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【Let's ショッピング!】
「ふふ、色々なお店がありますね……!」
会場を訪れた
アケーチ・タッマーキ
が、賑やかに立ち並ぶ屋台街を見渡せば、程よいいぬねこの混み具合で、皆が自由に楽しんでいる様子が伝わってきました。
「あちらは『新鮮な、にぼしとジャーキーの直売店』……香ばしい香りが広がってきますね、ふふ……。
こちらは──
『今、星幽塔と寝子島で大ブレイク中の服! ひとの世界の【みずぎ】を試着チャレンジ!』
ねこの身で、ひとの水着……! これは是非着てみたいです……!」
アケーチは透き通った紫色の瞳をキラキラと輝かせ、さっそくその屋台へ向かいました。
アケーチが屋台の前で立っていたいぬねこに声を掛けると、その場のいぬねこ達は大喜びで迎え入れました。
「せっかくの貴重品にゃのに、みんな『耐えられなくなって』逃げ出してしまうんだにゃ。もったいないにゃ」
そう言うねこは何やら寂しそうでした。
話を聞けば、最初は皆、水着に興味を持っていたそうですが、服はとても大事な催しで偉いいぬねこが身に付けるくらいのもの。馴染みが深くないいぬねこにとっては『着てみたら、着ないより恥ずかしかった』と、最後まで着られない脱落者が続出したそうなのです。
その為、水着をきちんと着られたいぬねこは、今のところ全くいないのだそう。
しかし、
「ふふ……っ。
いくらねこさんの体でも、このアケーチ、一切の妥協はありません……!」
それを聞いたアケーチは、差し出された青銀のビキニ上下を、神秘的な灰色の毛並みの上にビシィッっと身に付けて。
そのまま両手を上に上げ、屋台の中央で、見事にセクシィパーフェクトなポーズを決めてみせたのです。
「すごいわん!! このねこさん、羞恥心を遙かに超えたところにいるのだわーん!! 芸術的だわーん!!」
その歓声は、テントにいたお手伝いさんから波及し『良く分からないけれども、何かめでたい事が起こった』と道行くいぬねこを巻き込んで、大歓声となったのでした──
「ふふ、素敵な体験をしてしまいました……
次は──おや?」
屋台を再び歩き始めたアケーチの元に、何やら不思議な香りが届きます。それは、とても僅かで──ねこだから初めて分かる香り。
アケーチがその香りに誘われるように目を向けると、そこには『元祖・またたび屋』という屋台に、沢山の木の実や葉、枝などが置かれていました。
「ほぅ、またたび屋ですか? あぁ、猫のサガでしょうか、とても心惹かれます……!!」
漂ってくる香りだけでも良い気持ちになれそうです。ふわふわと、アケーチはマタタビ屋さんへと向かいました。
「あの……恥ずかしながら『ねこ経験はじめて』なのですが、どれがおすすめでしょうか?」
「おお、そいつぁめでたいニャ!
それなら、まずは葉がおすすめニャ。成分が一番少ないニャ」
そう言って、屋台の店主ねこは葉っぱを一枚差し出しました。
その匂いを嗅ぐことしばし……
「ええ、ええ……!
