寝子島全島水着デー｜リアクション

寝子島全島水着デー

　ファストフード店で晶を助けた桜は、そのとき水着を着ていたが、そこに至るまでは、葛藤もあった。

「水着で一日過ごす！？　えっ、なんでみんな受け入れてるの！？」
「だって暑いし町長がOKって言ってるんだから！　楽しまないと！」

　桜花寮の女子たちは、思い思いに水着を選び、きゃっきゃと着替えていった。
　スクール水着の子なんていない。みんなおしゃれでかわいいものばかり。

　見慣れた部屋に、見慣れたみんな。
　水着姿だって初めてじゃないけれど、部屋×水着女子の違和感はぬぐえない。
　それなのに、みんなは言うのだ。
「桜も早く水着に着替えなよ～」

「……マジか……」
　がっくり肩を落としつつも「早く早く」と言われれば、とてもNOと言えはしない。
（まあ、寮の中で過ごす分なら、これでいいかな……）
　可愛い水色フリルのビキニに着替え、桜は思った。
　それなのに、みんなは――。

「桜も準備できたね。じゃあ外に遊びに行こうか！」
「えええっ、このままで！？」
「リゾートみたいで楽しいじゃない」

（ちょっと待って、これはリゾートじゃない破廉恥よ！）
　全力で思ったけれど、みんなは楽し気に、シーサイドタウンを歩いていく。

　街中は、水着の人ばっかりだった。
（あっ、きれいな人がいる！）
　すらりとした黒髪ロング。
　黒のタイトサイドビキニを着た女性――真瞭には、桜も見惚れた。

「水着姿の皆さん！　水分補給も忘れずにしましょう！」
　町長をのせた広報車が、通りを走っていく。
　運転する白いビキニの女性は――朝衣は、ビキニだけどかなり暑そうだ。
（っていうか、お役所の人は水着で仕事なのね。大変だなぁ）

　そんなことを思いつつ、水分補給のために入ったのが、ファストフード店なのである。
「ねえ、あの子すごくない？」
　友達が話しているのを聞いて視線を向けたところに、晶がいた。
　正直驚愕の格好だったが、「それなら普通の水着は全然平気……かも」と楽しくなってきたのは事実だ。

「ねえ、この次どこ行く？」
「このまえ新しいアイス屋さんができてたんだけど」
「あのショップ見た？　この通りの裏の――」

（さっきの綺麗な人のアクセサリー、素敵だったな。あんな高価なものはつけられないけれど、水着に合うのを作ってみたい）

「ねえ、アクセサリーキットも見てみたいな」
　楽しむ友達の仲間に入り、桜が提案する。

（水着で寝子島散策、いいじゃない！）
　お店の椅子から立ち上がり、ウキウキ上機嫌の一歩を踏み出した、ところで。
「ああっ！」
　浮かれた気持ちが足に出たか。
　桜はうっかり体勢崩し、片足高く上がった太腿が、衆目の的に。

「うわあ、大胆なポーズね、桜！」
「ダンスでもしてるみたい！」

　友達たちが、やんやとはやし立てる。
　桜は「ああああ……」と頭を抱えて、しゃがみこんだのだった。

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