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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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just another day
腕組みしてしまう。
キャスターつきの椅子をしゃーっと走らせて、壁の本棚にこちんとぶつかって、それで座ったまま、腕組みしたまま、うなる。
「ううーむ、参ったなぁ……」
声に出したところで解決するものでもないだろう。だからといって、沈思黙考を守れば突破できるというものでもないのだが。
南戸河 蔵人はまたひとつ、深くため息をついてうなるのだった。
「悪役がいまいちいい感じにならない……」
このとき彼はすべての創造職の苦悩、産みの苦しみにおちいっているのであった。
試しに書きかけたものを読み返してみる。
「そう……私が悪の科学者にして首領だ！」
顎に手をあてる決めポーズに決め顔、インク壺に落ちたてるてる坊主みたいに、どす黒いマントをひるがえす。
なんだこりゃあの極みである。
ギャグっぽい、というよりギャグそのものではないか。
これを悪役というのは無理がありすぎる。コントじゃないんだから。だいたい、コントにしたって文章がひどい。今どき中学生でも、もっとまともな描写をするだろう。なんなんだこの『インク壺に落ちたてるてる坊主みたいに』って！
パソコンのDELETEキーを、たーっと押して全部消す。
まあこういう文章が許される場面もあるかもしれない。
でも、今回ほしいやつとは全然違うのである。
もっとこう――。
蔵人は、自分が理想とする悪役を考えてみる。小説、漫画、映画にゲーム、色々なジャンルにおける魅力的な悪を。
魅力的な悪、それは背景を持った悪だ。
いきなり出てきて「ジャーン！ 我は公王なり！」ではいかんのである。「マジックアイテムで世界改変しちゃうぞお」とか。
うー、とうなりながらまたキャスター椅子を転がす。
「悪をなすにも事情があって、読者も同情できてて……でもやっぱり悪だから、その行いを認めるわけにはいかなくて」
パソコンの前にたどりついたから、今度は本棚に向かって転がす。
「正義も後味のいいことばっかりじゃないぞっていう、そういうことを表現できる悪役じゃないとなあ……」
どうにも行き詰まった。
「あー、ダメだ」
いくら考えてもバカな展開しか思いつかない。あるいは、誰も共感できないほど陰気なのとか。両極端だ。
天気が雨なせいだろうか
こういうときは気分転換が必要だ、と蔵人は考えた。
外出しよう。ちょうど昼時だし。
うん、そうしよう！
土砂降りではないものの、傘なしではちょっと厳しいくらいの天気だった。
雨の中で傘を差さずに踊る人がいてもいい、なんて言葉があったっけ。
言ったのはヨハン・ゲーテだったか、それともネゴシエーター・スミスだったか。蔵人はそんなことを考えた。
「まあ、私は風邪引きたくないから傘さすけれど」
それもまた自由だろう？ と蔵人は問いかけるようにつぶやく。もちろん独りだから、誰も答えてはくれないのだけど。
自由、というのは創作活動におけるキーワードだと彼は思う。
どんな登場人物を作るも自由ならば、表現したいものに合わせた縛りのある創作も自由というものだ。
なんだか気持ちが楽になってきた。自由は不自由の際に生ずというも可なり、という言葉もあるではないか。これは即答できる、福沢諭吉の弁だ。
さて。
ランチタイムの飲食店街を眺め、傘持たぬ手を蔵人は腰にあてる。
しかし今日のお昼を、高級レストランのフルコースにするわけにはいかない。……そこは不自由だな。
かといって、何でもかんでも思い通りになれば自由なのか！？
それはそれで思い通りになることに縛られてしまうのではないか。
「お？」
もしかして僕、いまひとつの真理にたどり着いたのでは？
そんな風に思った。
自分を誉めてやりたい。
自由とは何をしてもいいけれど、同時に責任も負わねばならない！
我ながら良いこと思いついたじゃないか。
しかし、とも蔵人は思うのである。
責任をともなう自由に身を置いているとき、その心は自由なのか――？
やはり自由というやつは難しい。
「なんか哲学的になってきたな……」
と独りごちたとき、
じゅぅー。
そんな音が蔵人の耳をとらえた。
自由にあらず、『じゅぅー』とはこれいかに。
これは……焼肉を焼く音じゃないか！
かくしてこのとき、蔵人は豁然と悟りを得たのである。
そうだ！ 昼から焼肉だ！ 一人焼肉というやつは自由だ！
そうと決まれば話は早い。
お昼のサービスランチ絶賛実施中の焼き肉店に、えいやと蔵人は飛び込んだのである。
創作活動は無闇にエネルギーが必要だ。
ゆえに腹がくちくなれば、なんだかアイデアも浮かんでくるものである。
タンミノロースにカルビ、カルビ、カルビ！
タレは三種類、ご飯大盛りでたっぷり味わって、蔵人は自分の腹部をさする。
ふう、ちょっと浮かんできたぞ。
ご機嫌な調子で蔵人は箸を置き、スマホのメモ帳を開いてアイデアを書き留める。
無闇に難しく書く必要はないが、ギャグ過ぎてもいけない。だから今回は、
――その行いで幸せになった人もいるけど……不幸になった人もいて、と。
こんなテーマはどうだろう？