私、クセになりそうです、にゃふふ……!」
そこには思わず、その場で尻尾共々身をよじって、心一杯の幸福感に浸るアケーチの姿がありました──
「うまそーなのがいっぱいだ!」
四本足のいぬとなった
源 竜世
が、二本足の子ねこ
タイラ・トラントゥール
に抱き上げられながら、屋台道を歩きます。
竜世が鼻をならす傍らで、タイラも僅かに鼻を動かせば、とても食をそそる香りに辺りは満ちていて。歩きながらどうしたものかと、より一層の思案に暮れてしまいます。
その中で、
「タイラ! オレあの骨付き肉が食べたい!」
そこに、困惑にも似た打ち破るような、竜世の声が聞こえました。竜世の方を見れば、その小さな手は一台の『THE・美味! いぬねこ両方が認めた骨付き肉屋台!』という看板が出ている屋台を指しています。
「早くはやくっ」
「ちょっと待ってろ! えっと……これは買えるのか? 金はどうすれば?」
「異世界のお客さんワンね。それならその国のお金を『おきもち』でいただくことになってるワン。もちろん持ってなかったら、なくても全く問題ないんだワン」
そう屋台の店主のいぬに言われて、タイラと竜世は試しに一つの骨付き肉を買いました。
竜世を抱えている以上、荷物があると色々と不便です。タイラは、側に見つけたベンチに竜世と骨付き肉を降ろしました。
(……手が使えれば楽だが、これをどうやって竜世に食べさせれば……)
今は四本足とはいえ、竜世はひと。そのままというわけにもいかないと、タイラが考えていた傍らで、
「まあいいや! そのままかぶりつこう!」
「──!?」
まさかの中のまさかの言葉。タイラは慌てて竜世を止めました。
「どーして止めんだよ!」
疑いのない竜世の言葉に、タイラが頭を抱えます。
「お前も一応人間だろうが……犬食いなどするな」
「でもこうしねーと食えねえもん」
いぬでもぷくーっと頬を膨らませ、不満をいっぱいまで表して。そのまま、タイラからぷいと顔を背けた竜世ですが、すぐに目の前の骨付き肉に、今にもかじりたいと言わんばかりの雰囲気を向けています。
「仕方ない奴だな……少し待ってろ」
タイラはぴしっと、竜世に『待て』の合図をしました。ピタリと止まった竜世ですが、うずうずじりじりと、骨付き肉を見つめてはよだれをこぼれそうになるのを我慢しています。
そんな竜世を自分の膝の上に乗せて、タイラはその口許に食べやすいように骨付き肉を寄せました。
「え! タイラが食べさせてくれんの!? やったー!」
「……これも、やむを得ない状況だからな」
「へへ、あーん」
竜世は可愛らしく、健康そうな小さな歯が揃った口を大きく開けてみせて。それを見たタイラは、第三者が指摘すれば間違いなく否定するであろう、ほんの少しの照れくささとそれ以上の満更でもなさそうな様子で、竜世の口に骨付き肉を運びました。
「なあタイラ、オレ次はあっちのおやつが食べたい!」
骨付き肉をお腹いっぱいに食べて、満腹な様子に一息つき。
すぐに向いた竜世の興味の先は、少し離れた所に見えるおやつの屋台。
タイラもそちらに目を向けて、最初に比べれば抵抗も殆ど無く、自然と再び竜世を抱き上げて。そして──その無邪気さから来る可愛らしさを滲ませる、四本足をしたいぬ姿の竜世の頭を、タイラは無意識のうちにそっと撫でました。
「へぇ、星幽塔ってこんなお菓子も売ってるのね」
先程の恥ずかしさから全力で逃走を図り、
羽生 碧南
は無事に心を落ち着かせることに成功しました。
そして今は、屋台通りを道行くいぬねこが道を歩きながら、幸せそうに食べ物を頬張る姿を目にする最中。
「うん、食べ歩きも悪くないかも」
星幽塔のひとらしきいぬが出店した屋台から、碧南が買ったお菓子は、水色のアイシングの上に粒状のカラフルチョコが乗ったドーナツ状のものでした。
片手にまたたびジュース、もう片手にそのドーナツを口に運んで、ぱくり。
「あ……これ、美味しい。寝子島でも売ってくれればいいのに」
次いで、最初に恥ずかしさから味を吟味せずに買ってしまった、またたびジュースをこくん。
「──……う……!」
それは思わず『飲み込めない……!』と思うほどの複雑な味──碧南の中で、ここでミケーレが代わりに飲んでくれるイメージが即座に再生されたのですが、どうしてもイマジナリーとリアルの間には、愛だけでは容易く越えられない壁があるのを実感するばかり。
