和菓子屋「萩屋」の夏｜リアクション

和菓子屋「萩屋」の夏

●和菓子屋「萩屋」、開店

「さぁて、今日もいい和菓子日和さね。元気に働いて、いい汗流そうじゃないか！」
　和菓子屋「萩屋」の店主で凜とした姉御肌の女性、矢萩秋の朝は早い。
　朝番の日は午前４時起床、遅番の日は６時起床。
　店の予定の合間に妹達のために朝食を作ったり、送り出したりと妹思いのお姉さんの顔になることも。
「今日も頑張って行っておいで！」
　見送りをする時は妹二ウム（妹が発する素敵成分）は蜜の味♪　と言うほど、妹達を大切にしている。

　今日は遅番なので、６時に起床。
　起きると素早く萩柄の刺繍が入った和風の「萩屋」の制服に着替え、店の調理場へ。
「店主、おはようございます！」
　コワモテナイスガイ、２６歳独身副店長の田中さんが威勢良く挨拶する。
　彼以外にも、昔は少々ヤンチャをしていたということがある一見コワモテでおっかない従業員が何人か。
「今日の予定だけど……」
　田中さんや職人達と、今日の予定を確認する時の秋は「萩屋」を支える店主の表情に。

　午前８時。和菓子屋「萩屋」店内。
　接客が主な仕事の従業員達と一緒に、秋は店内と陳列棚を綺麗にし、和菓子や洋菓子を並べる準備を。
　それらが終わると、職人や従業員、朝番アルバイトを整列させ、秋の朝礼が始まる。
「皆、おはよう。最近、暑くなってきたからってたるんでるんじゃないよ！　お客様に美味しい甘味を提供するのがうちらの仕事さね！」
　バテないよう気をつけて接客するんだよ！　と皆に檄を飛ばしシャキっとさせる。
　秋も昔は剣道の腕で族を潰したり、自警団を立ち上げたりとかなりヤンチャしていたことが。
　従業員や職人のほとんどがヤンチャしていたので、店主の秋とは気が合うようだ。
「あと、今日は臨時バイトが入ったから優しく、丁寧に指導してやんな！」
　それにしても遅いね……と、臨時バイトの様子を見に店の控室へ。

（一目惚れした憧れの制服で念願のアルバイト……精一杯、務めさせて頂きます……！）
　萩屋の制服姿が、背の高い店主にぴったり似合っている。
　その様子に一目惚れしたので、自分も是非、着てみたくなった。
　長身でも似合う制服となると、どうしても格好良いものばかり。なので、可愛い衣装は貴重なもの。
　１７７センチの長身少女、吉住志桜里がアルバイトを申し出たのは「萩屋」制服姿が背の高い秋に似合っている様子に一目惚れしたのが動機だ。
「吉住さん、早くおいで！　皆、待ってるよ！」
「は、はいっ！」
　手にしている「萩屋」の制服は、和服にエプロンといった大正時代の甘味処のウェイトレスっぽい。
　大正浪漫溢れる憧れの制服に大急ぎで着替えると、朝礼の場へ走って向かう。
「お待たせしてすみません！　吉住志桜里です。繊細なものから力仕事まで、何でもお任せくださいませ！」
　武人の端くれですので、体力は殿方に劣りません、とやる気をアピール。
（皆さん、なかなか凛々しい出で立ちで……）
　わざと縦へ大きめに開いた眼を素に戻し、緩めた頬を直せば凛々しい顔の店員の仲間入り。
「良い顔だ。慣れないこともあるだろうけど頑張ってね。皆、彼女にちゃんと仕事を教えてあげるんだよ！」
　全力で「萩屋」を満喫します、と意気込みを見せる志桜里は、何があっても頑張ろうと決意した。
「それじゃ、行くよ野郎共！　開店だ！　今日は日曜だから特に忙しくなるよ！」
　おおーっ！　と、やる気が溢れる大声が店内に響く。
　純和風で雅やかな店舗の和菓子屋「萩屋」の１日は、こうして始まった。

このページにイラストを設定する