コンビニ寄ってこ！｜リアクション

コンビニ寄ってこ！

　学校帰り、恵御納夏朝は、珍しくコンビニへと足を向けた。
　普段、買い物は別の店で済ませている夏朝。けれどその日は、
（たまには、コンビニ行ってみようかな……）
　という気分になったのだ。
　店内に入り、ひやりとした空気に目を細めながら、買い物かごを手に取る。
　さて、何から見て回ろうかと思った、その時だ。
（こ、これは……）
　それは、入口近くの、よく目立つ棚を輝かんばかりに飾っていた。
「可愛い猫さん……のくじ……！」
　Ａ賞のぬいぐるみからＤ賞のチャームまで、一つの漏れもなく魅力的だ。
　思わず何回も引いてしまいたくなるような愛らしさが容赦なく夏朝を襲ったが、
（お買物もするから……１回だけ、１回だけ引いてみよう……！）
　と心に決めて、店内を見て回り始める。
（あ、にゃんぷの最新号だ）
　ひっそりちょっぴり、立ち読みなどしてみる夏朝。
（新連載の作品、マスコットの猫さんが可愛いな）
　なんてほこほこしたそのあとで、夏朝はアイスクリームのコーナーへと向かった。
　夏といえばアイス。鉄板である。
「えっと、ニャピコを買って……あ！」
　ニャピコをかごに入れて振り返った瞬間、ついつい、声が跳ねた。
　そこには、くじのキャラクターとはまた別の、猫の食玩が並んでいたのだ。
　猫のおやつ屋さん、というコンセプトのようで、指先サイズのスイーツも全て猫型。
　雰囲気こそくじとは違えど、こちらも胸がキュンとなるようなキュートさを以って夏朝を誘惑する。
「こっちも可愛い……１個買ってみよう……」
　ちょっと迷って、結局、１番手前の箱をかごに入れた。
　そして、そのままレジへと。
「これと……あのくじを１回、お願いします」
　店員にそう伝えて、先に会計を済ませる。
（最近は、スマホかざして、って方法もあるみたいだけど……）
　残念ながら、夏朝のスマートフォンはそういう機能は有していない。
　普通に財布を取り出して、現金でのお支払いだ。
　かくして――満を持しての、くじ引きタイム！
　店員が用意したくじの入った箱の中へそろりと手を入れ、ごそごそとする。そして。
（――これだ！）
　と、ピン！　ときた１枚を握り締めて、箱から手を出した。
　どきどきしながらぺらりと結果を確かめれば……夏朝が引いたのはＤ賞だった。
　店員から手渡されたのは、ふわふわの黒猫が楽しげに揺れるチャーム。
　チャームにはオレンジのリボンも付いていて、夏朝は、愛猫のことを思い出した。
（可愛い猫さんのぬいぐるみは招けなかったけど、代わりに、可愛い猫さんのチャームが当たったよ）
　同じくチャームを飾っている青い石が、蛍光灯の光に煌めく。
（鞄に付けようかな？　それとも、スマホのストラップにしようかな……？）
　残りの商品も連れて、夏朝は、弾む心地で店を出た。
　寮への帰り道を辿り出すその前に、一度、振り返る。
（……また、猫さんな物があったら来てみようかな？）
　偶には、いつもと違う買い物模様だって、悪くない。

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