碧南は脳裏で謝ってくれるミケーレに『大丈夫!』と笑顔で返して、その現実と戦う為に、またたびジュースを一気に飲み干したのでした。
「今回はいぬの姿か。いつもはねこの姿だから新鮮かも知れないな」
ピンと張った耳と、しなやかな尻尾に凜々しい手足。会場内に入った
八神 修
は、自分の姿を目に己の姿がいぬであることを確認していきます。
傍らでは、
「少し荷物多かったかな……」
小柄でふわふわ、尻尾は心なし短めに。体は橙色に足元が白色をした靴下ねこの
恵御納 夏朝
が、持ち込んだ人間サイズが少し持て余す荷物を見ていました。
「大丈夫か?」
「うん、この位なら大丈夫。それじゃあ行こう!」
こうして、二人……もといニ匹は賑やかな屋台が並ぶ道を歩き始めました。
「うん、ねこさんな可愛いのを、と思って来たけれども……」
夏朝が雑貨の並ぶ屋台を見渡せば、そこはいぬねこ入り乱れていて、両方の国の売り物が一気に目に入ってきます。
「どれも素敵かも……
あ、いぬの国の織物で作ったシュシュなんてあるんだね」
「まるで、ちりめん織のようだな。よく出来ている」
「うん、これも買っていこう!」
こうして夏朝のバッグが少しずつですが、見る間に膨らんでいきます。ですが、女の子と買い物は切っては切れぬ大事な関係。口を出すにはあまりに無粋と、修はそれを微笑ましく見守りながら、辺りを見渡しました。
看板には、真っ当ないぬねこの品の他に『寝子島名物マタタビジュース』や『星幽塔から集めた特選ジャーキー』等の素性が怪しい看板もあちこちに並んでいて。
その『よく分からないけれども、雰囲気で行動してみた』といういぬねこの気持ちが伝わるどうしようもない微笑ましさに、修は思わず頬を緩めました。
しかし。
「……寝子島……いつから、またたびジュースが名物に……?」
そんな中、その『いかがわしいもの』……直球で言えば『パチモン看板の数々』に、寝子島在住ながらまるで遠い異国の出来事のような感想を抱く黒ねこがいました。
黒ねこ──
三宅 葉月
は、それらの看板を不思議そうに見上げながら道を歩いていきます。
そして、修と夏朝のいた屋台の隣で、その看板を見てふと深そうに立ち止まったのです。
そこにあったのは『いぬねこが厳選! 星霊塔の光り物100選!』──……ただこれだけならば、問題はなかったのかも知れません。しかし、並んでいる品数がきちんと『100選どころか30選もない』となれば。あら不思議、どこからともなく一気にパチモノの気配がしてくるもので……
「27個しかないのは、どうしてかしら……?『100選』なのに」
なんとはなしに零された葉月の言葉──それに、周りのいぬねこ達は目に見えるような戦慄を覚えました。
……それもそのはず。星幽塔と寝子島の名前をあげているいぬねこ達は、皆そのねこと似たようなもの──『雰囲気だけを楽しむ売り物』だったのですから。
「……!」
そんないぬねこの気性を知っている修と、買い物を終えた夏朝も緊張に巻き込まれた様子で、思わずそちらに目を留めました。
そして、痛すぎるところを指摘され、明らかに挙動不審に右往左往していた店主のねこは、ついに口を開いたのです。
「そ、それは……! そうニャっ!
ここには! さっきまで【サバやサンマやアジ】とかの『ヒカリモノ』がたくさん並んで──っ!」
「い、いや! 流石にそれは厳しいんじゃーーっ!?」
その回答は、あまりにも残念でした。あまりにも残念な内容に、思わず夏朝がツッコミを入れました。
周囲のいぬねこも、自分のお店とは直に関係無いのに、その現実にこの世の終わりのような顔で天を仰ぎました。
しかし、
「──そう」
葉月は、それ以上は問い詰めずに、一言それだけを告げて立ち去っていったのです。
「──た、助かった……ニャ?」
そうして、特に何かあった訳ではありませんが、緊張していたいぬねこと共にいた夏朝と修も一緒に大きく息を吐きました。
そんな一波乱があって。
修が屋台のいぬねこ達に『嘘をつくとばれたときに皆が楽しくなくなるから、ほどほどに』と優しく説得をしたところで。
「──そう言えば、八神君は何か買う予定はあるのかな?」
改めて気を取り直した夏朝の言葉に、修はこくりと頷きました。
「実は服が欲しいと思っていた。身嗜みは大事だからな」
「それなら、うちの服はどうだワン?!
