【星幽塔】お買い物日和｜リアクション

【星幽塔】お買い物日和

☆ねこよろずから、買い物へ

「よし、品物の整理は完了」
　恵御納夏朝は、武器屋付よろず屋（コンビニ）ねこよろずで一仕事終えた。
「町中でもいろいろ騒動があったから、平穏を取り戻せて良かったな。街の様子を見に行こう」
　しみじみと八神修がつぶやく。
　夏朝は日頃大変な領主さんへのプレゼントを作る為、追加の材料探しも兼ねて修と買物に行く事になっていた。
「アニさんオトさん、お店番をお願いするね」
　ねこよろず現地店員、筋肉質な双子の猫系獣人たちには別に本名があるのだが、地球人には発音が難しい為アニさん・オトさん（オトートさん）というニックネームで呼ばれている。
「かしこまりました」
「いってらっしゃいませ」
　双子たちが頷いた。

「フランチェスカさんは陣頭指揮大変だったしな。スイーツと小物はどうかな」　
　それも心に置いて巡ろう、と思う修。
「そうだね。まずはお店でお買い物！　僕は……宝物や小物等を入れる、鍵付の小箱が欲しいな。八神くんは何を買うの？」
　夏朝が言い、二人は家具や小物等の店に入った。
「鍵箱は秘密の気配がしてロマンチックだな。俺は２階に本棚がほしいな」
「本棚……それも良いかも！」
　小箱が並んでいる一角で、２人はいろんな小箱を手に取ってみる。
「ねこよろずの２階にしまっておけば……２階に侵入された時用に、盗難対策はいるかな？」
　考える夏朝。
「盗るなら箱ごとだろうし、好みで選べば良いんじゃないかな。一緒に選ぶよ」
　修が答え。
「猫さんがデザインされてる箱はあるかな」
　探したが、残念ながら猫デザインの箱は見つからなかった。
「こっちは金属細工の箱だな。細工も細かくて、手作りの良さが、暖かさが伝わる」
　修は精緻な金属細工の逸品に特に心引かれている。
　金属製のボンボニエール（菓子器）には、葡萄の葉の１枚１枚が葉脈まで描かれていた。
（物が見た光景を感じたい）
　ふと気になって、修は【幻視の光】を使ってみた。
　星の光は修の左目にモノクルとして実体化していた。
「……猫か？」
「えっ？」
　あたりをきょろきょろする夏朝。
「黒い猫が見える……このボンボニエールが見た記憶だな」　　
「いいなあ、僕も見たかった。帰ってから試してみようかな」
　夏朝は小箱の他にも、物作りに使えそうな素材を探し購入する。
「これがいいな。配達してくれ」
　修は軽く丈夫でシンプルな本棚を見つけ、即決した。

「買い物も済んだし、行こうか、猫カフェ的なお店」
「そうだな」
　二人が次にやってきたのは、猫カフェに相当するお店だった。
「いらっしゃいませニャ」
　猫たちがてんでんバラバラにくつろいでいる中、猫獣人のウェイターが迎えてくれた。
　猫は飼われているというより、餌につられて勝手に寄りついているらしい。
「あっ、羽の生えた猫さんがいる」
　夏朝が猫に見とれる中、修はメニューをチェックしていた。
「俺は珈琲を頼む。恵御納は？」
「僕はお茶とサンドイッチを。それと、猫さん用のおやつをください」
「俺も猫おやつを」
　注文の品が揃い、修は猫おやつをヒラヒラさせてみた。
　見る間にわらわらと猫達が寄ってきて、修は慌てて珈琲を遠ざける。
　その間に、猫たちは修に足をかけて登り始めた。
「俺はキャットタワーじゃないぞ」
　ふかふかな感触に笑みを零す修だが。
「って、背中が重い……」
　恰幅のいい猫に背中に登られ、潰れそうになる修。
「猫さん達、可愛いなぁ……」
　猫におやつをあげながら、うっとりキャットタワー状態の修を眺める夏朝だった。

このページにイラストを設定する