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- 00月00日生 00歳
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らっかみ！新春☆初夢宝船フェア！ ～富士編～
雪花石膏の柱が軋む。
永の時を耐え続けて来たものが今しも崩壊するその時に上げる断末魔は、野晒しとなった骨の鳴る音に少し似ている。
なればこれは、――愛するものたちが全身全霊で以て鳴らす最期の喝采か。
払暁の金の髪を雪より白く雪より冷たい肌に揺らし、少女は大理石の通路を滑るように進む。
雪花石膏の柱が軋む。永遠にも及ぶ月日の最後、疵瑕ひとつ走っていなかった柱に、喝采の音立てて無数の罅が走る。天使が喇叭を吹き鳴らし花の舞い散る天井絵の一点を支える柱の一本が、轟音と共に崩れて折れる。
激しく舞う白い土埃にも、かつて白き御使いの間と呼ばれ隆盛を極めた王国の城の広間に響き渡る崩壊の地響きにも微塵も動じず、少女はひとり、深紅のドレスの裾を揺らして直に進む。
白磁の肌を彩る金糸の髪は濡れるように艶やかで、伏せられた金の睫毛の下には煙るような琥珀の瞳、細い鼻梁の下には淑やかに色づけられ密やかに結ばれた唇。
触れれば折れそうなうなじを飾るは白骨の結晶が如き真珠と、鳩の血の色した紅い宝石の首飾り。
精緻なレースに飾られた胸元は、けれど一切の血色がない。蒼白くさえ見える肌の下には果たして血が通っているのかと疑るほどに、彼女には生気というものがない。
白と黒の広間を、紅きドレスの少女は行く。
少女が進む毎、少女の背後では雪花石膏の柱が崩れ、緩やかに弧を描く優美を描いた天井に無惨な亀裂が入る。歳月を知らぬかの如き大理石の床に千年の年月が一息に襲い掛かり、一瞬にして埃に塗れ罅割れる。
血の色のドレスの裾が揺れる。踏み出す爪先の見えないドレスの裾は、まるで幾年を経たかの如く、死人が纏い続けたものの如く擦り切れ綻びている。
崩壊の轟音を背に、静寂を纏うて少女は広間の一点を目指す。
そこは広間の央。滅びゆく世界の只中、ただひとりの少女を待ってただひとりの城の住人。
金糸の髪を飾る真紅の薔薇を微かに揺らし、少女は床ばかりに落としていた瞳をもたげた。一文字に結ばれていた唇が甘やかな笑みに和らぐ。
ああ、と少女はあどけないような声を漏らした。
それは待ち望んでいた邂逅に対する歓喜の声のようでもあり、望まぬ遭遇に対する絶望の声のようでもあり。
甘い香に誘われ迷い込んだ蟲を永遠に閉ざすという宝石の色した瞳がうっそりと微笑む。
彼女の瞳に映るただ一人は、黒衣の紳士。
真紅の少女をテールコートにシルクハットの第一礼装で迎え、紳士は優雅に一礼した。シルクハットを取る手は白骨、シルクハットの下から現れた頭は皮膚の一片も無い真白のしゃれこうべ。
白骨の紳士の姿に、真紅の少女は変わらず微笑みかける。伸ばされる骨の手を愛おし気に見つめ、切ない吐息を零す。
少女は怖じるように一歩下がった。ドレスの裾を摘まみ、楚々としたお辞儀をする。その足元に覗くはずの爪先は無い。
「この身は疾うに芥と化し、最早あなたに触れることも触れられることも叶いませぬ。それでも、私は此処に至らねばなりませんでした。此処に至りることで、此処に滅びをもたらさねばなりませんでした」
たとえば舞台の台詞じみた言葉を唇から紡ぎつつ、少女は紳士の骨の指にそっと手を伸ばす。
「さあ、共に」
手に手を重ね、崩壊してゆく城の轟音をもワルツの楽曲に変えて、骸骨紳士と亡霊少女はかつて数多の人々が舞い踊った御使いの広間で、今はただ二人でステップを踏む。
「やっと、……」
くるりくるりと舞いながら、少女は虚無しか宿らぬ眼窩を仰ぐ。表情さえ分からぬ頬骨を、整った歯列を見つめる。
大人びて蒼白い頬がふと、幼い少女じみて柔らかな笑みを宿した。
「やっと会えましたのですよ」
くすくすと笑う少女に、紳士はどこかしらの骨をカタリと鳴らして応じた。
「呪われた私の死も、呪われたあなたの永遠も、私に似た誰かの夢であればと願ったこともありました」
少女は白い指を伸ばす。触れた先から剥がれて崩れてしまいそうな紳士の頬骨に触れる風をする。
「夢で私は、見たこともない世界で、けれど普通に暮らすのです。おじい様とおばあ様と三人で、小さなお家で。ふふ、もしかすると骨が好きだったりするのかしら」
でも、と少女は儚く笑む。
「今となっては、如何でも良いこと」
こちらが夢でも、あちらが夢でも――
永遠に崩壊を続ける幻想の城で、ふたりは夢のように舞い続ける。