【星幽塔で今大ブーム! 今のファッションは HA・RE・GI!】なんだワン!」
先程の事変にも懲りずに現れた、突然のお勧め晴れ着に修は軽く苦笑してそれをいなします。
「……その手のは、さっき懲りたばかりだろう?
そうだな、それよりも『いぬかねこの民族独自の衣服』が買いたいんだが、売ってるかな?」
そのいぬは少し残念そうでしたが、それでも喜んでいぬとねこのそれぞれの衣服を扱っている場所を教えてくれました。
そこで修は、青を基色としたチョッキとズボン、そして柔らかな靴と帽子を手に入れて、さっそく着替えて、その上質感溢れる着心地に満足そうに頷きます。
「色々あったが、まだ肝心の屋台を回り切れていない気がするな」
「そうかも。何か楽しそうなお店あるかな……?」
夏朝の買い物に付き合いながら、ニ匹が一緒に歩きます。
ふと、普通の人の屋台を模倣したものの中でも、ニ匹は少し雰囲気の違う屋台を発見しました。
「ここでは、他のいぬねこの皆の屋台には負けない珍しい屋台をやっているワンっ。
景品は、寝子島でたくさん恵んでもらった『だがし』の詰め合わせをばらしたものでござるワ──
はっ……! その匂い、ご主人様でござるかワン!!」
呼び込みの声に、何となく様子を覗いた修は、そこで懐かしいコーギー犬を見つけました。
見覚えのある胴の長さと可愛らしい足の短さ。そして勢いの良いその話し方──
「
まるたろう
か!? 元気そうで何よりだ」
「ご主人様こそ、お元気そうで何よりでござるワン!
この屋台のお勧めは、寝子島でたくさん渡してもらったこの紙に数字をたくさん書き込むゲームでござるワン。ぜひぜひ遊んでいって欲しいでござるワン!
景品は、甘くて黒いお砂糖のお菓子でござるワン」
そう言って、出されたのは延ばしたいぬねこの両手に何とか届きそうなお菓子の黒棒でした。香ばしそうな香りがここまで漂ってくるかのようです。
「黒棒か……その紙は話を聞く限り、パズルか何かだな。やろう」
「あれ。八神君、甘党だったかな?」
黒棒を目に、僅かに気合いが入った修を見た夏朝が尋ねます。
「甘党じゃないぞ。嫌いじゃないけどね」
修が苦笑しながらそれに答えます。
そして寝子島産と思わしきペンを手にその紙を手に取りました。
「これは──上級者向けの数独、だな。まるたろうはこの正解は分かるのか?」
「一緒に解答の紙ももらってきたでござるワ……
ワン!? もう解いたでござるワン!?! 最速でござるワン!!」
「それじゃあ、この半分は恵御納に」
まるたろうに礼を告げて屋台を出ます。得意分野では少し物足りなかったかも知れませんが、修はそうして無事に手に入れた、大きな黒棒の半分を夏朝に差し出して一緒に食べることにしました。
「えっ、いいのかな? ありがとう!」
こうして、誰かと一緒に一つのものを食べられるということは、修にとって、いぬねこになっても変わらない、とても幸せなことなのです。
それからまたお買い物をして──修はふと、夏朝のバッグがお買い物をする都度、少しずつ着実に増えていることに気付きました。
「恵御納、持とう」
修にとって、自分が軽い荷物しか持っていない中、傍らの女の子一人が、大量に荷物を持って大変そうに歩くという光景は存在しません。
「えっ! だ、大丈夫っ。全部僕の荷物だから、自分で……」
「持たせて欲しい。女の子に、大量の荷物を一人で持たせたまま歩くのは、自分が許せない」
ストレートにそう口にした修の心に、夏朝本人もそのまま断り続けるには申し訳ない気持ちになってきました。
「そ、それならせめて軽くさせて!」
せっかくの相手の厚意を無為にするのは、あまりにも申し訳なくて。
夏朝は、何とか荷物が邪魔しても動く片手で、ねこシールを取り出し、自分の荷物に貼りました。
【ろっこん:重く軽く
発動条件:対象にねこシールを貼り付ける
能力:対象の重量を変化させる(kg・g単位指定も可)。貼られた人が望めば任意解除可能】
ふわりと、手元の荷物が一気に軽くなりました。
「こ、これなら……」
やはり少しの恥ずかしさを隠しきれずに、夏朝がねこでも顔をほんのり赤くしながら、荷物を修に預けようとしたとき。
体躯が夏朝よりもずっと大きい修は、何と夏朝ごと、荷物をお姫様抱っこして軽々と抱え上げたのです。
「……にゃー!?」
まさに不意打ち。夏朝から思い切り外見そのままの声が零れます。
顔は毛の下からでも分かりそうなくらいに真っ赤。
「……ッ!!
