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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
真夏の...Ahh！
「ずいぶんとボロっちいが登って大丈夫なんかよ……」
錆だらけで赤土色をしているバーを握り如月庚は見上げる。
「でも、このイリュージョンランドで風通しのいい場所といえばあそこに決まってるんです！」
と告げた屋敷野梢はすでに、『ろっこん』を発動させるべく目を閉じていた。
「ってなぁ、ずいぶんボロボロだし……崩れ落ちても知らねぇぞ」
梢はランドの象徴的アトラクション、すなわち、動かなくなって久しい観覧車に登ろうと言いだしたのだ。
もちろん安全とはいえない。だが一般人に比べれば危険性は下がるに違いない。梢には蝶に変化するということができるし、庚にも身体能力を高める『ろっこん』がある。
「私は余裕で行けますし、如月君は気合いで何とかなるでしょー？」
というのが梢の考えなのだった。
「気合いっておい……。まぁ、いざとなったらなんとかなるか」
庚も心を決めた。
「いいぜ、行ってみるべぇよ」
そうと決まれば、と、たちまち梢は『胡蝶の詩』を発動する。
彼女は風に舞う一輪の花のごとく、ひらひら楽しげに観覧車の頂上をめざすのだった。
「やるもんだ」
なら俺も、と庚は我が身に『青にして蒼穹』を宿すのだった。
握った鉄棒が、乾ききった塗装をバラバラと落とした。上腕筋がメキメキと音を立てるほど握るも、曲げたり折れたりということはない。
いささか鉄臭い。しかし手応えは十分だ。これなら登れる。
「お、ほんとに登れたんですね」
夕陽を背負うようにして梢が待っていた。
梢は手を伸ばす。庚は手を握って、頂上まで這い上がった。
てっぺんにある客車の中ではなく、その屋根に並んで腰を下ろす。
高い。本当に高い。うっかり足元を見ようものなら足がすくみそうだが、遠くを眺めれば赤く染まりゆく街が一望できた。
「少し、涼しくなったかもな」
庚は息をついた。風が心地よい。
「でしょう？」
ふふっと笑んで梢は髪をかき上げる。
「やっぱり高い場所はいいものです」
へっ、と康は歯を見せた。
「馬鹿と煙は高い所が好きっつーが……お前も大概だぜ」
そう言われて梢は、むしろ光栄だと思う。
「ほほう馬鹿と煙ですか……といっても、ここまで来たら別格じゃないですかー？ たまに、高いところに上がりたくなって上ってるんですよ」
「上がりたくなって上ってる、か……屋敷野らしい表現だな」
「でしょう？ いいんですよ。高い場所は」
客車の屋根に両手をついて、梢は脚をぶらぶらさせる。
「誰にも邪魔されない場所、聖域みたいなものですね」
そう、聖域だ。
ただ景色を楽しむにも、涼むにも、考え事をするにも、誰かのことを想うにも、ちょうどいい場所。
「……まあ、どっかの不良はたどり着けるみたいですけど」
ほう、と庚はわざと関心がないような声で返し、ややあって、
「いいのかよ？生徒会副会長様が不良とこんな所に来て」
と続けた。
平気です、とでも言うように梢は不敵に胸を張る。
「あれですよ、ばれなきゃいいんですよ。永遠の嘘は真実……なんちゃってー」
「よく言うぜまったく」
永遠だなんて。
ほんの少し前、現実を改変された体験があるだけに庚にとってその言葉は重い。
けれどすぐに現実を取り戻すことができた。だとしたら、やはり永遠なるものはあるのだろうか……。
――などと考えていても結論が出るはずもない。
「ま、さんざつるんでんだから今更か」
と締めくくると、ぱんぱんと服を払って庚は屋根の上に立った。
「そろそろ帰ぇるか、腹ぁ減った。旧市街に降りて何か食おうや」
「いいですね！」
ぴょんと弾かれたように梢も続く。
その拍子にぐらりと客車が揺れて、おっとっとと庚の肩により掛かった。
「おいおい、気をつけろよ」
「はは、すいません……。で、なにか食べるとしたら私、コロッケ食べたいです。肉屋さんのやつ！」
そうすっか、と庚は応じた。
こんなに暑い夏なのに。
熱いコロッケがほしくなるなんて、不思議だ。
――『真夏の...Ahh！』 了
錆だらけで赤土色をしているバーを握り如月庚は見上げる。
「でも、このイリュージョンランドで風通しのいい場所といえばあそこに決まってるんです！」
と告げた屋敷野梢はすでに、『ろっこん』を発動させるべく目を閉じていた。
「ってなぁ、ずいぶんボロボロだし……崩れ落ちても知らねぇぞ」
梢はランドの象徴的アトラクション、すなわち、動かなくなって久しい観覧車に登ろうと言いだしたのだ。
もちろん安全とはいえない。だが一般人に比べれば危険性は下がるに違いない。梢には蝶に変化するということができるし、庚にも身体能力を高める『ろっこん』がある。
