●テストバトル場見学(3)


「では、行くぞMAKIYUKIくん！　一緒に叫ぶぞ、必殺メイジンダ―ビィィ――」

「あ、そう言うの、僕無理なんで」
　さらり、とクールに受け流しつつ、しっかりMEIJINと呼吸を合わせてメイジンダービームを放ってくる雪人くん。
　二つのビームは合わさって、ダブルメイジンダービームとなってギアマスター達のギアを狙います。
　最初に狙われたのは、防御が厚いぶん動きの遅いセラフでした。
　並の攻撃ではビクともしないセラフですが、ダブルメイジンダービームを受けると一気にＨＰを半分近く持っていかれます。
「むむ……！　セラフ、しっかりするのです！」
　キリエさんはセラフの左腕パーツを使い、自身のダメージを回復。しかし、とてもこのままでは回復が追いつきません。
「おぉ……。盾役のキリエのセラフのＨＰをそこまで削るとわ。二人ともやるねぇ」
　相方であるキリエさんのギアの性能を知り尽くしているからこそ、菫さんはその威力に驚きと感動を隠せません。
「何楽しそうにしてやがりますか！　セラフの頑張りを無駄にするなです！」
「ほいほーい。それじゃあ、本気出して行こうか、ユサールよ」
　狙うは、いつもと違うギアで不慣れなはずのMAKIYUKIのメイジンダーＸです。
「当たると痛そうだね。でも」
　しかし、雪人くんは、まるでいつも使っているギアのようにすいすいと自在にメイジンダーを操作。
　メイジンダーウイングで華麗に空を飛んではユサールの攻撃を回避します。
「おお、さすが！　メイジンダーＸで敵の攻撃をよけるなんて！」
　と、その無駄のない回避は、本来のメイジンダーＸの持ち主であるMEIJINも驚くほどでした。
「MEIJIN！　胸を借りるつもりで、本気で行きます！」
　そこに、勇樹くんのジャッジメントが、右腕のジャスティスブレードで真正面からメイジンダー・リトライに斬りかかります。
「その意気や良し！　だったら、僕も相応のやり方で応えよう！」
　勇樹くんの真正面からの攻撃に、MEIJINもまた真正面から応戦。
　なんとメイジンダー・リトライは左腕のメイジンダーナックルをみずからジャッジメントの剣に串刺しにして動きをとめます。
「な、なにっ……！？」
「今だ！　必殺のメイジンダァァァクラァアアッシュ！！」
　そして、次の瞬間、メイジンダー・リトライは右腕から得意技のメイジンダークラッシュを真正面から叩きつけて、一気にジャッジメントのＨＰをゼロにしました。
「凄い……！　まさに肉を斬らせて、骨を断つような戦い方！　勉強になりました！」
　勇樹くんは、MEIJINのヒーローっぽい戦い方を見られて、負けてしまってもとても嬉しそうな表情をしていたといいます。
「無茶するね」
　そんなMEIJINの戦いぶりに、能面の口元に苦笑を浮かべる雪人くん。
「さてと。僕の次の相手は君かい、ＳＨＯ？」
「いつもは共に戦う仲間だが、今回ばかりは本気で行かせてもらう」
　そんな彼に、今度は翔くんのリットことセイクビリットが立ち向かいます。
　リットは右腕の闇丸零式から小さな弾丸を連射しながら、ステルス機能の発動を狙います。
「消えられると厄介だね」
　と、雪人くんはメイジンダーＸの左腕からメイジンダーロケットパンチを繰り出します。
「……っ、避けろ、リット！」
　翔くんの声に応じ、リットはギリギリのところで翼を翻して、雪人くんの攻撃をかわします。
　そこからリットと入れ替わるように、桐子さんのトルーパーと源次くんのダイバーが地上を駆け抜けながらそれぞれの射撃武器で空中のメイジンダーＸを狙います。
「量産型のあとに、本物が登場！　それも新旧二体同時！　くー、燃える展開っす！」
「うーん。あと一歩、あと一歩で何か閃きそうなんだけど……」
　トルーパーの左腕のヘヴィマシンガンとカオスダイバーの右腕のチェインガン、それぞれの猛連射がメイジンダーＸを襲います。
　が、そこはやはりMEIJINの愛機。ノーマルパーツをベースに極限まで改造したボディはMAKIYUKIくんの操縦センスもあいまって、ほとんど致命傷を与えられません。
