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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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【星幽塔】第一階層 ある名もなき冒険譚
【リンドヴルム（１）】
事前の情報収集が功を奏した。
蛇竜『リンドヴルム』の生態には、一定のパターンがある。複雑ではあるが、聞き込みで得た情報から類推した敵の所在は的中していたようだ。
眼下の清廉な湖へ降り立った蛇竜めがけ、樹上のサキリ・デイジーカッターは躊躇いもなく跳躍した。
「仕掛ける！」
短い転移から、赤光を帯びた剣を振るう。蛇腹剣を鞭状に展開し、リンドヴルムの翼の根元を狙う。
それは、完全なる奇襲であるはずだった。
「！ 避けたかっ」
蛇竜は長大な身を翻し、サキリの一刀を紙一重で避けるという芸当を見せた。浅い水辺へ降り立ったサキリへ、蛇の尾がしゃらしゃらと軋み擦れるような音を響かせる。
巨体に反し、敵は極めて鋭敏かつ俊敏だ。
しかしそんな事実も、サキリに攻め手を緩ませることは無かった。
「いいね。いい動きだ、頼もしい。楽しませてもらえそうだね」
甲高い金属音めいた咆哮へ、鎖状の剣が迸った。
「あんまし先走るんやないで、少年～」
「ああ。これは失礼」
切っ先をくぐり抜け、蛇竜が首をもたげる。桃色 足子八はサキリと入れ替わりに踏み込み、両腕を前方へと掲げ、構えた。
「させへんで！」
足子八のろっこんは、まさしく名が体を表すがごとしだ。手足が見る間に蛸の触手と化し、その先端に輝く魔水の光から強烈な奔流を放射する。
蛇竜が吐き出した濃緑色のブレスと魔水の激流がぶつかり合い、相殺した。蛇竜はその強烈な毒性を吐息や翼からの鱗粉として放出し、周囲を汚染する。足子八は機先を制し、毒を払ってみせたのだ。
「ほな、どかーんと一発、いてもうたろか！」
怪物退治にはいかにも軽い調子ながら、答えた二人の形相は冒険者のそれだ。
「毒をかき消した隙に……行くわ！」
「付き合うぜ、お嬢ちゃん」
吉住 志桜里に、レグルス・シェルタンである。
短距離転移を繰り返し、嵐のごとく振るわれるサキリの蛇腹剣の合間を縫い、志桜里は駆け抜けた。
剣呑な戦いの一幕に、志桜里は思わず口ずさむ。
「あまりにも大掛かり過ぎて必死、決死の下手打ちゃ十死。語れる死に様無ければ笑止！ なーんて、ねっ」
鋭く振るわれた尾の一撃をマチェーテ（鉈）で斬り払い、懐へ飛び込む。
ヒップホップの言葉遊びは、志桜里なりに平静を保つための手段なのだろう。しかしながら当然、気の利いた韻を探すことに割く思考の余裕はなく、
「精一杯ライムしてごまかしたって、ヤバイってのこれ……！ 言葉を繕うのはやめ、取り掛かるわよッ！」
針のように細いリンドヴルムの前足へ、マチェーテを叩き込んだ。
波状攻撃よろしく、レグルスが続けざまの一撃を胴部へ見舞う。
「疾れ、イフラーン！！」
振るう剣閃を魔風がなぞり、風を帯びた刃を一つ、二つ。三つと、肉厚な曲刀による連撃はいずれも首下の鱗を捉えた……が。
「ちィ。こいつは硬いぜ！」
志桜里とレグルスが飛び退いた瞬間、蛇竜の牙が空を薙ぐ。口腔から滴る毒液が湖の澄んだ水へ落ちると、すぐさま濃緑の淀みが生まれた。
蛇竜の鱗甲は頑強だ。加えて、
「この身のこなし。知能も高いのかもね、こちらの攻撃を見切って、芯を外してるようだ」
「なんや、面倒なやっちゃなあ」
サキリの分析に、足子八が口をとがらせる。
蛇竜は脈絡のない動きで毒のブレスを吐きかけ、足子八の放つ魔水が再びその毒素を押し返した。サキリはバンダナをマスク代わりに口を覆ったが、近づくだけで肌が粟立つようなこの強烈な毒や臭気には、恐らく気休めにもなりはしないだろう。
「鱗は硬ぇ、動きも鋭でぇときた。なるほど、こいつは強敵だ……が！」
毒液を風の刃で切り裂き、返す刃で一太刀。レグルスの曲刀は未だ肉を裂くには至らないが、彼は傷だらけの面へ、余裕の笑みを浮かべて止まない。
「こいつの素材は、さぞや高く売れるだろうよ。うまくいきゃあ、今夜の飯は豪勢だぞ。くッく！」
レグルスのような男こそが、本物の冒険者と呼ばれるべきだろう。
「報酬もいいけど、私は誰の骨も拾うつもりは無いわよ？」
叫ぶ志桜里の佇まいには、学校生活で見せるような一種の淑やかさは一切見られない。幼少から培った武術の心得、育んだ気勢が、ここ星幽塔へと至り、闘争心となって彼女の内へ顕現したのだろうか。
志桜里の長身に纏う覇気は、戦士と呼ぶにふさわしい。
「蛇竜リンドヴルム。獲るわよ！！」
「応よ！！」
「はいよー、お姉さんに任しときー」
サキリの瞳が輝きを増し、蛇竜の細く長大な身体を射抜く。