「私は余裕で行けますし、如月君は気合いで何とかなるでしょー？」
というのが梢の考えなのだった。
「気合いっておい……。まぁ、いざとなったらなんとかなるか」
庚も心を決めた。
「いいぜ、行ってみるべぇよ」
そうと決まれば、と、たちまち梢は『胡蝶の詩』を発動する。
彼女は風に舞う一輪の花のごとく、ひらひら楽しげに観覧車の頂上をめざすのだった。
「やるもんだ」
なら俺も、と庚は我が身に『青にして蒼穹』を宿すのだった。
握った鉄棒が、乾ききった塗装をバラバラと落とした。上腕筋がメキメキと音を立てるほど握るも、曲げたり折れたりということはない。
いささか鉄臭い。しかし手応えは十分だ。これなら登れる。
「お、ほんとに登れたんですね」
夕陽を背負うようにして梢が待っていた。
梢は手を伸ばす。庚は手を握って、頂上まで這い上がった。
てっぺんにある客車の中ではなく、その屋根に並んで腰を下ろす。
高い。本当に高い。うっかり足元を見ようものなら足がすくみそうだが、遠くを眺めれば赤く染まりゆく街が一望できた。
「少し、涼しくなったかもな」
庚は息をついた。風が心地よい。
「でしょう？」
ふふっと笑んで梢は髪をかき上げる。
「やっぱり高い場所はいいものです」
へっ、と康は歯を見せた。
「馬鹿と煙は高い所が好きっつーが……お前も大概だぜ」
そう言われて梢は、むしろ光栄だと思う。
「ほほう馬鹿と煙ですか……といっても、ここまで来たら別格じゃないですかー？ たまに、高いところに上がりたくなって上ってるんですよ」
「上がりたくなって上ってる、か……屋敷野らしい表現だな」
「でしょう？ いいんですよ。高い場所は」
客車の屋根に両手をついて、梢は脚をぶらぶらさせる。
「誰にも邪魔されない場所、聖域みたいなものですね」
そう、聖域だ。
ただ景色を楽しむにも、涼むにも、考え事をするにも、誰かのことを想うにも、ちょうどいい場所。
「……まあ、どっかの不良はたどり着けるみたいですけど」
ほう、と庚はわざと関心がないような声で返し、ややあって、
「いいのかよ？生徒会副会長様が不良とこんな所に来て」
と続けた。
平気です、とでも言うように梢は不敵に胸を張る。
「あれですよ、ばれなきゃいいんですよ。永遠の嘘は真実……なんちゃってー」
「よく言うぜまったく」
永遠だなんて。
ほんの少し前、現実を改変された体験があるだけに庚にとってその言葉は重い。
けれどすぐに現実を取り戻すことができた。だとしたら、やはり永遠なるものはあるのだろうか……。
――などと考えていても結論が出るはずもない。
「ま、さんざつるんでんだから今更か」
と締めくくると、ぱんぱんと服を払って庚は屋根の上に立った。
「そろそろ帰ぇるか、腹ぁ減った。旧市街に降りて何か食おうや」
「いいですね！」
ぴょんと弾かれたように梢も続く。
その拍子にぐらりと客車が揺れて、おっとっとと庚の肩により掛かった。
「おいおい、気をつけろよ」
「はは、すいません……。で、なにか食べるとしたら私、コロッケ食べたいです。肉屋さんのやつ！」
そうすっか、と庚は応じた。
こんなに暑い夏なのに。
熱いコロッケがほしくなるなんて、不思議だ。
――『真夏の...Ahh！』 了
あとがき
担当マスター：
桂木京介
ファンレターはマスターページから！
ご参加ありがとうございました！ 桂木京介です。
2018年の夏は……暑かったですね。本当に。
私は夏好きなのですが、さすがに今年はへばりました。
夏のことを思いだしながら書いたので、本作の「暑い」描写は実体験に基づくものが多くなっています。
けれど過ぎ去ってみれば、やはり懐かしくなるのが夏。
このシナリオも、皆さんにとってそんな思い出になってもらいたいな、などとおこがましくも思っております。
桂木京介でした。
2018年の夏は……暑かったですね。本当に。
私は夏好きなのですが、さすがに今年はへばりました。
夏のことを思いだしながら書いたので、本作の「暑い」描写は実体験に基づくものが多くなっています。
けれど過ぎ去ってみれば、やはり懐かしくなるのが夏。
このシナリオも、皆さんにとってそんな思い出になってもらいたいな、などとおこがましくも思っております。
桂木京介でした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年10月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年10月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年10月30日 11時00分
