ブリリアントナイトメア～悪魔は残滓の狂乱を弄する～｜リアクション

ブリリアントナイトメア～悪魔は残滓の狂乱を弄する～

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★再会、想い、帰還（２）

「ムク。今回も、一緒に戦ってくれて、ありがとう」
　真っ直ぐにそう告げて、呉井陽太は、ムクの太い首にそっとしがみついた。
　穏やかな温もりが、身体中に染み渡る。
　くるる、と、ムクが喉を鳴らした。
　また会おうね、と、大好きな友人に訴えるみたいに。
　そのすぐ傍では、卯木衛が、カイとの別れを惜しんでいた。
「今日も世界一かっこよかったぜ、カイくん！」
　言って、衛は、カイの首に腕を回し、その首元にもふもふと顔をうずめる。
　くぅ、くるる、とカイが鳴いた。
　顔を上げて、カイに、弾けるような笑顔を見せる衛。
「うん、絶対、また！　カイくん、またな！」
　名残を惜しみながらも、翼獣達は、ドーム内に生まれた《ゲート》を潜っていく。
　その向こうに彼らの故郷を見ながら、仙藤紫はモモの背を撫でた。
「今度は、大きくなった子供達にも会いたいわ」
　楽しみにしてる、と零せば、モモはくくると鳴いて、紫の身体に頭を寄せる。
　八神修とサキリ・デイジーカッターがその場所にやってきたのは、ちょうどその時だった。
　ヨクが修の元に、シースがサキリの元に集まってくる。
「もうお別れなんだな……ヨク、ありがとう」
「即席のバディにしては、中々いいコンビネーションだったね、シース」
　ヨクが落ち着いた調子の鳴き声で返事をし、シースも満足げにオオウと吠える。
　恵御納夏朝はドームの壁際に座って、そんな仲間達の様子を眺めていた。
「夏朝ちゃん、怪我、大丈夫？」
　声をかけて隣に「よいしょ、」と座ったのは、志波武道だ。
　夏朝は、武道の方に顔を向けて、こくと頷いた。
「ありがとう。僕は、本当に大丈夫だから」
「そっか。じゃあ、一安心だ」
　大丈夫だと言った夏朝も、屈託なく笑う武道も、応急処置こそ終えているものの満身創痍だ。
　それでも２人は、
「……奴を倒せて、良かった」
「俺も、センセーを助けられてヨカッター！　って思うよ」
　なんて、緊張の糸が解けたような表情で言い切るのだ。

※

　一方、ウォルター・B先生の元へと駆け寄った倉前七瀬は、
「ウォルター先生！」
　と、尊敬する先生にひしっと抱き着き、
「がふっ」
　そのまま、殆どノーモーションで、その人に全力の頭突きを食らわせた。
「倉前、君、いきなり……」
「っ、先生のあほー！！　すごく心配したんですよ！？」
　七瀬の声にかき消された台詞の続きを、ウォルター先生は口にしなかった。
　身を離し、顔を上げた七瀬の目からは、涙がぼろぼろと溢れていたから。
　視界を滲ませるものを手の甲で拭いながら、七瀬は思う。
　――……涙がいっちょんとまらんのは、先生が無事だったっていうことへの安堵と、
「……さっきの頭突きのせいです」
「……うん。ごめんね、倉前」
「先生のせいで、頭が痛いです」
「うん……うん、ごめん」
　ありがとう、と、ウォルター先生は、七瀬の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
（後悔なんて、誰もがするもの。だからこそ僕は、今の先生が大好きです）
　もう一度目元を擦って、ウォルター先生の顔をぐいと見上げて。
「……帰りましょう、ウォルター先生」
　涙でぐずぐずの、けれど真っ直ぐな響きを帯びた声で、七瀬は言った。

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