ねこじま麺紀行・すすきの｜リアクション

ねこじま麺紀行・すすきの

【９】

　長かった蕎麦屋『すすきの』の１日もそろそろ終わり。
　暖簾を下げて、いそいそとお店の片付けにかかる。
　最後の出前から戻った庚はバンダナとエプロンをカバンに押し込み、帰り支度を始めている。
「お疲れさんっと……じゃあ、俺ぁこれで……」
「待ってください、らぎらぎ君ー。賄いのお蕎麦がありますよー」
「晩飯？　あー……賄い……」
「もう作っちまったからなぁ。こいつも片付けてもらわないと困るぞ？」
　はははと笑う店主に、ばつが悪そうに庚は頭をかいた。
「んじゃあ、今日も馳走んなります」
　それから、店の適当なテーブルに３人分の蕎麦を運ぶ。
「うーん、働いたあとの一杯は美味しいですね。しみわたりますー」
「なんか、おっさんみたいだな……」
「はて、そんなにおじさんになってました？」
「ああ、大分な」
「おいおい、若いうちは若さを満喫しといたほうがいいぞ？」
「むぅ、おじいちゃんまでー」
　くすくすと笑う３人。
　とはいえ、働いたあとの一杯は美味しい。五月の言うこともわからんでもないな、と庚は思う。
（しかし毎度、家族の団欒を邪魔しちまっていいもんかと思うんだがな……）
「？　らぎらぎ君どうかしました？」
「なんだ、その蕎麦だけじゃ足りなかったか？」
　怪訝な顔を浮かべるふたりに頭を振る。
「ああ、いやなんでもないっす。腹減ってたんで、美味いなと思って」
「はは、そうか。うちの自慢の蕎麦だ。味わって食ってくれ」
　ここにいると思うことはいろいろあるが、ひとまず……。
　この人たちが嬉しそうなら、まあいいか、と庚は思うことにした。
「今日も一日お疲れ様、そしてご馳走様でした」

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あとがき

担当マスター：梅村象山
ファンレターはマスターページから！

マスターの梅村です。
シナリオにご参加いただいた皆様、ありがとうございました！

ラーメンに続き、今回は蕎麦のお話にしてみましたー。
そしてまた蕎麦のお話をかいていると蕎麦が食べたくなる現象に襲われました。。
蕎麦、いいですよね……。食べるならやはりざるで……。
天ぷらもあればなおよし。できればめちゃ大きいエビ天で……。
と食欲と戦いながら書いたお話でしたが、お楽しみいただけたでしょうか？

それでは、また別のシナリオでお会いできればうれしいです。
梅村でした。

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