【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房｜リアクション

【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房

起：いざ、カレー！！

　第九階層に店を構える夫婦の依頼で、冒険者たちは食材を求めいろんな階層に散らばった。果たして、依頼されたものは無事にゲットできるのだろうか？！

　――第三階層
　　　Mission：野菜を収穫せよ！！

　カレーの具を求め、第三階層へやってきたのはふわふわとしたウサギのような少年、クポラッチョ・ププルとクールな乙女、旅鴉月詠、元気いっぱいなカエルっぽい女の子、見帰り沼のコトコの３人である。
「おやさいさんをいーっぱいしゅうかくするんだよ！」
　とやる気十分なクポラッチョにコトコもまた「うー！」と両手を上げて元気いっぱいに同意する。
　月詠が第三階層で暮らすみずがめ座のアステリズム、リア・トトに事情を説明すると彼は快く許可をくれた。
「どこの野菜も元気に育っているよ。どれでも、すきなだけ持っていきなさい」
「ありがとう。これで美味しいカレーが作れそうだ」
　笑顔のリアに、月詠は帽子を脱いで頭を下げる。それにならいクポラッチョも帽子を脱いだ。コトコは彼にならんでぺこり、と頭を下げる。
「しかし、素材にこだわるのはいい事だね。偶には贅沢をしないと……」
　と、月詠は青々と茂る野菜を見つめ感嘆の息をつく。既にコトコはリアから籠をかり、さっそく収穫を始めるようだ。
「おやしゃいしゃんとるれす！　とーも、おてつらい、れきうんれすお！」
　コトコは見つけたニンジンの葉に笑みをこぼし、さっそく収穫を始める。にじー、にじー、と言いながら周りの土を払うコトコにクポラッチョも「おてつだいいっぱいがんばるんだよ！」と並んでニンジンを掘り出す。
「野菜の収穫での注意点は、あまり傷をつけないよう丁寧に扱うことだな。傷がつくことで成分が漏れ出すものもあるのでね」
　と、月詠がコトコとクポラッチョの目を見てしっかりという。安全第一で収穫を終えたいのが本音だからだ。
「特に炸裂イモを強く刺激しないこと。畑で連鎖爆発するぞ」
「ばくはちゅしゅるでしゅ？」
　月詠の言葉に、コトコが目を丸くする。月詠が頷くとリアが「そうだなぁ」と頷きながら畑を見渡した。
「カレーに必要な野菜がそろう畑の近くに炸裂イモの畑はないよ。安心して収穫しておいで」
　リアの言葉に、月詠は安堵する。担当者の中で一番の年長者は彼女である。クポラッチョとコトコが安心して作業できるなら何よりだ。
「とー、おやしゃいしゅうかきゅ、ぎゃんばりゅ！」
「ボクもだよぉ～」
　コトコとクポラッチョが元気な声を上げて歩いていく。月詠はそんな２人を温かいまなざしで見守りつつ後ろを行くのだった。
　その途中でトマト畑を通る。その丸々と太って赤々と輝くトマトにコトコは目を奪われる。
「とまと！　とまとって、きれーれすねー」
「よかったら食べてみるかい？」
リアの言葉に「たびてもいーんれすか？」と小首をかしげるコトコ。リアが笑顔で頷けば、コトコは大喜びでかじりつく。酸味の奥に甘みがあり、とっても美味しいトマトだった。コトコは目をまんまるにし、口を尖らせおたまじゃくしの尻尾で地面をビタンビタンと叩いている。コトコにはまだすっぱかったらしい。
「どれ……。うん、なかなか美味しいね」
　月詠はその味には納得らしく、美味しそうにほおばっている。コトコはふと、傍らのクポラッチョを見上げる。
「んー？」
「……あうー、くぽたん、こえたびてみてくらしゃい！」
と差し出したのは食べ掛けトマト。それを押し付けるつもりか！　だがクポラッチョは既に別のをもらっていた！
「ごめんねぇ。もう持ってるんだ」
「あう、こえ、しゅっぱかったれす……」
　コトコがどうしようか悩んでいると、リアが「はい、どうぞ」とお砂糖をかけてくれた。こうするとすっぱさも和らぎ、コトコもどうにか食べることが出来たようだった。

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