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僕の歌は君の歌
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かたこととバスが揺れる。すでに未舗装の道にさしかかっている。
乗客は自分ひとり。
都府楼 暦
は目を細め、窓の外を見やった。
ようやく一日の暑い盛りが過ぎて、そろそろ夕方といったところだ。夏の外出はこの時間帯に限る。
そう、これは帰路ではなく往路。休日を利用して彼女は、里山へと足を伸ばしたのだった。
やがて目指す停留所が見えたので、暦は白い指で停車ボタンを押した。ピンポンというチャイムが、がら空きの車内にこだました。
黒いレース地の日傘をさす。真夏には欠かせないアイテムだ。
長袖のシャツも欠かせない。燃える太陽にうかつに当たろうものなら、ことは単なる日焼けではすまないだろう。色は、ため息がこぼれるようなアイリッシュグリーン。
靴は山道でも歩きやすいスニーカーにしている。ちょっとしたブランドものだが、この靴を選んだポイントは外見ではなく履きやすさだった。羽根のように軽いのも気に入っている。
そうして暦は歩き出す。山のほうを目指して、てくてくと。
やがて小川のせせらぎが耳に届くようになる。
けれども、それ以上に届いてくるのは競い合うようなクマゼミの鳴き声だった。
――クマゼミの合唱は街中で聞き飽きてるんですよね。
アブラゼミやミンミンゼミはいないでしょうか?
暦は懐中電灯やお茶入り水筒もしっかり用意していた。
本日は最終バスで帰るつもりだ。といっても、夏の陽が没してしばらくしたらもう最終という早いペースだけれども。
蝉時雨を浴びながら歩き続ける。やっぱりクマゼミの声ばかりだが、ときおりそこに他の種類も混じる。ストローで氷を混ぜている最中のアイスコーヒーに、ひとしずくミルクを垂らしたような印象があった。
とくに当てもない散策の途中で、暦は古刹にたどり着く。
正しくは、その境内にある墓地に。
長年風雨にさらされて丸くなった墓石。
崩れた隙間から雑草が顔を出す石段。
色あせた卒塔婆。
それでも全体としては綺麗だった。定期的に掃き清められているのではないか。
「……」
暦は立ち尽くした。
この光景に心惹かれたからというのもある。
だがそれより、見知った顔を見出したためというのが大きい。
「あれ……九鬼姫さん?」
見間違いではなかった。呼びかけると、黒い髪を切りそろえた
九鬼姫
(くきひめ)が、なんじゃ? と振り返ったのだ。
蝉鳴く真昼に見る夜の蝶。九鬼姫は透明感のある笑みを見せた。番傘風の日傘を手にしているけれど、白いTシャツにジーンズがまるで似合わない。Tシャツに描かれたアメコミのヒーローが、こちらに向かってシールドを投げつけている。
ラフすぎる服装のせいか同年代に見えるが、九鬼姫の職業はキャバクラと呼ばれる店の接客店員だ。ひらたくいえばキャバ嬢である。二十歳は過ぎているだろう。
けれどもこうして西日を浴びて立ち、
「そなたか。妙なところで会うの」
と笑みを浮かべている彼女には、あどけなさすら感じた。
そうですね、と暦は翡翠(ひすい)のような瞳をゆるめる。
「もしかして、ご縁がある方のお墓ですか?」
「……だとしたら、よいのじゃが」
首を振る九鬼姫の様子からして、おそらく本当のことだろう。
「過ぎし世を偲ぶきっかけになるやと思うたが、果たせなんだわ」
ふわっと足元の砂利を蹴る。
足元はサンダルだ。これもホームセンターで買ったような安物でまるで似合っていない。
しかし九鬼姫の沈んだ表情は、暦のひとことでたちまち解けた。
「まあ、立ち話もなんですし、境内のベンチでイチゴチョコ掛けプレッツェルでもいかがです?」
大樹の影がさすベンチに腰をかけると、猛暑がぐっとやわらいだ。
蝉時雨はあいかわらずだ。
そこにポリポリポリとアクセントを加える。
暦と九鬼姫はならんだまま、しばらく無言でプレッツェルを消費した。
イチゴを摸した甘い香料の香りがする。
やがて暦が言った。
「九鬼姫さんはなにか探されてるんでしょうか?」
九鬼姫はかるく目を閉じて、ベンチに背を預ける。
「探しとるよ」
前に言うたよな? と問うてから続けた。
「わらわはいにしえ……この世からみて五百年だか昔の者から参った。まあ」
と言ってポケットからスマートフォンを取り出す。
「こういうものにも慣れたがな。重宝しておる」
暦がふっと微笑するとうなずいて、
「戻ることはかなわぬじゃろうし、いまの暮らしもそれなりに気に入ってはおる。それでも、せめておのが生じたかつての世の、なにがしか痕跡くらい見いだせぬかと思うて探しておるのじゃ。なかなかそうもいかぬがな。……おかしいか?」
「いいえ」
暦は答える。
「誰しも、何かを探しながら生きているのではないかと思いますから」
「そうか」
「ええ」
涼しい風が吹いてきた。
九鬼姫が本当に、十六世紀の人間なのかどうかはわからない。キャラ作りとして演じているだけかもしれないし、妄想にとらわれているだけなのかもしれない。
だとしても、暦は彼女といると面白いと思う。彼女のことが好きだ。
「きりぎりす、か」
九鬼姫がつぶやいた。
宵闇がさし、蝉の和声もやんでいた。
そうして山の音楽は、キリギリスの声をメインボーカルとするものへとうつろっていたのである。
「面白いものが見られるかもしれません」
つとベンチをたち、足音を忍ばせながら暦は木の根元に近づいた。黒髪を揺らして振り返る。
「ほら、セミの幼虫ですよ」
囁くように告げる。興味を持って九鬼姫もついてきたのだ。
揃ってしゃがみ込み、見守る。木の根元、五十センチくらいの位置だ。
何年も眠っていた地面から這い出てきた幼いものが、いよいよ地上に飛びたとうとしている。
「羽化し始めてますね……まるで真珠みたいに真っ白で、虹色に輝いて」
うん、とうなずく九鬼姫も、魅入られたようにその場から動かない。
すでに背中はほとんど露出していた。ゆっくり、ゆっくりと皮を破って、頭を抜き出そうとしていた。ぺり、ぺり、というやわらかな音が聞こえるような気がする。
宝石にはない命の煌めきがあった。
一週間しか生きられぬ世界へ向かう蝉は、いまなにを思っているのだろうか。
何気なく手首を返して、
「あ!」
暦は飛び上がりそうな声を上げた。
急がないと、と九鬼姫に手を差し出し立ち上がらせる。
「なにをじゃ?」
「もうバスの時間です!」
これを逃したら朝まで帰れない、そう言って急かすのだが、九鬼姫は合点がいかない顔をしている。
駆け足でバスに飛び乗り、最後部の座席にならんで収まった。
「……やれやれ、危ないところでした」
「くたびれたわい」
今日が非番でよかった、と言うと九鬼姫はバスの窓枠に頭を預ける。
走り出すと間もなく、九鬼姫はうつらうつらしはじめた。暦が声をかけても生返事で、やがて完全に眠ってしまった。
暦も欠伸をかみ殺す。自分も眠くなってきた。
今日の最後のナンバーは……まどろみの中で夜の蝶の寝息でしょうか?
ぼんやりとそんなことを考えた。
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担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年11月26日
参加申し込みの期限
2018年12月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年12月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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