ロケット花火でBATTLE☆｜リアクション

ロケット花火でBATTLE☆

「水樹、さすが」
　恋人同士らしい息の合った動きに、ヒューバートは微笑んでみせた。身を乗り出した城山がぱちりとウインクで返す。
　あとは目の前の羽生のみだ。そう考えていたヒューバートの頭上を花火が通っていく。
「なるほど、そっちは二人がかりってことなのね」
　先程の一幕を見ていた羽生が小さく呟く。そして、バスケ部という身体能力を生かしてその場から離れていく。ヒューバートは一瞬追うかを迷ったが、それを止めるようにヒューバートの足元で花火が爆ぜた。神野の花火だ。
　城山は逃げていく羽生に追い打ちを掛けるようにロケット花火を投げているが、よく後ろを警戒している羽生には届かなかった。
「逃げられちゃったわね」
「ああ、水樹、それより僕らが狙われてるみたいだ」
　そう言葉を交わしながら、花火が射出された方向を見る。傘を構えた女性の姿がちらりと見え、物陰に消えた。
　城山はこくりと頷いてそちらを向いた。花火を構える。
　しかし、撃つ前に城山の方へ花火が飛んできた。上空からだ。
「水樹、危ない……！」
　そう言ってヒューバートは手を伸ばす。城山は間一髪のところでそれを回避した。ロケット花火に触れた髪が揺れている。
「あー、残念！」
　そう言いながらにこやかに銃を構えるのはミーティア。二人は目配せをすると、その場をすぐに逃げ出す。ミーティアの発射したロケット花火はそれを追うように射出される。
　ヒューバートと城山の二人は、ロケット花火にぶつからないよう注意しながら駆けていく。それを追い掛けるミーティアに、ロケット花火が迫る。ミーティアの眼前で、それは爆発した。ギリギリで助かった形だ。思わずミーティアは立ち止まり、花火が来た方向を見る。
　ウェーブがかかった茶色の髪をした少女の姿がそこにあった。恵御納だ。ミーティアに狙いを定めていたが、目が合うとさっと身を隠した。ミーティアが恵御納の元へ近づいていく気配を感じ、恵御納は商店の後ろへと回り込む。
　そのミーティアの動きを止めるように、花火が撃ち込まれる。九夜山を背にした神野だ。自分の身を守るように傘を構え、花火を撃ち出している。
　それを幸いと捉え、恵御納はその場から離れた。これでミーティアと神野の一騎打ちだ。
「翼が生えた人とロケット花火の撃ち合いなんてね」
「よーし、いくよー！」
　どこか楽しげな二人は、ほぼ同時に花火を撃ち出した。神野は傘で、ミーティアは翼を使ってくるりと空を飛ぶことで直撃を避ける。そのままミーティアは上空へ飛び上がり、銃を構えて急降下し、狙いを定めずにロケット花火を撃ち込んだ。上空からの攻撃には傘が間に合わず、神野にロケット花火が当たる。
　目の前で火花が弾けて、神野は打ち上げられていた。どんどん街が遠くなっていく。そして空の高いところで止まると、青い花火になって弾けた。熱くもなく寒くもない、不思議な感覚だった。自分の周りを青い火花がちかちかと煌めいている。花火が消えた後はそのまま街へと落下していく。幸いにも、傘のおかげで落下速度は速くはない。猫鳴館の自治会長選挙でモモンガスーツを着て飛んだ時のことを思い出しながら、神野は満足そうに微笑んだ。観察結果は良好、研究の成果は十分。