寝子島いい風マップ｜リアクション

寝子島いい風マップ

●憩いの風

　放課後。
　八神修は射撃部の活動で校舎周りを走っていた。体力づくりは必要とはいえ、暑さと走りで息があがる。

「俺は後から行くから、先に行ってくれ」

　部員達に無理はしないようにと労われると、嬉しさ半分情けなさ半分という気持ちになる。みんなの姿が見えなくなり、１人になるとへたり込んだ。とりあえず近くの木陰に避難すると息を整える。
　そこにちょうど七夜あおいが通りかかった。修はあおいに気づくと、背筋を伸ばして努めて元気に振舞う。

「やぁ、あおい。今日も暑いね」
「そうだね。……修君、大丈夫？」

　どうやらへたり込んでたのはバレバレだったようだ。

「部活の練習頑張るのは大事だけど、無茶はだめだよ」

　そういいながら鞄からペットボトルを取り出すと修に差し出す。あおいの優しさに触れて修は心が穏やかになるのを感じた。

「涼しい風の吹く場所でちょっと休もう？」

　あおいの提案に素直に頷くと、修はゆっくり立ち上がった。するとあおいはスマホを取り出し『寝子島いい風マップ』というアプリを立ち上げた。どうやら、あおいのおすすめの場所に今日良い風が吹いているらしい。
　そこは学校の裏手、部室棟の山側だった。そこには涼しい風が流れている。部室棟の隣には武道場があり、掛け声が聞こえてくるとその声に力をもらえるような気がした。
　あおいと腰を下ろしてまったりと雑談をする。静かで優しい時間の共有に心も癒されていくようだ。またマップを見ながら桜花寮近くの風スポットを教えてもらったりもした。

「修君、星ヶ丘は？」
「星ヶ丘？　天宵川の河川敷に良い場所があるよ。木が日傘になってさ。釣り糸をたらすのにもピッタリ」

　そう言いながら釣りの仕草をする修。その話を聞いて楽しそうなあおい。

「よく釣りに行くの？」
「川釣り難しいんだけど、たまーにね。今度良かったら一緒にどう？」
「うん、楽しそう！」

　あおいの笑顔に修は満足そうに微笑んだ。
　そんな風にしばらく雑談して十分に回復すると、修はあおいに礼を言ってから部活に戻った。

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