「蛇の癖に足があるなんて、まさしく蛇足だね。僕が斬り落としてあげよう。残らずね……」
刃が紅く閃いた。
事前の情報収集が功を奏した。
蛇竜『リンドヴルム』の生態には、一定のパターンがある。複雑ではあるが、聞き込みで得た情報から類推した敵の所在は的中していたようだ。
眼下の清廉な湖へ降り立った蛇竜めがけ、樹上のサキリ・デイジーカッターは躊躇いもなく跳躍した。
「仕掛ける！」
短い転移から、赤光を帯びた剣を振るう。蛇腹剣を鞭状に展開し、リンドヴルムの翼の根元を狙う。
それは、完全なる奇襲であるはずだった。
「！ 避けたかっ」
蛇竜は長大な身を翻し、サキリの一刀を紙一重で避けるという芸当を見せた。浅い水辺へ降り立ったサキリへ、蛇の尾がしゃらしゃらと軋み擦れるような音を響かせる。
巨体に反し、敵は極めて鋭敏かつ俊敏だ。
しかしそんな事実も、サキリに攻め手を緩ませることは無かった。
「いいね。いい動きだ、頼もしい。楽しませてもらえそうだね」
甲高い金属音めいた咆哮へ、鎖状の剣が迸った。
「あんまし先走るんやないで、少年～」
「ああ。これは失礼」
切っ先をくぐり抜け、蛇竜が首をもたげる。桃色 足子八はサキリと入れ替わりに踏み込み、両腕を前方へと掲げ、構えた。
「させへんで！」
足子八のろっこんは、まさしく名が体を表すがごとしだ。手足が見る間に蛸の触手と化し、その先端に輝く魔水の光から強烈な奔流を放射する。
蛇竜が吐き出した濃緑色のブレスと魔水の激流がぶつかり合い、相殺した。蛇竜はその強烈な毒性を吐息や翼からの鱗粉として放出し、周囲を汚染する。足子八は機先を制し、毒を払ってみせたのだ。
「ほな、どかーんと一発、いてもうたろか！」
怪物退治にはいかにも軽い調子ながら、答えた二人の形相は冒険者のそれだ。
「毒をかき消した隙に……行くわ！」
「付き合うぜ、お嬢ちゃん」
吉住 志桜里に、レグルス・シェルタンである。
短距離転移を繰り返し、嵐のごとく振るわれるサキリの蛇腹剣の合間を縫い、志桜里は駆け抜けた。
剣呑な戦いの一幕に、志桜里は思わず口ずさむ。
「あまりにも大掛かり過ぎて必死、決死の下手打ちゃ十死。語れる死に様無ければ笑止！ なーんて、ねっ」
鋭く振るわれた尾の一撃をマチェーテ（鉈）で斬り払い、懐へ飛び込む。
ヒップホップの言葉遊びは、志桜里なりに平静を保つための手段なのだろう。しかしながら当然、気の利いた韻を探すことに割く思考の余裕はなく、
「精一杯ライムしてごまかしたって、ヤバイってのこれ……！ 言葉を繕うのはやめ、取り掛かるわよッ！」
針のように細いリンドヴルムの前足へ、マチェーテを叩き込んだ。
波状攻撃よろしく、レグルスが続けざまの一撃を胴部へ見舞う。
「疾れ、イフラーン！！」
振るう剣閃を魔風がなぞり、風を帯びた刃を一つ、二つ。三つと、肉厚な曲刀による連撃はいずれも首下の鱗を捉えた……が。
「ちィ。こいつは硬いぜ！」
志桜里とレグルスが飛び退いた瞬間、蛇竜の牙が空を薙ぐ。口腔から滴る毒液が湖の澄んだ水へ落ちると、すぐさま濃緑の淀みが生まれた。
蛇竜の鱗甲は頑強だ。加えて、
「この身のこなし。知能も高いのかもね、こちらの攻撃を見切って、芯を外してるようだ」
「なんや、面倒なやっちゃなあ」
サキリの分析に、足子八が口をとがらせる。
蛇竜は脈絡のない動きで毒のブレスを吐きかけ、足子八の放つ魔水が再びその毒素を押し返した。サキリはバンダナをマスク代わりに口を覆ったが、近づくだけで肌が粟立つようなこの強烈な毒や臭気には、恐らく気休めにもなりはしないだろう。
「鱗は硬ぇ、動きも鋭でぇときた。なるほど、こいつは強敵だ……が！」
毒液を風の刃で切り裂き、返す刃で一太刀。レグルスの曲刀は未だ肉を裂くには至らないが、彼は傷だらけの面へ、余裕の笑みを浮かべて止まない。
「こいつの素材は、さぞや高く売れるだろうよ。うまくいきゃあ、今夜の飯は豪勢だぞ。くッく！」
レグルスのような男こそが、本物の冒険者と呼ばれるべきだろう。
「報酬もいいけど、私は誰の骨も拾うつもりは無いわよ？」
叫ぶ志桜里の佇まいには、学校生活で見せるような一種の淑やかさは一切見られない。幼少から培った武術の心得、育んだ気勢が、ここ星幽塔へと至り、闘争心となって彼女の内へ顕現したのだろうか。
志桜里の長身に纏う覇気は、戦士と呼ぶにふさわしい。
「蛇竜リンドヴルム。獲るわよ！！」
「応よ！！」
「はいよー、お姉さんに任しときー」
サキリの瞳が輝きを増し、蛇竜の細く長大な身体を射抜く。
「蛇の癖に足があるなんて、まさしく蛇足だね。僕が斬り落としてあげよう。残らずね……」
刃が紅く閃いた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2019年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年01月22日 11時00分
