【海開き】賑やかな夏のはじまり｜リアクション

【海開き】賑やかな夏のはじまり

　黒いフォーマルスーツに身を包んだアケーチ・タッマーキが海岸沿いの道をゆく。前髪に隠れていない紫色の左目は海へと流れた。
「朝陽が丸く削られて輝いています。あの滑らかなフォルムで思い出すのは！」
　自らの臀部を両手で鷲掴みにした。指が食い込み、ああ、と甘い声を漏らす。
「なんと愛おしいプリ尻なのでしょう！　適度な力加減が甘美な刺激を与えて、ああ、自我が飛びそうになります、ふふふ！」
　自らの臀部と戯れながら内股で歩く。恍惚とした表情で口を開き、赤い舌を覗かせた。別の生き物のように口内を弄る。
　小刻みな息遣いでよろよろと進み、忽然と我に返った。寝子ヶ浜海岸に多くの建物を見つけた。人の出入りが激しい。大きなイベントを思わせた。
「あれらは海の家なのでしょうか。楽しそうな雰囲気がビンビンと伝わってきます、ふふ！」
　アケーチは軽く仰け反った。胸ではなく、素早く股間を押さえる。
　堪能すると斜面を滑るように下りていく。横一線に並ぶ建物を視野に入れた。
「大きな海の家ですね」
　アケーチは指示を出していたチーフらしい人物に声を掛けた。
「こちらの海の家は大人の男性を表現しているのでしょうか」
「オーナーの希望で執事として客を迎えるから、そうかもしれないが……君、悪くないね。一緒に働いてみないか？」
　熱い視線がアケーチに注がれる。
「この私が下僕、いえ、執事ですか！　喜んでお引き受け致します！」
「ありがとう、助かるよ。服装は自由だ。執事らしい対応で頼む」
「では、海の家にちなんだ格好で！」
　アケーチは瞬時に脱いだ。黒のビキニパンツとなった。ほんのりと頬を染めてチーフに流し目を送る。