チャ・レ・ン・ジ、しましょ♪｜リアクション

チャ・レ・ン・ジ、しましょ♪

　――家で作るパフェ、というのが食べてみたい。
　以前、家族に言われたことを、茹だるような暑さの中で鴻上彰尋は思い出していた。
（あんまり乗り気じゃなかったんだけど、こう……暑いと）
　額の汗を、ぐいと拭う。
　登校途中に偶然出会って道行きを共にしている七夜あおいが、
「彰尋くん？　どうかした？」
　と、彰尋がどこかへ心を飛ばしているのに気付いて、ことりと首を傾けた。
「ああ、いや……パフェを、作ってみようかと思って。おうちパフェ」
「おうちパフェ！？　すごいね！」
　あおいの瞳が、きらっと光る。その様子に少し笑って、
「家族にせがまれたことがあって、いつかは作ってみようって思っていたんだ」
　それで、気分が乗ったから、との彰尋の言葉に、「いいなぁ」とあおいが頬を押さえる。
「おうちパフェなら、何でも、好きなものを乗せられるんだもんね。それも、幾らでも！」
「……興味があるなら、一緒に作ってみる？」
　問えば、「いいの！？」と、あおいはぐいっと身を乗り出した。
「作るとしたら俺の自宅になっちゃうけど、大丈夫？」
「うん、彰尋くんが迷惑じゃないなら。あ、そうだ。私、何を持って行けばいいかな？」
「じゃあ……シリアルとかクッキー、アイス辺りで、好みのものがあったら持ってきて貰える？」
　俺の方でも色々用意しておいてみるから、と、笑顔で伝える。
　あおいの方も満面の笑みで、「うん、わかった！」と大きく頷いた。

　そして放課後、彰尋の家のキッチンにて。
「わああ、すごい！！」
　大きなグラスととりどりの材料を前に、あおいは、声に眩い光を帯びさせた。
　テーブルに並ぶのは、バニラアイス、２種のクッキー、ヨーグルトに生クリーム。
　バナナやキウイなどの果物もあるし、パフェにつきもののシリアルだってある。
「パッキーやウエハースまである！　それに、こっちは……」
「うん、冷凍した桃缶の桃と、桃缶のシロップで作ったゼリー」
「っ、流石……彰尋くん……！」
　震撼のあおい。
　一通りはしゃいだところで、さあ、早速パフェ作りの始まりだ。
「彰尋くんは、どんなパフェを作るの？」
「俺は……シンプルなのがいいかな。こうやって、シリアルとヨーグルトを重ねて……」
　その上に飾るのは、冷凍桃と、バニラアイス、それから生クリーム。
「わあ、夏らしいね。美味しそう……！」
「あおいさんはどうするの？　何か、持ってきた？」
「うん！　チョコアイスと、ちょっと奮発して、ほら、生チョコ！」
　大きめに砕いたココアクッキーとチョコアイスを重ねて重ねて。
　その上に、更にチョコアイスがどーん！　の、バナナやパッキー、生クリームも欠かせない！
「最後に、とっておきの生チョコを乗せて……はい、完成！」
　えっへん！　と、嬉しげに胸を張るあおい。
　２つのオリジナルパフェを前に、彰尋は小さく笑みを零した。
（こういうのもたまにはいいかも、なんて）
　パフェ用に具合が良さそうなスプーンを装備して、いざ、実食タイム。
「ん～、美味しい～！」
「うん、美味いね。あおいさんのも美味しそうだ」
「えへへ、ありがとう。そうだ、生チョコまだ余ってるから、彰尋くんもどうぞ」
　桃のパフェには合わないかなぁ？　とは言いながらも差し出されたそれを、彰尋は、
「ありがとう、あおいさん」
　と受け取って、口に運んだ。芳醇な甘さが、口の中でふわりと溶ける。
「……ところで、彰尋くん」
　生チョコを味わっている彰尋へと、あおいが、そわそわとした声を投げた。
「桃缶シロップのゼリー、味見したら駄目、かな……？」
　食いしん坊全開なお願いに、彰尋が堪え切れずに、ふは、と笑った、その時。
「わー！　パフェだー！」
　キッチンに、弟と妹がとび込んできた。
　２人とも、既におうちパフェに興味津々だ。
「はいはい。材料はちゃんとあるから、自分で作ろうな」
　お兄ちゃんらしい彰尋の姿に、今度はあおいが、微笑ましげにくすと笑んだ。

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