キャスターつきの椅子をしゃーっと走らせて、壁の本棚にこちんとぶつかって、それで座ったまま、腕組みしたまま、うなる。
「ううーむ、参ったなぁ……」
声に出したところで解決するものでもないだろう。だからといって、沈思黙考を守れば突破できるというものでもないのだが。
南戸河 蔵人はまたひとつ、深くため息をついてうなるのだった。
「悪役がいまいちいい感じにならない……」
このとき彼はすべての創造職の苦悩、産みの苦しみにおちいっているのであった。
試しに書きかけたものを読み返してみる。
「そう……私が悪の科学者にして首領だ！」
顎に手をあてる決めポーズに決め顔、インク壺に落ちたてるてる坊主みたいに、どす黒いマントをひるがえす。
なんだこりゃあの極みである。
ギャグっぽい、というよりギャグそのものではないか。
これを悪役というのは無理がありすぎる。コントじゃないんだから。だいたい、コントにしたって文章がひどい。今どき中学生でも、もっとまともな描写をするだろう。なんなんだこの『インク壺に落ちたてるてる坊主みたいに』って！
パソコンのDELETEキーを、たーっと押して全部消す。
まあこういう文章が許される場面もあるかもしれない。
でも、今回ほしいやつとは全然違うのである。
もっとこう――。
蔵人は、自分が理想とする悪役を考えてみる。小説、漫画、映画にゲーム、色々なジャンルにおける魅力的な悪を。
魅力的な悪、それは背景を持った悪だ。
いきなり出てきて「ジャーン！ 我は公王なり！」ではいかんのである。「マジックアイテムで世界改変しちゃうぞお」とか。
うー、とうなりながらまたキャスター椅子を転がす。
「悪をなすにも事情があって、読者も同情できてて……でもやっぱり悪だから、その行いを認めるわけにはいかなくて」
パソコンの前にたどりついたから、今度は本棚に向かって転がす。
「正義も後味のいいことばっかりじゃないぞっていう、そういうことを表現できる悪役じゃないとなあ……」
どうにも行き詰まった。
「あー、ダメだ」
いくら考えてもバカな展開しか思いつかない。あるいは、誰も共感できないほど陰気なのとか。両極端だ。
天気が雨なせいだろうか
こういうときは気分転換が必要だ、と蔵人は考えた。
外出しよう。ちょうど昼時だし。
うん、そうしよう！
土砂降りではないものの、傘なしではちょっと厳しいくらいの天気だった。
雨の中で傘を差さずに踊る人がいてもいい、なんて言葉があったっけ。
言ったのはヨハン・ゲーテだったか、それともネゴシエーター・スミスだったか。蔵人はそんなことを考えた。
「まあ、私は風邪引きたくないから傘さすけれど」
それもまた自由だろう？ と蔵人は問いかけるようにつぶやく。もちろん独りだから、誰も答えてはくれないのだけど。
自由、というのは創作活動におけるキーワードだと彼は思う。
どんな登場人物を作るも自由ならば、表現したいものに合わせた縛りのある創作も自由というものだ。
なんだか気持ちが楽になってきた。自由は不自由の際に生ずというも可なり、という言葉もあるではないか。これは即答できる、福沢諭吉の弁だ。
さて。
ランチタイムの飲食店街を眺め、傘持たぬ手を蔵人は腰にあてる。
しかし今日のお昼を、高級レストランのフルコースにするわけにはいかない。……そこは不自由だな。
かといって、何でもかんでも思い通りになれば自由なのか！？
それはそれで思い通りになることに縛られてしまうのではないか。
「お？」
もしかして僕、いまひとつの真理にたどり着いたのでは？
そんな風に思った。
自分を誉めてやりたい。
自由とは何をしてもいいけれど、同時に責任も負わねばならない！
我ながら良いこと思いついたじゃないか。
しかし、とも蔵人は思うのである。
責任をともなう自由に身を置いているとき、その心は自由なのか――？
やはり自由というやつは難しい。
「なんか哲学的になってきたな……」
と独りごちたとき、
じゅぅー。
そんな音が蔵人の耳をとらえた。
自由にあらず、『じゅぅー』とはこれいかに。
これは……焼肉を焼く音じゃないか！
かくしてこのとき、蔵人は豁然と悟りを得たのである。
そうだ！ 昼から焼肉だ！ 一人焼肉というやつは自由だ！
そうと決まれば話は早い。
お昼のサービスランチ絶賛実施中の焼き肉店に、えいやと蔵人は飛び込んだのである。
創作活動は無闇にエネルギーが必要だ。
ゆえに腹がくちくなれば、なんだかアイデアも浮かんでくるものである。
タンミノロースにカルビ、カルビ、カルビ！
タレは三種類、ご飯大盛りでたっぷり味わって、蔵人は自分の腹部をさする。
ふう、ちょっと浮かんできたぞ。
ご機嫌な調子で蔵人は箸を置き、スマホのメモ帳を開いてアイデアを書き留める。
無闇に難しく書く必要はないが、ギャグ過ぎてもいけない。だから今回は、
――その行いで幸せになった人もいるけど……不幸になった人もいて、と。
こんなテーマはどうだろう？
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年09月16日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年09月23日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年09月23日 11時00分
