【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房｜リアクション

【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房

　――第十二階層
　　　Mission：紅蓮唐辛子を収穫せよ！！

　今日も第十二階層のマグマは元気よく赤々と燃えていた。額に浮かんだ汗をぬぐいながらその光景を見渡すリリエル・エーテライトは魔水の力を使って水を出し、ごくりと音を立てて飲んだ。
「ふぅ、さすがに暑いですねぇ」
「俺には雪原である第十一階層の方が辛いがな……。だが、火竜であるオレ様なら、マグマで火傷すらしねぇ。ここは任せな」
　赤い鱗が光る竜人の男性、シグマ・F・FGが実に頼もしい笑顔で言う。だがリリエルはぐっ、と手を握りしめて、
「私もがんばりますっ！　カレーの為です、暑さに負けません！」
　とやる気を見せる。そんな彼女をほほえましく思う一方で無茶しないで欲しいとも思うシグマ。
「しっかし、これは、探すほうが手間かかるな、コレ。唐辛子、意外と見つかりにくいだろ！」
「ここは飛んで探した方がいいかもしれませんね」
　彼の言葉にうなずきながらリリエルが翼を広げる。シグマも同じように背中の翼を広げ、２人は唐辛子を求めて飛び立った。

（ふー、暑いです……）
　最初は魔水の力で水分補給をしていたリリエルだったが、奥へ行くほどそれでは間に合わなくなった。今では魔水の力で呼び出した水を頭からかぶっている。
「それにしても、唐辛子はどこでしょう？」
　あちこち覗いてはいるが唐辛子どころか植物がまず見当たらない。本当にここにあるのだろうか？
　ふりかえると、シグマも別の方向から探っているようだ。彼は暑さに強い体質らしく汗１つかかずに捜索している。
「ううん、弱気じゃいけません！　がんばリリエルですっ！」
　水を頭からかぶり、翼を広げるリリエル。気合を入れて飛んでいると……、彼女は思わず悲鳴を上げた。

　少し時間を巻き戻して……。
　シグマは植物っぽいものを見つけてはチェックするが、唐辛子っぽいものは見つからない。
（しっかし……）
　相変わらず熱くてマグマが燃え盛る十二階層の光景を見、彼はため息を吐いた。視線の先ではリリエルが水を頭からかぶりながら唐辛子を探している。
（危険地帯にヤワな人間や獣人を行かせるわけには行かないんだがな……。リリエル、大丈夫か？）
　少しふらふらしながら飛ぶリリエルを心配するシグマは、地響きに気付き壁から離れる。と、そこの岩を破りマグマが飛んできた。これぐらい平気な彼は「なんだマグマか」と呟いて捜索再開。そこで見つけたのがマグマに照らされた、ぼんやりと光る唐辛子っぽいものだった。
「これか？　ったく、案外面倒だな」
　そういいながらも次の唐辛子を探すべく飛ぶシグマ。その先にいくつもの唐辛子が生っている場所を見つけるのだが……悲鳴を聞いてしまった。
（この声はリリエル？！　まさか……！）
　嫌な予感がし、勢いよく飛んでいくシグマ。すると、その視線の先には……。
「わわわっ！　すっごくきれいです！！　これが紅蓮唐辛子ですかぁ？」
　岩場一面に生える唐辛子と、そのぼんやり発光する様子に目を輝かせるリリエルの姿だった。安堵からかおもわずずっこけるシグマ。
「っと、こんなにたくさんあったのか！」
「はいっ！　これならカレー作りもばっちりですよね？」
「おつりがくらぁ！」
　リリエルとシグマはハイタッチすると、いくつかの唐辛子を採取。そして、速やかにその場を後にした。というのも、リリエルの顔色が少々悪い気がしたからだ。
「もうちょっとお前にとってマシな温度の場所にいこう。星の力を使いすぎただろう？　ゆっくり休め」
「はいぃ……」
　シグマに肩をかりつつリリエルは頷く。こうして２人は紅蓮に光る唐辛子をゲットしたのだった。