ニャンとめでたいワンダフル！｜リアクション

ニャンとめでたいワンダフル！

【心から、記念すべき日にしたいから】

「──画材や額縁を広げて作業をしたいんだが、どこかに良い場所はないだろうか？」
「お祭り中で落ち着いたスペースはなかなかにゃいにゃけど、今ならいぬねこもまだ少ないフードコートとかはどうかにゃー？　額縁とか広げるなら綺麗なシートを貸してあげるにゃー」

　そうして、八神修と恵御納夏朝は、まだ人気もまばらなフードコートの端っこで、いくつかのテーブルをくっつけて臨時のアトリエを開設しました。
　夏朝が寝子島で買ってきた画材をテーブルの上に、置ききれないものや今は作業に必要のない物は、下に広げたシートに置いていきます。

「それじゃあ、俺はまず背景を。恵御納は人物を任せた」
「うん！」
　──始まったのは、この記念日を形にする為の絵の作成でした。
　ねこの王さまと犬のしょうぐんに、是非絵を作って贈りたい。それが夏朝と修の強い希望の一つだったのです。

　まずは修が画材を選び、一枚のイラストボードに背景を描き始めます。
　時間はそんなにありません。最初こそ僅かな緊張を伴いましたが、それ以降は、今日見てきたお祭りの情景を思い浮かべながら、一気に描き上げていきます。

　描かれる背景はＳＤアニメ調で、クラッカーの花吹雪が空の写実的な遠近よりも近く大きく広がる幻想的な賑やかさを重視した絵。
「よし……」
　背景のイラストがほぼ完成して、修が小さく息を零します。それは所々背景の中にある空白が不思議に思われる絵でしたが、
「うん、こんな感じかな……？」
　そこに夏朝が描いていた、祭りを楽しんでいるいぬねこ達が切り抜かれて、背景の空白に収め込まれると、その空間はとても素敵な雰囲気の絵へと変貌を遂げたのです。
「ああ、これは良いな」
　その出来映えに修も目を細めます。そして自分もいぬねこ達を描いては貼り、描いては貼り……

　そうして、そこに完成したものは、賑やかなお祭りの情景にいぬねこ達がいきいきと渡り歩き、中央にはねこの王さまと犬のしょうぐんがいる──とても楽しそうで夢の世界のようにファンタジックな、見ているだけで心が温まる一枚の絵画でした。

　最後に『ＨＡＰＰＹ』『ＩＮＮＴ』の文字に日付を入れて、それを題字に。端に修と夏朝のサインを入れて、それを額縁に収めます。
「これは、額縁が入っていた袋に入れておこう」
　完成した絵画を、修と夏朝は満足げにねこな瞳を細めつつ、それを一旦額縁が入っていた袋に入れました。

「それじゃあ、後は恵御納の番だな。ここは片付けておくから、後は頼んだ」
「う、うん。緊張するけれども……任せて！」