【海開き】賑やかな夏のはじまり｜リアクション

【海開き】賑やかな夏のはじまり

　朝陽が寝子ヶ浜海岸を白く照らす。開店準備に追われる店主達の姿が多く見られた。
　八神修は少し離れた砂浜で黙々とデッキチェアを並べていた。強い日差しを考慮して個々にパラソルを立てる。
　素肌に直接、白いパーカーを羽織っていた。緑のバミューダパンツにサンダルを履いていた。暑いところの労働には向いている。
「まだ早朝なのに」
　修は空を見上げた。額の汗を拭って一息入れる。そこに髭面の男性から声を掛けられた。
「冷えたジュースはいるか？」
「遠慮なく、いただきます」

　修は笑って飲み物を受け取った。男性は腕を組み、感心した様子で成果を目にした。
「無料の休憩所か。良い提案をしたものだ。客も大喜びするだろう」
「そうだと良いのですが」
「屋台の方も任せていいのか？」
「もちろんです。銘柄当てクイズだけですと、収益の確保が難しいと思います。酒の肴を提供する屋台をセットで行えば相乗効果が見込めます。実際、やってみないとわからないですが」
　少し照れたように笑う修の肩を男性は軽く叩いた。
「俺は成功すると思っている。じゃあ、またな」
　男性は白い歯を見せて笑うと足早に戻っていった。
「俺も頑張らないと」
　修は静かに決意を口にした。

このページにイラストを設定する