コンビニ寄ってこ！｜リアクション

コンビニ寄ってこ！

「あっづい……」
　景色がゆらゆらと揺らいで見えるような熱気の中で、花厳望春はそう零した。
　汗が、ぽた、と、頬を伝って地面に落ちる。
「うう、暑いー。俺の飴も体も暑さで溶けそう……そうだ！」
　ぴこん！　と閃く望春。
　こんな時に欲しくなるもの、といえば、決まっているではないか。
　そう、冷たくてあまーい『アレ』である！
（こういう時はアイス食べるに限るよね）
　そうと決まればと、望春は早速、近くのコンビニへと向かった。
　店内に一歩足を踏み入れれば、そこは、まるで桃源郷。
　ひやりとした空気が、火照った身体に何とも心地良い。
「生き返る……」
　しみじみとした呟きが、唇を揺らす。
　一息ついたところで、望春は、「さってと、」と気合を入れた。
（買い物、買い物。一番のお目当てはアイスなんだけど……）
　望春、先ずは、お菓子売り場へ直行。
「ええっと……あった！　ラムネ味と、あとは……」
　と、お気に入りの、ロリポップキャンディを補充する。
　そのついでに、新作のスナック菓子もチェックだ。
「わ、ハニーチーズ味のスナックって、どんな感じかな？」
　好奇心にうずうずしながら、これも、手に取る。
（新作とか期間限定って響きに弱くて、ついつい買っちゃうんだよねぇ）
　なんて、内心に小さく苦笑しつつ、今度こそ、アイスクリームのコーナーへ。
（何にしようかな？　食べながら帰りたいし、カップじゃないやつにしようっと）
　えーっと……と、ショーケースを覗き込んで、望春はじきに、くるりと目を丸くした。
「え、あれ、うわ……すごい！　これ、この辺じゃ売ってないはずなのに！！」
　そこにきらきらしく鎮座していたのは、幼い頃に食べていた、地域限定のアイスクリームだった。
　バニラアイスを優しく包み込む、チョコレートコーティングとざくざくクランチ。
　しかも、「食べながら帰りたい」という望春の気持ちにもぴったりな、棒付きタイプだ。
（絶対これにする！　っていうか、これしかない！）
　弾む心地で、望春は、商品達を抱えてレジへと向かった。
（思わぬ発見もできたし、気分がいいな）
　レジの近くに陳列されてるくじが、ふと目に入る。
　何だか、くじだって、こんな日なら当たりそう。そんな気がした。
　１回だけ引いてみようと、店員に声をかける望春。
（なーんて、こんなのそうそう当たるわけないんだけどね）
　が、しかし。
　差し出された箱から望春が取り出したくじの結果は、
「……って、あ、うそ、Ａ賞？」
　は、初めて当たった……と、声が漏れる。
　何せ、いつもはＤ賞辺りばかりを引いてしまう望春なのだ。
　まさかのＡ賞は、円らな瞳が愛らしい、大きなペンギンのぬいぐるみだった。
　商品の入った袋を下げ、ぬいぐるみを抱えて、コンビニを後にする。けれど。
「……あ、どうしよう、このペンギン抱えながらだと、アイス食べられないや」
　うーん……と暫し考えて、結局、家まで我慢することに決めた。
（ペンギン、癒されるしね）
　炎天下の中を、いつもより少し歩調を速めて急ぐ。
　揺れるコンビニ袋の中で、買い求めたお菓子達とアイスクリームが、どこか楽しげな音を立てた。

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