【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房｜リアクション

【星幽塔】第九階層　海原の咖喱工房

　――第四階層
　　　Mission：蟹を確保せよ！！

「ふぅん、どれも丸々太っているようね」
「それにしても、ここは、蟹が多いな。ところでだ、大きさは関係ないよな？」
　そんな会話をしつつ湖のほとりで蟹をみているのはティオレ・ユリウェイスと李飛龍の二人。ティオレは水中で動きやすいよう、ハイレグワンピースを纏っている。一方の飛龍はダイバースーツっぽい物だ。
「通常サイズの物は罠を使うつもりよ。万が一大物に遭ったらダガーと星の力を使う」
　今回、彼女が宿した星の力は『剣士の光』である。それを込めたダガーの一撃はきっと協力だろう。
「俺は身体能力を上げてから挑もう」
　飛龍のろっこん『ドラゴニックパワー』の効果は『精神集中する事で身体能力を上げる（集中した分力を貯める）』事である。彼はそういうと、湖の畔で瞳を閉ざし精神集中を行う。
「お互い、大物には気を付けよう」
　ティオレは飛龍へ一言言うと、さっそく罠を仕掛けるべく船に乗った。

　ほどよい風に揺られつつ、わなを仕掛けるのにいい場所を探すティオレ。彼女はいい岩場を見つけると、そこに罠の籠を仕掛けた。
（これで捕まえられたらいいが）
　目印用のブイを浮かべ、ティオレは一旦岸に戻ろうとした。……が、その時、迫るものがいた。……全長３ｍはあるだろう蟹だった。
「でかいっ！」
　ティオレはどこからともなくダガーを取り出して身構える。青い星の力が宿ったダガーが、水面の影に彩られる。
（行くわよっ）
　音を立てて潜れば、ほどよい心地よさが肌をなでる。それでも目的は蟹。早く捕まえてしまいたいところである。
（美味しく頂かれて頂戴ね？）
　ティオレは気合を入れると３ｍの蟹と向かい合った。狙うはただ１つ。星の力をつかったワンショットキルである。彼女はダガーを構え……人魚のように蟹へと泳いでいった。

　ティオレが戦っている頃。十分に集中した飛龍はすっ、と立ち上がる。
「さて……狩りの時間だ」
　準備体操しつつろっこん『ドラゴニックパワー』を発動すると水の中に潜る。すぐに２ｍぐらいの蟹と遭遇。速攻接近すると周りを泳いで挑発する。そうしてどうにかこうにか陸まで上げると、接近して２本の足を無理やり引き千切った。
　鋏を振り、怒る蟹。まぁ、当然である。飛龍は冷静にどこからともなくヌンチャクを取り出して振り回す。あとは、見事なヌンチャクさばきで蟹を攻撃していく。
（ビームを打たれる前に、仕留める！）
　華麗な攻撃がきまり、蟹は鈍い音を立てて倒れる。飛龍は一礼すると蟹を抱えた。
「もうすこし狩るべきか？」
　首をかしげていると……水柱が上がった。その正体は、３ｍの蟹。どうやら、ティオレはワンショットキルに成功したらしい。暫くして、蟹が入った籠を持ったティオレが少々困った顔をして飛龍の元へやってきた。
「悪いけど、手伝ってほしいの。大きくて運べなくて……」
「勿論」
　飛龍は素直に、ティオレがすごいな、と思いながら頷いた。

　――そしてこの日。
　　　第四階層の蟹たちは、『ティオレは怖い』という事を遺伝子レベルで記憶した。

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