【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房｜リアクション

【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房

　そんなことがありつつも目的の畑に到着する。
「「お～～！！」」
　コトコとクポラッチョの歓声が響き渡る。目の前には青々とした野菜畑が広がっており、どれもほどよく育っていた。
リアは近くで作業するから何かあったら遠慮なく言ってほしい、と３人に言ってから別の畑へと移動する。
「それでは、さっそくはじめようか」
　月詠に促され、コトコとクポラッチョも収穫を開始。カレーに必要な野菜を少しずつ籠に入れていく。
「とー、かぼちゃとじゃがいも、がんばうれすお！」
　とがっしょがっしょと土を掘るコトコ。まずはジャガイモから収穫するらしい。月詠はオーバーオールに軍手、長靴と汚れてもよい恰好をしている。彼女はタマネギをある程度確保すると、クポラッチョと共にニンジンを収穫していた。
「けっこう取れたねぇ。……んん、こばらがすいたんだよ」
　お腹を押さえてため息を吐くクポラッチョ。少年のお腹からは愛らしい腹の虫の声がする。クポラッチョは「どうしようかなぁ」と考えて辺りを見渡し、一本のニンジンに目を付けた。
（おいしそう～♪）
　さっそく１本土を払ってかぷり、とかじる。しっかりとした甘さが舌に広がり、クポラッチョはほっこりとした顔になる。
　もう１本、もう１本、と食べていくうちに触れた誰かの手。見上げれば月詠が苦笑していた。
「んん？　だいぶへっちゃった？」
「籠のニンジン、全部食べているよ。そんなに美味しかったのかい？」
　月詠が問えば、クポラッチョはへにゃっ、と笑って大きく頷く。月詠はしかたないな、と呟くと軍手を外しクポラッチョの頭をなでた。
「食べた分、収穫したまえ。今日はみんなでカレーを食べるのだから」
「はーい」
　クポラッチョはよい子のお返事をすると、うんしょ、うんしょ、とニンジンを収穫するのであった。
　コトコは小さな体で一生懸命ジャガイモを掘り出していた。月詠にも手伝ってもらったが、その量はけっこう多い。その後、リアに手伝ってもらいカボチャも収穫。
「いっぴゃいおやしゃい、とりぇましたぁ」
　大きなカボチャを抱えたまま、眠ってしまったのはご愛敬、という所だろうか。リアはコトコをだっこすると月詠とクポラッチョに言った。
「妖精さんたちがあとはいろいろ手伝ってくれるそうだよ。少し休んでから第九階層に戻ったらどうかな？」
「そうだねぇ。お腹がまたへっちゃったぁ」
　クポラッチョがお腹を押さえて座り、コトコとクポラッチョの様子を見た月詠は小さく笑った。
「そうだね。少しお邪魔しようかな……」

　３人はリアの家でシャワーを借りた後、軽食を頂いた後に第九階層へ戻った。収穫した野菜がカレーにどんな色どりを見せるのか。実に楽しみである。

ちなみに、月詠はこの時自分の畑からとある物も収穫していた。
「ふむ、悪くない。食後に淹れよう。喜んでもらえたら御の字だ」
　それだけ言うと月詠は僅かに口元を綻ばせながらみんなの元に戻る。コトコは月詠が豆みたいなものを持っていることに気付き、不思議そうに首を傾げた。
「こえはなんれすか？」
「これかい？　ふふ、君たちにはまだ早い大人の味だよ」
　月詠の言葉にコトコだけでなくクポラッチョもまた首をかしげる。だが、月詠は優しく微笑むだけである。
「んー、お姉さんがなにかたくらんでるねぇ？」
「とー、きになる、れす」
　２人の眼差しに苦笑しつつも、月詠は後で作業しよう、と思うのだった。

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