(せめて猫さんくらいに軽い、といいな!)」
その心の叫びが届いたかのように、修はいたずらめいた含み笑いと一緒に、夏朝を抱え上げながら言いました。
「これは軽いな。
恵御納は鳥のようだ」
──それは夏朝の顔が『照れて真っ赤』を通し越して、ねこの表情領域限界で『恥ずかしさに弾ける寸前』にまでなった瞬間でした──
辺りには、屋台の他にもラッパを吹き鳴らし太鼓を叩くいぬねこや、紙吹雪を巻くいぬねこ、様々ないぬねこ達がお祭りの盛り上げに一役買っている様子が見受けられました。
それもあって、竜世とタイラが見てきた景色は、どこもかしこも華やか一色。
「わー! 屋台以外もすげー!」
「………………」
「なあなあ、タ──タイラ?」
もふもふの手に抱えられて、その道行きを任せている竜世は、突如足を止めたタイラを不思議そうに見つめました。
「……──」
「お?」
タイラは何かを見つけた様子で、じいっと少し離れた屋台の方を目にしています。
そして無言でそちらへと向かい始めました。竜世の高さからは見えませんが、タイラの表情を見るに何やらとても楽しそうなものを見つけた様子。
何しろ、タイラがそんな好奇心に満ちた眼差しでものを見ている事自体が、竜世には珍しかったのですから。
それは勿論竜世にとっても楽しみなことで、タイラが向かい始めた屋台を期待の眼差しで見つめました。
そうして、辿りついた先には、
「おー! すげえ! ネズミが回ってる!!」
「ここでは『ネズミすくい』をやってるにゃ。走ってるネズミの中に手を入れて、コロンと転がせられたら景品プレゼントするにゃ!」
「……やってくる。
いいか、近くから離れるなよ?」
屋台の店主ねこの言葉に、既に瞳を光らせて隠せないでいるタイラは、そう告げて一旦抱えていた竜世を地面に降ろしました。
これでタイラの動きを阻害するものは何もありません──実は、最初にこの流れるネズミ達の姿を見てから、ねこの動物としての血がうずいてうずいて仕方が無かったのです。
その間にも、ネズミ達は元気にレールの中を走り回っています。
「うおーっ、楽しそう! 頑張れよー!」
竜世も上がり続けるテンションから、お尻を上に上げて、尻尾をぶんぶん振りながら応援します。
「それじゃあ、お客さん。ネズミ達はこの場の特別協力で、お仕事が終わったらたらふくチーズを上げる約束をしているから、怪我させないようにお願いしますにゃ。……スタートにゃ!」
「む……!」
ネズミ達は無造作に動き回っています。これを怪我させずにというのは困難ですが、本能との狭間、それでこそ集中力というものは跳ね上がるもの──タイラは、果敢にネズミの群れに手を突っ込みました。
「行け! そこだ!」
竜世の応援を傍らに、大きめの隙間が空いた瞬間──タイラはそこに手を入れ、飛び込んで来た一匹のネズミをコロンとひっくり返しました。
「やったー!」
「にゃ! お客さん、模範解答のようなネズミ返しにゃ! 見事だにゃ。お客さんには、星幽塔で作られた『夜空をモチーフにしたお菓子セット』をあげるにゃ!」
タイラの手に箱の入った袋が手渡されます。中身は濃い青色のアイシングの上に、銀のきらめくアラザンをまぶしたクッキーの詰め合わせでした。
「やったな、タイラ! すげえ! マジすげー!!」
地面にいた竜世が、喜びの勢い余ってタイラに全力で飛び掛かります。その体格は、超小型いぬサイズと言えどもしっかりめ。
「ふん、このくらい当然──わ……っ!」
突然のことにそれをいなせず、その場に思い切り倒れたタイラは、喜びにあふれて全力でじゃれつく竜世は、嬉しさの表現の一環として──その鼻の頭をペロリと舐めました。
「──!? な、な……っ!? 何をするんだ!!」
