【星幽塔】お買い物日和｜リアクション

【星幽塔】お買い物日和

☆喫茶　迷い猫

　旅鴉月詠は、喫茶迷い猫の店主にして食材研究家である。
　通りにあるこの喫茶店は、開いてる日時は気まぐれだ。
　だが宿屋と提携してモーニングサービスができるし、酒場と同じクエストボードがあるのが売りだ。
　噂を聞いた冒険者のお客の呼びこみに力を入れている。
「理由はあって、仕入れ状況によってどんな料理が出せるか変わるのだ」
　興味を持って尋ねたお客の問いに、月詠は語る。
「食材を研究することで塔の料理文化に貢献を、という店主のただの趣味であるが……食材を持ち込めば格安で料理にするよ」
　というわけで、酒場にも貼ってきたクエストが貼られている。
『食べられそうな魔物肉もってきて』
　
　その仕入れ結果による本日のお品書きがこちら。

　キマイラカツレツ
　ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つキマイラの肉を下ろして下味をつけ高温で炒め焼きしたカツレツ。
パン粉は足軽小麦を用いたものを使用し、エリクシルハーブによって肉の臭みを消した。
　ほぼ獅子の肉だが山羊肉と蛇肉も余さず用いている。

　ドラゴンロールサンド
　人食いワニの肉をじっくり焼いたクロコステーキをドラゴンキャベツで包み、焦熱小麦のパンで挟んだサンド。
　食べやすく持ち運びやすい。

　魅惑のバニラパフェメロン添え
　第八層から流通した魅惑の粉とマッスルバニラ、シュガーメロンで作った果糖を混ぜ込んで冷やし固めたバニラアイスの盛り付け。
　さらにシュガーメロンをふんだんにグラスに添えたパフェ。
　お好みでレインボーベリーやモグラダイヤのソースをかけてどうぞ
　食べた人が魅惑的に見える効果があるので食後のミントティーをセットで。

「野菜からドラゴンまで。手強くて食べられそうな魔物を見るとウキウキするね。これら食材は冒険者に依頼したり農場や市場から持ってきたり、味は店主の腕の見せ所ってやつだ」
「なるほど」
　感心するお客に月詠は言う。
「勿論普通の料理もあるよ。開いてたら気軽に来店してほしい」
　そしてしれっと一言付け加えた。
「たまに実験料理をサービスで出してくるので御用心」
「えーと、今日のは大丈夫なんですか」
　心なしか青ざめて聞く客。
「ふふ、今日は大丈夫」
　どこまで本気か知れない店主の笑みであった。