あなたの《誰か》を教えてください！｜リアクション

あなたの《誰か》を教えてください！

　これは、タイラ・トラントゥールが寝子島にやってきて、間もなくの物語。

「おはよう、タイラ」
　朝目覚めて、自室から出てきたタイラを出迎えたのは、母親の声だった。
「おはよう、ママン」
　少し身を屈めて、タイラの頬に柔らかなキスを落とす母。
　タイラも母の頬に、ごく軽いキスを返す。
　ママンは良い匂いがする、と、タイラは何気なく思った。
　既に、やや派手めの、フォーマルなワンピーススーツを身に纏っている母が、

「さ、タイラ。朝ご飯の時間よ」

　と、タイラを優しく促す。
　こくと頷いて、タイラも、母に続いて食卓へと向かった。
　家政婦の用意した朝食は、今日もテーブルの上で、誇らしげに美味を主張している。
　タイラの母は、普段の家事は、家政婦やシッターに任せていた。
「わあ、今日は日本食ね。フランスでも食べられないわけじゃないけど、日本に戻ってきた、って感じ」
　声を華やがせながら、母が席に着く。
　タイラもそれに倣い、２人で「いただきます」を唱えたら、食事の時間の始まりだ。
「ねえ、タイラ。日本はどう？」
　食事中に零された問いに、タイラは少しだけ、答えを思考する。
　そして結局、正直に応じることを選んだ。
「まだ、わからないな」
「そう、そうよね。環境があまりにも違うもの。すぐに慣れるものじゃないわ」
　うんうん、と、納得したように頷く母。
　寝子島にやってくるまでは、主に、フランスで暮らしていたタイラである。
　母の方は、外交官の娘でフランスへの滞在期間も長く海外寄りの思考だが、日本人だ。
　それでも自分の意見を真っ直ぐに受け止めてくれる母のことを、タイラは愛している。
　自由奔放で気ままな人だが、母の、タイラへの愛情は間違えようもなく本物だった。
「ママンはね、タイラに無理はしてほしくないけど……」
　タイラもこの島を好きになってくれたら嬉しいな、と思ってるの、と、母は鮮やかににこりとする。
「……善処は、する」
「あら、重ねてになるけど、無理はしなくていいのよ、タイラ。……あ、そうだ」
　母が動くと、茶色のセミロングヘアがふわりと揺れた。
　ほっそりとした手がテーブルの上にそっと置いたのは、小振りの包み。
「……ママン、これは？」
「この島で、今、流行ってるんですって」
「プレゼント？　メルシー、ママン」
　母の眼差しが、「開けてみて」とタイラに促している。
　タイラはそっと包みを開けて、中の物を取り出してみた。
　中で眠っていたのは、小さな――、
「……玩具？」
「カプセルギアと言うらしいわ。色は違うけれど、シャルルみたいでしょう？」
　笑みを浮かべて尋ねる母に向かって、タイラは一つ頷いた。そして、
「大切にする」
　と、心の底から誓う。
　母は、益々嬉しげに笑み崩れた。
「シッターにも別で用意するから、遊んでみてね。そのうち、遊び仲間もできるかもしれないわよ」
「それは……どうだろう」
「あら、わからないじゃない。素敵な友人との、運命の出会いがあるかも」
　留学中にタイラの父親になる人と出会い、熱愛の末、大学卒業と同時に結婚した母だ。
　運命の出会い、という言葉が出てくるのを、母らしい、とタイラは思う。
（まあ、ボクに縁があるかは、別の話だが……ママンからの贈り物は、嬉しいな）
　そんな想いを胸に沈めるタイラの手の中で、カプセルギアは、静かに光っていた。

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あとがき

担当マスター：巴めろ
ファンレターはマスターページから！

お世話になっております、ゲームマスターの巴めろです。
まずは、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました！

Ｘイラスト、素敵ですね！　楽しいですね！
ＰＣ様方と縁の深いキャラクターさん達を沢山、深く描かせていただけて、
私も、ものすごく楽しかったです！
通常は、Ｘイラストのキャラクターさんはリアクションに登場しませんが、
ＰＣ様方と共に、彼らも、らっかみ！　世界で活躍していくのを、
私も、わくわくそわそわと楽しみにしております！
需要があるならば、またこういったシナリオも出したいな……。

重ねてになりますが、ご参加くださった皆様に心からの感謝を。
この度も、本当にありがとうございました！

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