携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1

「ギアバトルで負けるとカプギアが破壊される、ねぇ」

　白いツインテールを揺らしながら歩いているのは白真白。
　真白は最近、寝子島の少年少女の間で噂されているとある話に注目をしていた。
　それはカプセルギアのギアバトルで敗けたら所有しているカプセルギアを破壊されるというもの。

「全く大人げない。自分も相手も楽しんでこそのギアバトルだっていうのに」

　この言葉からも解るように真白はその行為をけして許容する事はない。遊びにそんなリスクなんてあるべきではないのだ。
　故に成敗しようとその噂の相手を探して歩いている途中なのだ。

「現れたね……。名前はミノタウロスだっけか。ん、あれ……？　マスターが見えないけど、一体？」
『カプセルギアを出せ。そして、俺と勝負するが良い』

　いきなり現れた謎のカプセルギア、ミノタウロス。
　そのミノタウロスから声が発せられた時は、真白も驚きを隠せなかった。

「カプギアが喋ってる？　ううん、でも、とにかく今は勝負！」

　ミノタウロスに宣言するようにそう言うと真白は自らのカプセルギアであるネージュリェーツを取り出す。
　見た目は言わばアラクネといったところだろうか。様々なパーツを組み合わせて塗装されたそのカプセルギアは苦心して作られている事が解るギアであった。

「さぁ、行くよ、ネージュリェーツ」
『来い！』

　真白のネージュリェーツは基本的には射撃を得意とするギアである。それ故に距離を離して戦うのが基本戦術となるのだが、ここで1つ問題が出てくる。
　ネージュリェーツはけして素早い機動を持つギアではなく、逆にミノタウロスは直線だけとは言えどもスピードがあるギアであるという事だ。

　考えもなしにただ射撃をしていれば捕まってしまう事は明白。あの大槌の一撃をまともに貰えば形勢は一気に傾いてしまうだろう。
　付かず離れずという距離を保つ事も大事だが、それだけではまだ足りない。真白は勝利の為の道筋を考えて行く。

「相手の視線と直線にならないようにしないと」

　ミノタウロスの形からして恐らく進む時は前の筈だ。ならば、その視線からずれた角度に移動さえすれば高速移動で詰められる事はない筈。もう少しで間に合う、という状態にすれば相手も何とか追いつこうとしようとするだろう。
　そうしながら牽制の為にバレットシャワーによる弾幕を張っていく。1つ1つは威力は高くなくとも、蓄積していけばその内それなりのダメージになる。

　真白が見る限り、相手は小回りは苦手としているのは理解できた。だが、幾らそうであってもこのままずっと視線から逃れ続けるのは難しいだろう。
　だが、ネージュリェーツの武装はバレットシャワーだけではない。高威力であるエネルギー砲が胸にあるし、更に罠に使えるものも右腕に付いている。
　この右腕のパーツこそが一番重要であると真白は考えている。

「焦ったらダメ。この弾幕で上手く隠してばれないように設置しないと」

　罠というのはばれたらそれまでだ。つまりそれを隠蔽する為に今、弾幕を張っているというわけだ。
　そして、罠自体は仕掛け終えた。後は、相手を誘き寄せるだけだ。これについてはそう難しくはない。隙さえ見せれば恐らくは飛びついて来るだろう。

「あっ！」
『隙を見せたなぁああああっ！』

　ネージュリェーツは何かに躓いたかのような挙動をして、動きを止めてしまう。
　それを好機と見て取ったミノタウロスが一気に距離を詰めようとして――しかし、それは途中で止められる。

『グゥオッ！？』
「残念、隙を見せたのはそっちだったわね！」

　突っ込んで来たミノタウロスを絡めとる蔦。
　動きを止めたミノタウロスにネージュリェーツが突き出すようにして撃ったエネルギー砲による光の柱が突き立つ。

『馬鹿なぁあああああっ！』
「ふふーん、どんなもんよ！　さて、お相手のマスターさんも顔を出したりしないかな？」

　キラキラと輝くような真白の満面の笑みとピース。
　だがしかし。

「………出てこない？　って、倒したカプギアが……！」

　地面に倒れていたミノタウロスがひび割れるように砕けたかと思えば、全てのパーツが昏い緑の炎の中へと消える。

「……一体、何なの？」

　残ったのは真白の呟きだけであった。