携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1

「ふんふんふふーん」

　鼻歌を歌いながら寝子島の街並みを歩く仙藤蒼。適当にぶらついているようにも見えて、実は目的があっての事である。
　ミノタウロスと呼ばれるファンタジーに良く出てくる存在。それを模したと思われる巨体のカプセルギアが最近、出没してはギアバトルをいきなり挑んで来てカプセルギアを破壊していると言う。

　そんな噂を聞きつけた蒼は情報収集を行った後に、そのミノタウロスと戦う為にこうして街を徘徊しているというわけだ。
　蒼とてカプセルギアを持つギアマスターの一人。集めた情報から察するに自らにも目をつけるだろうと踏んでの事だ。

　そして、それは来た。

「っ、これは……」
『人間よ、俺と戦え』

　専用アプリA.I.C.O.に届いたギアバトルの申請。そして、蒼の前に現れし昏い緑の炎を纏うカプセルギアからの挑戦の言葉。
　間違いないと蒼は確信する。これがミノタウロスだと。

「良いでしょう、勝負よ！」

『ブォオオオオオオオオオオッ』

　蒼が事前に集めていた情報通りミノタウロスはまず咆哮と共に突っ込んで来た。
　その巨体に見合わぬスピードと巨体に見合ったパワー。ミノタウロスの武器はその2つであるようだった。
　だが、スピードこそあるものの小回りはあまり利かないという弱点もあるようで、蒼はそこを突く事にしたようだ。

「ゲーマーを嘗めないでよね！」

　その言葉通りにミノタウロスの大槌によるパワフルな一撃をギリギリのところで躱す蒼のカプセルギア、Diablo Azul。
　このDiablo Azulは遠・中距離攻撃仕様となっている為、近距離戦は苦手としている。つまり近寄られたら分が悪いのだが相手はスピード自体はあるので対策を考える必要があった。

　そこで蒼は小回りが利かないという事を利用して、回避した後に両肩のキャノン砲をまず片方の脚部へと斉射。そして、高速機動を行いながら牽制射撃を続けて行く。
　本来であれば遠・中距離攻撃専門であるDiablo Azulにわざわざこのような事をさせる必要はないかもしれない。しかし、一度はどの程度のスピードでどのように回避すれば良いのかを見ておく必要があると蒼は判断していた。
　勿論、それはリスクのある判断でもある。だが、リターンも当然あるからこその判断だ。

「ふふっ。狙い通りね」

　狙い通りとは一体何か？　それはすれ違い様のミノタウロスへのキャノン砲による斉射にあった。
　接近状態ならば一部への集中射撃も難しくはない。これによってミノタウロスの敏捷性をある程度奪えれば、ハイリターンとなる。そして、それは上手くいっていた。

『人間、貴様っ！　俺の脚をっ！』
「もう遅いわ。あなたのスピードは確かに大したものだったけど、それも万全であればこそ。それでは私のDiablo Azulに追いつく事は出来ないでしょう？」

　如何にパワーがあれど近距離攻撃しかないミノタウロスでは距離を取った相手に当てる手段はない。
　だから、接近する必要があるのだが、その為のスピードを失っている。残る手段は――

「ええ、そうでしょうね。ストンプしかない！」
『何っ！？』

　ミノタウロスが行うストンプはジャンプしてから地面を叩くというもの。これにより地面を揺らし相手を一時的に動けなくするのだ。
　これならば機動力を殺されたミノタウロスでも距離を詰めれる可能性はある。

　だがそれも、読まれていなければの話だ。
　ストンプを行う為にはまずジャンプをしなければならない。それをすると解っていればそこに集中射撃を行う程度の事は蒼ならば簡単な事だった。

『おのれ、おのれぇええええええっ！』

　着弾する幾つものキャノン砲の弾。それが終わった時には決着が着いていた。

「まっ、こんなものでしょ」

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