキ。

男性陣も女性陣もいたぶられた方も調査に専念された方も、楽しく書かせていただきました。

いたぶられた方の身体の鞭などの痕は、じきに癒えました。

依頼を受けた方には、
「金一封と、第九階層産のヴィーナスパール」の報酬があります。

　★第九階層産のヴィーナスパール
　　直径２センチほどで、金星みたいな黄金色をした真珠。希少品。
　　ネックレスや指輪などアクセサリーに仕立ててもよさそう。

それではまた別のシナリオでお会いしましょう。笈地でした。

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