「ふーん。メイジンダーＸ、思ったよりも使い易いね。どことなくボナパルトと操作感が似ているような……」
　と、雪人くんは何かを呟きながらメイジンダーウイングでフル加速。
　テストバトル場を縦横無尽に駆け巡りながら、地を這うようにギリギリを飛びます。
　そして、そこで急旋回してからの変則的な動きで、ロケットパンチをトルーパー目掛けて放ってくるのです。
「お、おわっ！　スーパーロボット型でその動きは反則っすよ！」
　と、桐子さんはめいいっぱい回避機動を取りましたがあえなく命中。
　装甲の薄いトルーパーは一撃で撃破されてしまいます。
「ブースターを使った姿勢制御による急旋回……！　これだ……！」
　と、そのとき源次くんは雪人くんのメイジンダーＸの動きから何かを掴んだようでした。
「何か閃いた？　でも、ギアバトルの最中に考え方はよくないね」
「あ……」
　次の瞬間、いつのまにか目の前に迫っていたメイジンダーＸのメイジンダークラッシュによって、カオスダイバーも撃破。
「やられたな。でも――」
　確かな収穫があったのか、源次くんの表情はとても晴れやかでした。
「ふっふっふ。やるねぇ、メイジンダーＸ。けど、ピーキーさなら、僕のユサールだって負けちゃいないのさぁ」
　と、そこで漁夫の利を狙うように菫さんのユサールＢ３カスタムがメイジンダーＸに剣を構えて突撃。
「いい作戦だ。だけど、メイジンダーはＸだけじゃないよ？」
「なんですと！？」
　そこに側面から突っ込んできた片腕のメイジンダー・リトライがメイジンダークラッシュをユサールにお見舞い。
　逆に漁夫の利を狙われて、ユサールはテストバトル場の床に沈みます。
　こうして、残ったのはキリエさんのディヴァインセラフと翔くんのセイクビリットだけに。
「ぐぐ……！　セラフ、こうなったら一か八かでレーザーでやられるまえにやるのです！」
「いいだろう！　ならば、僕も全力のメイジンダービームでお相手しよう」
　決死の覚悟のキリエさんに、MEIJINも全力で応えようとします。
「……よし！　ステルス発動！　MAKIYUKI、姿を消した、俺とリットの攻撃かわしきれるか？」
「……厄介な相手ではあるよね。でも、やりようはなくはないよ？」
　ちょうどステルスの発動に成功した翔くんのリットと、雪人くんのメイジンダーＸもまた最後の戦いに突入しようとしています。
　そのとき、けたたましい警報の音がテストバトル場に響き渡りました。
「え……？」
「な、なんの音でやがりますか……！？」
　慌ててあたりを見回すキリエさんと翔くん。
「えー、これ、なんの警報なん？　うち、別に今回は迷子になっとらへんで？　ていうか、なんでMEIJINの人がここにおるん？」
　と、そこに奈々美さんの素っ頓狂な声が響いたものでしたから、勇樹くんは超びっくり。
「ちょ、奈々美……！　やっぱりお前、何か粗相を……」
「勇樹のアホ！　うちはなんもしとらんゆうとるやろ！　なあ、青山さん！」
　奈々美さんが振り返った先には青山さんと白燕さん、そして蒼さんの姿も。
　先ほど、社長が面白いものが見られると言ってたのを聞いてここにきた３人は、これも何かの演出かと思っていたのですが――。
「……この音は、まさかA.I.C.O.くんに何か！？」
　MEIJINが叫ぶやいなや、「君達は大会議室に戻るんだ！」と言って、ラボの方角に走っていた瞬間、これがただの演出でないことを理解します。
「あ、しゃ――じゃなくて、MEIJIN！　待ってください！」
　と、青山さんが呼び止める声さえ、先を急ぐMEIJINには届きません。
「……仕方ないわね。みんな、ひとまず大会議場に……って、あら？」
　そして、諦めた青山さんが子供達を引率しようとしたときには――

「待ってください、MEIJIN！　俺も一緒に行きます！」

　MEIJINに憧れる勇樹くんを筆頭に、子供たちはみんなそれぞれの想いを胸にラボの方角へ走り去った後なのでした。