コンビニ寄ってこ！｜リアクション

コンビニ寄ってこ！

　真境名アリサは、水着ガールズバーに勤めている。
　副店長に昇進してから、およそ４か月。
　終電に乗りようがないほど帰りが遅くなるのも、とっくに、珍しいことではなくなっている。
　いつものように、店の人に自宅近所まで車で送ってもらったアリサは、
「……コンビニかぁ」
　と、賑やかしいような、それでいてあたたかい店舗の明かりを双眸に見留めて、ぽつりと呟いた。
　時刻は、深夜２時過ぎ。
　それでも自宅近くのコンビニは、アリサのことを待っていたみたいに光を放っている。
「今日も疲れたし……明日の朝ごはんでも、買って帰ろうかな」
　零して、店内へと足を踏み入れるアリサ。
　蛍光灯の澄んだ明るさが、目にキンと染みて、瞬きをする。
　時間が時間なので、お客は、アリサだけだ。
　店員はというと、眠たげな顔をして、スマートフォンを弄っていた。
（朝ごはん、朝ごはん、と……）
　店の奥へと真っ直ぐに進んで、早速明日の朝食を見定めにかかる。
　最初に手に取り買い物かごに入れたのは、ミックスサンドＢＯＸ。
　次いでチェックするのは、野菜サラダだ。
（ドレッシングは……今回はなしね）
　仕事柄、プロポーションの維持は怠ることができない。
　明日の朝の食糧を確保して、アリサは、ぷらぷらと店内を見て回った。
　本のコーナーで、コミックスの新刊を１冊。
　ドリンクコーナーでは、ペットボトルのミネラルウォーターを一本、かごの中へ放り込み、レジへ。
　代金は、ポイントカードで支払った。
　さて、家に帰ろうか、と身を翻そうとした、その時。
「あ、お客さま。こちらのくじ、引いてください」
　と、店員が、思い出したように言った。
（くじ？　何だろう？）
　見れば、それはどうやら、既定の金額を超えて商品を購入したお客向けのキャンペーンのようだった。
　最近人気の漫画と、スマホゲーム『ペルシャブルーファンタジー』のコラボ企画であるらしい。
　漫画の方は、『ねこ忍者にゃんにゃん丸』。
（そういえば、『にゃんにゃん丸』、漫画の棚にも並んでたっけ。どっちにも手を出してないけど……）
　機会があれば触れてみようかな、と考えながら、えいやっ！　とくじを引く。
　当たったのは、Ｃ賞だった。
　コラボの限定イラストがプリントされた、小振りのグラスを手渡される。
（この前コップ割ったばかりだから、助かるわ）
　タイミングの良さに、心が上向く。
　得したな、なんて、幾らか弾む心地で、アリサは店を出た。
　今夜はいい気分で眠れそうだと、口元に淡く笑みを乗せて。

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