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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆
なんとなく人の流れに流されて。
北里 雅樹は竹燈籠を、椎井 莉鳥は笹飾りを、スタッフに手渡されるポイントに立っていた。
渡されてしまったものは仕方がない、といった様に、莉鳥は淡々と川へ近寄りしゃがみ込めば、両手で笹飾りをそっと水面に放した。
その仕草が思ったよりも丁寧で、何か大切なものを扱うような雰囲気で。
ゆっくりと流れていく笹飾りを、どこか切なげに見続ける莉鳥の横顔を、雅樹は見つめる。
感情自体が表情に出ているわけではない。それは相変わらずだと思った。
それでも目が離せないのは、彼女がいつもと違う恰好だからだろうか。
淡く周囲を照らす提灯の光に浮かぶ姿と表情が、いつも以上に何を思っているのか判らなくしているからだろうか。
その横顔同様に、判らない自分の気持ち。
雅樹は莉鳥の隣りへとしゃがみ込んで、自身の竹燈籠を川へ置けば少し力込めて押し出した。
先を流れて行った莉鳥の笹飾りへ、追いつくように。
並んで流れて行けば、見えるものはあるだろうかと単なる思い付きと勢いだけれど。
そんな雅樹の様子にも、莉鳥は黙ったままただただ、彼の竹燈籠も視界に入れて見つめていた。
ﾟ･*:.｡..｡.:*･ﾟﾟ･*:.｡..｡.:*･ﾟ･*:.｡..｡.:*･ﾟ
川の前で、お互いの笹飾りが流れていくのを寄り添って見つめている、紺と灰色の二つの浴衣。
未だ信じられないような幸福感に胸を高鳴らせながら、白草 朱乃がポツリと、傍らの温もり主である呉井 陽太へ呟いた。
「呉井先輩、天の川へのとは別にお願い事……聞いてくれますか」
控えめな言の葉に、陽太は先を促すよう頷いて見せる。
「先輩の事、下の名前で呼んでもいいですか？」
「……そんなの、オレの方こそ願ったり叶ったりだよ」
「『陽太さん』……えへへ、慣れなくて恥ずかしいです」
微笑んで応じた陽太へ、はにかんだ声音が優しく耳をくすぐった。
愛しさを確かめるように、その小さな肩を抱き締めながら陽太は流れていく笹飾りを、いつかの遠い記憶見つめるように再び捉えて。
辛い付き合いとなった過去の人が遠く、小さくなっていくのを、今ある大切な温もりと共に眺めるのだった。
ﾟ･*:.｡..｡.:*･ﾟﾟ･*:.｡..｡.:*･ﾟ･*:.｡..｡.:*･ﾟ
灯りに揺らめくノウゼンカズラを、同じように揺らめく蒼の瞳に捉えながら。
結城 日和は花のような形をした笹飾りを、神嶋 征一郎は竹燈籠を、それぞれ静かに流してその様子を眺めている。
「願いを込めても、穢れを流してもいいんだね。神嶋くんはどっちにしたの？」
「……自分は……」
控えめに見つめて来る蜂蜜色の光は、征一郎が言葉を飲み込んでもそれ以上追及はしてこない。
ただただ、微笑んで見守ってくれている。
―― 今なら……自分から離れて言った原因が分かる、気がする……。
それは過去の、己と付き合った彼女たちへの贖罪の気持ち。
当時の自分は、去る者追わず。音楽の、ヴァイオリン以外への関心はとかく低かったのだ。
それは今も大きく変われてはいないであろう。ただ、お節介な友人たちのおかげで、視野は広がったと認めている。
その中でも彼女は……結城日和だけは……。
「今日はありがとう」
頬をうっすらと紅はらませて、日和は言葉を彼へ贈る。
いろいろあったけれど、今日の私は素敵でいられたかな？
神嶋くんにとっての、素敵な女の子で少しは在れたかな？
日頃は控えめなようで、それでいてずっと抱く想いには正直な瞳は、隠さずそう伝えて来る。
―― これが、誰かを愛おしいと思う気持ち、か。
温もりをこの胸に抱いた時に自覚したモノを、征一郎は確かめるように心の水底へ響かせる。
今更過ぎる。
何人と付き合ってきても、こんな気持ちは生まれなかったのだ。
もしも、付き合ってくれていた者たちがこのような想いを抱いてくれていたのだとしたら……。
そう初めて気付いた時には遅すぎて、せめて、と気付けば竹燈籠に懺悔を届けるように流していた。
こちらへ温かなまなざしを向けてくれている彼女の耳には、自分が渡したイヤリングがキラキラと星のように揺れている。
