携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1

「相手、ギアマスターさんがいない、ような……」

　突然挑まれたギアバトル。その相手であるカプセルギア、ミノタウロスを見て環的子はそんな風に呟く。
　そもそもの話、この相手であるミノタウロスには謎が多い。勝った際にはカプセルギアを破壊すると言う話は的子も耳にしていた。
　不思議には思うもののカプセルギアを破壊されるというならば、万が一にも負けるわけにはいかないと的子は集中をする。

「行くよっ、ネオム！」

　的子のカプセルギアである空ネオムは空を飛ぶ機能を有している。しかし、今回は最初はそれを隠す事に的子は決めていた。
　つまり、序盤は地上戦という事になる。

『グルォォオオッ』

　空ネオムに対して薙ぎ払うように大槌をスイングするミノタウロス。
　それを軽快なステップを踏むようにして回避する空ネオム。そのまま追撃や接近を簡単には出来ないように縦と横の移動を行いながら翻弄するように動きながら右腕に取りつけられたプラズマカノンを撃って行く。

　こうした接近戦を得意とするタイプと射撃戦を得意とする空ネオムのようなタイプで、空ネオム側が注意すべき事は距離感である。
　射撃の優位とは即ち距離を取って攻撃を出来るという点にある。特にミノタウロスのような距離を取っての攻撃手段を持たないタイプには距離さえ取っておけば一方的に攻撃出来るのだ。
　だが、攻撃に意識を裂きすぎて接近されるというのは愚の骨頂。故に意識は射撃よりも移動と回避に裂く方が良いという事になる。

　その観点からすれば、的子が行う操作は素晴らしいと言えるだろう。
　常に敵との距離を確認し保つ事を心掛け、けして立ち止まらずに動き続けているのだ。

『おのれ、ならばぁっ！』
「来る！　『飛ぶ』よ、ネオム！」
『何ぃっ！？』

　ストンプの兆候を見せた後に高く舞い上がるミノタウロス。
　だが、ミノタウロスが落下し始めたところで、的子が空ネオムへと声をかけ、そして、空ネオムがその言葉に応えて空を飛ぶ。

『空を、飛べたのかっ！』
「ここまで隠し通しておいたんだよ！　この勝負の切り札としてね！」

　地面を揺らし動きを止めるストンプも相手が地上にいなければ意味はない。
　だが、的子からすればそれだけではないのだ。そもそも飛べる事を隠して、距離を取った射撃戦を行ったのは全てはストンプをやらせる為だ。
　ストンプの挙動は地面を叩いた際にとても無防備となる。地面にいればそれを避ける為の行動をしなければならないが空を飛んでいる空ネオムにはただのチャンスなのだ。

「さぁ、ネオム！　全力全開！　これで、どうかな！」

　左腕に取りつけられたアタック増幅の機能を用いて、プラズマカノンを強化。
　右腕から迸る青白いプラズマ。一瞬の間を置いて、先程よりも強力なプラズマカノンの弾がミノタウロスへと殺到する。

『グォォオオオオオオオッ』

　それは正しく断末魔のよう。昏い緑の炎は消え失せ、重い音を立てて地面へと膝を着くミノタウロス。

「あなたのマスターはどこ？」

　空から降りてきた空ネオムを回収しながら的子はミノタウロスへと尋ねる。
　相手はカプセルギアだが、言葉を話しているし明らかに自意識があると思ったのだろう。

『マスター、だと？　そんなものは存在せぬ！　我等はただ我等の目的の為に！』

　まるで全ての人間へと届けとばかりに叫んだかと思えば、ミノタウロスの全身を昏い緑の炎が包む。

「あっ！」

　的子が声を上げるも、昏い緑の炎が消えた後にはどこにもミノタウロスの姿はなかった。