悪気も何もなく──タイラは思考が真っ白になって、思わず竜世を突き飛ばしました。
「──? ってぇ! 突き飛ばすことないだろ!」
「煩い!」
「何で怒るんだよ。怒らなくてもいいじゃん」
楽しかったのに、何が悪かったのか分からない竜世は『ひとまず良く分からないけれども、タイラを怒らせた事だけは分かった』とばかりに、むくれながらも心の陰でほんの少しだけ落ち込みました。
対して、タイラも『とっさの出来事とはいえ、怒りすぎたか、そもそも今の竜世はいぬでこちらもねこで、だがそれでも──……』という思考を、お互いが小声で謝るまでの間、しばらく悶々と繰り返すことになったのでした……もちろん、それでも最後にはきちんと和解に至ったのは、言うまでもありません。
「もしもし、そこのしなやかな黒ねこさん。もしかしなくても、キラキラツヤツヤしたものがご所望ですかワン?」
「──?」
葉月が、あれからまた歩くことほんの少し。その背後にふと声を掛けられました。
振り返ると、屋台から一組のいぬとねこがこちらをつぶらな眼差しで見つめています。
「黒ねこさんの、先程の『ひかりもの』への情熱を、確かに確認しましたですニャ~」
「黒ねこさん、光り物お探しワン~? 実はここに……」
そう言って、いぬが後ろの荷物をガソガソと漁ると、その両手に持つ程度の大きさをした、一つの箱が出てきました。
「──────」
箱を開ければ、そこには鋭くつややかな孔雀石の刃と、柄に銀の装飾がされた、一振のナイフがありました。
大きさはペティナイフの更に小さめ、まさにいぬねこサイズです。
「これは……?」
「本当はご禁制の品ですワン。今話題の星幽塔の一品ですワン。でも、このお祭りで捌こうとしたら、ここに運ぶ途中で殆ど祭り終了まで取り上げられてしまったワン……」
そう言いながら、しょんぼりといぬが肩を落とします。
「綺麗と思って集めて売ろうとしただけニャのに……せめてこっそり残ったこの一品だけでも捌かないと、われわれの労力が全部無駄になってしまうニャ~」
「だから──これをあぶないことに使わずに、あぶないとも思わずに、ただ『綺麗』だと思ってくれるひとに売ることにしたんだワン。
お客さんは、そういうひとだと、先の一件で確信したんだワン」
「買って欲しいニャ~。買って欲しいニャ~」
いぬねこはそう言いながら、葉月がひとの名残で付けていたイヤリングをじっと見始めました。
透き通ったキラキラ光る緑色のイヤリング。もしかしたら、最初からそちらが目的だったのかも知れません。
「……」
しばらく後、いぬねこと少しのやり取りをした後、その箱を袋に入れて歩く葉月の姿がありました。
葉月は、そのままあのいぬねこの手に置いておくのも、そのまま危険な誰かの手に渡るのも危ないと判断したのです。
まさかの予想だにしない範囲で、刃物と宝石という二重の『ヒカリモノ』を手にしてしまった葉月でしたが、それもあまり気にする事なく、再び屋台を歩き始めました。
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SF・ファンタジー
動物・自然
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定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年12月30日
参加申し込みの期限
2019年01月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年01月06日 11時00分
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