逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　椎井莉鳥は横向きに倒れていた。軽い呻き声が口から漏れて目を覚ます。
「ここは……」
　呟くと瞬きをした。手を動かそうとして、不審な目を自身に向ける。両腕は胴体と一緒にロープで縛られていた。
　――この痛みで思い出したわ。私は学校帰りに襲われて、ここに連れ込まれたようね。
　片方の肘は曲げることができる。冷たいコンクリートを押すようにして上体を起こした。状況を知る為に周囲に目を向けた。
　――見た事のある人物がいるわ。被害者の人数は多い。移動に時間が掛かるだろうから、今はまだ、島の中と思ってもいいわね。
　目は黒いスーツの面々に向かう。ほとんどが男で中に女が混ざっていた。
　――男は武道の心得があるようね。スーツを着ていても体付きでわかるわ。女の数は少ない上に小柄な者が多い。強力な武器を持っていそうね。
　女の黒服が莉鳥に目を留めた。
「気になるようね」
「何のことかしら」
　莉鳥は素で返した。女は目をぎらつかせて口だけで笑った。
「あんた達の行く末に決まってるでしょ。かわいいモルモットちゃん」
「それにしても」
　相手の言葉を無視して莉鳥は頻りに顔を動かす。
「着ているスーツは悪くないのに、アジトは見窄らしいわね」
「そんなわけないでしょ。あんた、バカなの？」
　女は懐に手を入れた。近くにいた者が腕を掴んで止めた。
「わかったわよ」
　不貞腐れたように言うと莉鳥に背を向けた。
　――アジトでないのなら、ここは寝子島ね。ろっこんでロープは切れるけど、実行に移すには早いわ。皆の足並みが揃うのを待った方がいいわね。
　無表情で結論付けた。

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