【星幽塔】お買い物日和｜リアクション

【星幽塔】お買い物日和

☆Barアストラルと盗賊

　星の酒場“Barアストラル”の看板娘アリス・ミーティアは、開店前の店内のお掃除に精を出していた。
「美味しそうっ」
　水色のロングヘアをなびかせ、お酒の準備をしながらつぶやく。
（今日も良いお酒があるね。一番は生中だけど）
「マスター、準備終わったよ。グラスもピカピカ」
　マスターに声をかける。
「今日はリリエルが休みだから忙しくなるけど、よろしく頼むよ」
「はーい！」
　元気にマスターに返事をし、開店時間まで奥の片づけをする。

　そして開店。
「いらっしゃいませー！」
　元気に明るく、笑顔で声をかけて、てきぱき席に案内する。
「注文はお決まりですか？」
「ドラゴンステーキですね、かしこまりました♪」
　隣にいた客が話し始める。
「ドラゴンステーキって言えば、俺こないだドラゴンと戦ってきたぜ」
　耳聡く聞きつけたアリスが目を輝かせた。
「えっ、本当？　どこで？　どんなドラゴン？　お話聞かせて！」　
　ついお客さんと話しこんじゃってマスターから呼び出しかかるのはよくある事。
「だって面白そうな話してるんだもん。聞きたくなるよね」
　冒険の話が特に大好きなアリスは懲りていない。

　盗賊のティオレ・ユリウェイスは、満足した顔で故買屋を後にした。
　盗賊仕事で得たお宝をに売り払ったのだ。
（この前は足元見られたが、今回は弱みを握っていたこともあってキッチリ満額支払わせた。これでしばらくは遊んで暮らせる）
「まずは次の仕事に備えて、色々と細々した物を買っておこう」
　薬屋『Uisge beatha』では、日膏薬、星の滴などの薬を購入。
　次に武器屋へ立ち寄り、スローイングダガーなどを何本か購入した。

　それがすんだら今度は衣装屋へ寄って、踊り子用の衣装を何点かチェックした。
　盗賊稼業は不安定な仕事だ。いろいろ調べて万全の準備をしてお宝を狙っても、ろくに収入がないことも珍しくない。
　それどころか下手を打てはケガや命の危険さえあるのだ。
　ティオレは副業として踊り子をやっているが、そのため衣装類やアクセサリー類には気を遣う。
　元々着飾るのは好きだから、アクセサリーをじゃらじゃらつけるのは趣味なのだが。
「よう、あんた向きの衣装があるぜ、着てみなよ」
　顔なじみの店主が勧めてきたのは露出度過剰な衣装だった。
　着た姿を見たいというエロい興味が顔に出ている。
　ティオレは生地の丈夫さや縫製をしっかりチェックした後、試着に応じた。
　結局、この衣装を含め、何着かの衣装とアクセサリー類を購入。　
　鼻の下を伸ばした店主には、見物料としてしっかり代金をまけさせた。

「あとは……Barアストラルへ寄って、適当に食事でもするかな」
　ティオレは下戸だが、酒場の料理や雰囲気は大好きだ。
「いらっしゃいませ～」
　アリスは飛びながらお客さんの間をぶつからず上手くかわしつつすり抜けて、生中やおつまみを運ぶ。
「金はいくらでもあるから、じゃんじゃん料理持ってきて！　まずはドラゴンステーキと第四階層名物カニ料理」
　ティオレはとりあえずお勧めメニューを頼んだ。
「かしこまりました～♪」
　ここ最近は冒険稼業だった身なので、腹が減って仕方がない。しかも食費はたくさんある。
（少し羽目を外したっていいよな）
「ドラゴンステーキお持ちしました！」
　お酒を飲まないお客さん相手にもアリスは楽しくおしゃべりする。
「お客さん、最近何か面白い話はない？」
「そうだね……この間の仕事はけっこう面白かった。あれは……」
　お酒抜きでも、話し相手がいるほうが食は進むものだ。

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