永の時を耐え続けて来たものが今しも崩壊するその時に上げる断末魔は、野晒しとなった骨の鳴る音に少し似ている。
なればこれは、――愛するものたちが全身全霊で以て鳴らす最期の喝采か。
払暁の金の髪を雪より白く雪より冷たい肌に揺らし、少女は大理石の通路を滑るように進む。
雪花石膏の柱が軋む。永遠にも及ぶ月日の最後、疵瑕ひとつ走っていなかった柱に、喝采の音立てて無数の罅が走る。天使が喇叭を吹き鳴らし花の舞い散る天井絵の一点を支える柱の一本が、轟音と共に崩れて折れる。
激しく舞う白い土埃にも、かつて白き御使いの間と呼ばれ隆盛を極めた王国の城の広間に響き渡る崩壊の地響きにも微塵も動じず、少女はひとり、深紅のドレスの裾を揺らして直に進む。
白磁の肌を彩る金糸の髪は濡れるように艶やかで、伏せられた金の睫毛の下には煙るような琥珀の瞳、細い鼻梁の下には淑やかに色づけられ密やかに結ばれた唇。
触れれば折れそうなうなじを飾るは白骨の結晶が如き真珠と、鳩の血の色した紅い宝石の首飾り。
精緻なレースに飾られた胸元は、けれど一切の血色がない。蒼白くさえ見える肌の下には果たして血が通っているのかと疑るほどに、彼女には生気というものがない。
白と黒の広間を、紅きドレスの少女は行く。
少女が進む毎、少女の背後では雪花石膏の柱が崩れ、緩やかに弧を描く優美を描いた天井に無惨な亀裂が入る。歳月を知らぬかの如き大理石の床に千年の年月が一息に襲い掛かり、一瞬にして埃に塗れ罅割れる。
血の色のドレスの裾が揺れる。踏み出す爪先の見えないドレスの裾は、まるで幾年を経たかの如く、死人が纏い続けたものの如く擦り切れ綻びている。
崩壊の轟音を背に、静寂を纏うて少女は広間の一点を目指す。
そこは広間の央。滅びゆく世界の只中、ただひとりの少女を待ってただひとりの城の住人。
金糸の髪を飾る真紅の薔薇を微かに揺らし、少女は床ばかりに落としていた瞳をもたげた。一文字に結ばれていた唇が甘やかな笑みに和らぐ。
ああ、と少女はあどけないような声を漏らした。
それは待ち望んでいた邂逅に対する歓喜の声のようでもあり、望まぬ遭遇に対する絶望の声のようでもあり。
甘い香に誘われ迷い込んだ蟲を永遠に閉ざすという宝石の色した瞳がうっそりと微笑む。
彼女の瞳に映るただ一人は、黒衣の紳士。
真紅の少女をテールコートにシルクハットの第一礼装で迎え、紳士は優雅に一礼した。シルクハットを取る手は白骨、シルクハットの下から現れた頭は皮膚の一片も無い真白のしゃれこうべ。
白骨の紳士の姿に、真紅の少女は変わらず微笑みかける。伸ばされる骨の手を愛おし気に見つめ、切ない吐息を零す。
少女は怖じるように一歩下がった。ドレスの裾を摘まみ、楚々としたお辞儀をする。その足元に覗くはずの爪先は無い。
「この身は疾うに芥と化し、最早あなたに触れることも触れられることも叶いませぬ。それでも、私は此処に至らねばなりませんでした。此処に至りることで、此処に滅びをもたらさねばなりませんでした」
たとえば舞台の台詞じみた言葉を唇から紡ぎつつ、少女は紳士の骨の指にそっと手を伸ばす。
「さあ、共に」
手に手を重ね、崩壊してゆく城の轟音をもワルツの楽曲に変えて、骸骨紳士と亡霊少女はかつて数多の人々が舞い踊った御使いの広間で、今はただ二人でステップを踏む。
「やっと、……」
くるりくるりと舞いながら、少女は虚無しか宿らぬ眼窩を仰ぐ。表情さえ分からぬ頬骨を、整った歯列を見つめる。
大人びて蒼白い頬がふと、幼い少女じみて柔らかな笑みを宿した。
「やっと会えましたのですよ」
くすくすと笑う少女に、紳士はどこかしらの骨をカタリと鳴らして応じた。
「呪われた私の死も、呪われたあなたの永遠も、私に似た誰かの夢であればと願ったこともありました」
少女は白い指を伸ばす。触れた先から剥がれて崩れてしまいそうな紳士の頬骨に触れる風をする。
「夢で私は、見たこともない世界で、けれど普通に暮らすのです。おじい様とおばあ様と三人で、小さなお家で。ふふ、もしかすると骨が好きだったりするのかしら」
でも、と少女は儚く笑む。
「今となっては、如何でも良いこと」
こちらが夢でも、あちらが夢でも――
永遠に崩壊を続ける幻想の城で、ふたりは夢のように舞い続ける。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年01月01日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年01月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年01月08日 11時00分
