コンビニ寄ってこ！｜リアクション

コンビニ寄ってこ！

「暑いッスー！」
　そう、今日の寝子島はじっとりと暑い。
　ひやりとした風の吹く様子はなく、ただ、蝉の鳴き声が辺りをくまなく満たしている。
　だから。
「喉が渇いたッスー！　アイス食べたいッスー！」
　という、古尾桐子の主張も、尤もなものだった。
　むしろ、飲み物やアイスクリームがなければやっていけない。そんな暑さ。
　故に桐子は、目の端に燦然と輝くコンビニの姿を見留めるや、
「あ、コンビニッス！　突撃するしかねーッス！」
　という具合で、そちらに向かって全力疾走！
　自動ドアを潜れば、そこはもう、外とは別の世界のようだ。
「ふひゃー！　コンビニの中はひんやりしてて気持ちいいッス！」
　爽快感にうっとりとしながら、桐子は、真っ直ぐにアイスクリームのコーナーに向かった。
　アイスクリームがずらりと並ぶショーケースを、よいしょと覗き込む。
　その様子だけでも何とも涼しげながら、
「特に、このアイスおいてある箱はひんやり感がぱねーッス！」
　はふー、生き返るッスー！　と桐子はショーケースで暫し涼を取った。が、しかし。
「……あ」
　気付けば、店長らしき男性の視線がこちらに向けられていて、それがちょっと痛い。なので、
（あんまりアイスのとこにぺったりしてると店員さんに怒られるッスね。ほどほどにしとくッス）
　と、桐子は物分かりよく、
「よし！　ひんやりして生き返ったから何か買って帰るッス！」
　なんて、買い物モードに移行した。
「ええっと、とーちゃんからもらった小遣い、いくらくらい残ってたッスかね？」
　財布の中身をいそいそと確認する桐子。
　じきに、桐子は、元気良く頷いた。
「たぶんいけるッス！　それじゃあ、ほしいもの調査開始ッス！」
　さあ、大冒険の始まりだ。先ずは……、
「アイス！　やっぱり暑いときにはこれに限るッス！」
　と、桐子は、今度は真摯にアイスクリームを選ぶべく、再びショーケースを覗く。
「えーっと、にゃりにゃりくんは……あったッス！」
　じゃじゃーん！　とばかりに手に取ったのは、にゃりにゃりくんのソーダ味だ。
　夏といえばこれッス！　と、桐子に言わしめる逸品である。
　更に桐子は、てくてくとドリンクコーナーへ向かった。
「そして渇いた喉をいやすのに……寝子島サイダー！　この二つこそがウチの夏鉄板ふじんッス！」
　迷わず選び取った二品が、手の中でひやひやと心地良い。
　レジに急いで、お会計をしてもらう。店員に告げられた値段を耳に、
（どっちも価格が安いのもうれしいッスね！）
　なんて、桐子は胸をふくふくとさせた。と、その時だ。
「お客様、ポイントカードはお持ちですか？」
　店員の声に、桐子は、ピン！　と思い出す。
「あ！　そういえば、とーちゃんから預かってたッス！　これを見せればいいんスね？」
「はい、ありがとうございます。……ポイントが貯まっていますが、どうなさいますか？」
「どうって……え？　もしかして、このポイントで買い物もできるんスか！？」
　話を聞けば、ポイントだけで、アイスクリームとサイダー、どちらも買えてしまうとのこと。桐子は迷わず、
「じゃ、じゃあポイントで頼むッス！」
　と、興奮にちょっぴり上擦る声で宣言した。
　財布の中のお小遣いを１円も使わずに、アイスクリームを食べ、サイダーを喉に流すことができるだなんて！
（もうけちゃったッス♪　帰ったら、とーちゃんにありがとーって言っとくッス！）
　帰り道、桐子の足取りが軽やかだったのは、言うまでもない。