らっかみ！新春☆初夢宝船フェア！　～茄子編～｜リアクション

らっかみ！新春☆初夢宝船フェア！　～茄子編～

●夏（小山内海）

　―――ちりんちりん。
　風鈴が揺れる。
　縁側に座っていた小山内海が目を上げると、透き通ったガラス細工の風鈴から夏の陽がプリズムとなって小さく零れ落ちる。その欠片が目に入り、海はくすぐったそうに目を細めた。

（少し暑いけど、気持ちいい）
　海は居間まで開け放たれた広い縁側に座っている。大好きな縁側。庭の緑は夏の陽射しを受け輝いているが、この縁側はひんやりとした日陰を作ってくれている。そこに潮の香り混じりの風がいつも吹き抜けるのだ。海のサイドテールを結ぶ華奢なリボンを悪戯に揺らしながら。
　海の右脇には、汗を掻いてしまった麦茶のグラスと、海の可愛らしい口でも食べやすいようにと、細長く三角に切ったスイカ。左には海が思いのまま描き散らしたスケッチブックが広がっている。
（そういえば、スイカを食べるのを忘れてた）
　気持ち良くて、楽しくて、ついついスケッチに夢中になってしまったのだ。海は手を伸ばし、スイカをしゃくりと口にする。少し温くなってしまったスイカの汁が口に広がった。
（ああ美味しい）
　海は爽やかな甘さを喉に染みわたらせる。そして口をもぐもぐさせると。
　ぷぷぷっ。
　余り上手とは言えないが、可愛らしく種を庭に飛ばした。
（前からやってみたかったんだよねー）
　えへへと一人笑ってから、海はきょろきょろと辺りを見回す。お行儀が悪かったよね、誰も見ていないかな……？
　すると、ちりちりんと風鈴が鳴った。海はぱちくりしながら顔を上げ、揺れる風鈴に小さく笑った。
（しーっ）
　海がおどけて風鈴に向け、口の前で人差し指を立てる。風鈴が楽しそうにまたちりちりんと鳴った。

（なんて素敵な時間）
　遠くに聞こえる波の音。風に小さく揺れる木の葉の音。そして風の通り道を教えてくれる、風鈴の音。
　縁側に座る海を、自然がゆったりと包んでくれている。
　こんな時間が海は大好きだ。何も考えずに自分を自然に溶け込ませる一時。それは何物にも代えがたい時間なのだけど。
（……２人は、どうしてるかな）
　ちりん……と小さく揺れた風鈴の音に心を馳せるように、海は思い出していた。
　大好きな、友人と呼ぶには言葉が足りないくらい大好きな２人。
　海はスケッチブックを手に取り、ペラペラとめくる。そしてこの縁側を描いた絵を見つけ出した。
　海はそこにまた真剣な顔で何かを描き始めた。しばらくして。
（できた！）
　ぱっと明るい海の笑顔の下には、縁側に座る３人の少年少女の絵。仲良く並んでスイカを食べている。
　海はその絵をにこにこしながら眺めていたが、ふっと立ち上がった。葉書を書こうと思ったのだ。大好きなあの人達に。

　暑中お見舞い申し上げます。一緒にこちらで過ごしませんか？　―――あなた達と過ごす夏の一時は、きっと特別。