本当の”自分”を見て欲しい、受け止めて欲しいという思いを込めたそれは、今、叶った。
いや、ずっと叶っていたのだ。
彼女が自分へ気持ちを手渡してくれた時から、ずっと……。
―― ……間違いなく救われている、お前に。
征一郎は、蒼を閉じる。
水面の灯りを、それに照らされる彼女を閉じ込めるように。
神嶋征一郎は 結城日和に 恋をしている
北里 雅樹は竹燈籠を、椎井 莉鳥は笹飾りを、スタッフに手渡されるポイントに立っていた。
渡されてしまったものは仕方がない、といった様に、莉鳥は淡々と川へ近寄りしゃがみ込めば、両手で笹飾りをそっと水面に放した。
その仕草が思ったよりも丁寧で、何か大切なものを扱うような雰囲気で。
ゆっくりと流れていく笹飾りを、どこか切なげに見続ける莉鳥の横顔を、雅樹は見つめる。
感情自体が表情に出ているわけではない。それは相変わらずだと思った。
それでも目が離せないのは、彼女がいつもと違う恰好だからだろうか。
淡く周囲を照らす提灯の光に浮かぶ姿と表情が、いつも以上に何を思っているのか判らなくしているからだろうか。
その横顔同様に、判らない自分の気持ち。
雅樹は莉鳥の隣りへとしゃがみ込んで、自身の竹燈籠を川へ置けば少し力込めて押し出した。
先を流れて行った莉鳥の笹飾りへ、追いつくように。
並んで流れて行けば、見えるものはあるだろうかと単なる思い付きと勢いだけれど。
そんな雅樹の様子にも、莉鳥は黙ったままただただ、彼の竹燈籠も視界に入れて見つめていた。
川の前で、お互いの笹飾りが流れていくのを寄り添って見つめている、紺と灰色の二つの浴衣。
未だ信じられないような幸福感に胸を高鳴らせながら、白草 朱乃がポツリと、傍らの温もり主である呉井 陽太へ呟いた。
「呉井先輩、天の川へのとは別にお願い事……聞いてくれますか」
控えめな言の葉に、陽太は先を促すよう頷いて見せる。
「先輩の事、下の名前で呼んでもいいですか？」
「……そんなの、オレの方こそ願ったり叶ったりだよ」
「『陽太さん』……えへへ、慣れなくて恥ずかしいです」
微笑んで応じた陽太へ、はにかんだ声音が優しく耳をくすぐった。
愛しさを確かめるように、その小さな肩を抱き締めながら陽太は流れていく笹飾りを、いつかの遠い記憶見つめるように再び捉えて。
辛い付き合いとなった過去の人が遠く、小さくなっていくのを、今ある大切な温もりと共に眺めるのだった。
灯りに揺らめくノウゼンカズラを、同じように揺らめく蒼の瞳に捉えながら。
結城 日和は花のような形をした笹飾りを、神嶋 征一郎は竹燈籠を、それぞれ静かに流してその様子を眺めている。
「願いを込めても、穢れを流してもいいんだね。神嶋くんはどっちにしたの？」
「……自分は……」
控えめに見つめて来る蜂蜜色の光は、征一郎が言葉を飲み込んでもそれ以上追及はしてこない。
ただただ、微笑んで見守ってくれている。
―― 今なら……自分から離れて言った原因が分かる、気がする……。
それは過去の、己と付き合った彼女たちへの贖罪の気持ち。
当時の自分は、去る者追わず。音楽の、ヴァイオリン以外への関心はとかく低かったのだ。
それは今も大きく変われてはいないであろう。ただ、お節介な友人たちのおかげで、視野は広がったと認めている。
その中でも彼女は……結城日和だけは……。
「今日はありがとう」
頬をうっすらと紅はらませて、日和は言葉を彼へ贈る。
いろいろあったけれど、今日の私は素敵でいられたかな？
神嶋くんにとっての、素敵な女の子で少しは在れたかな？
日頃は控えめなようで、それでいてずっと抱く想いには正直な瞳は、隠さずそう伝えて来る。
―― これが、誰かを愛おしいと思う気持ち、か。
温もりをこの胸に抱いた時に自覚したモノを、征一郎は確かめるように心の水底へ響かせる。
今更過ぎる。
何人と付き合ってきても、こんな気持ちは生まれなかったのだ。
もしも、付き合ってくれていた者たちがこのような想いを抱いてくれていたのだとしたら……。
そう初めて気付いた時には遅すぎて、せめて、と気付けば竹燈籠に懺悔を届けるように流していた。
こちらへ温かなまなざしを向けてくれている彼女の耳には、自分が渡したイヤリングがキラキラと星のように揺れている。
本当の”自分”を見て欲しい、受け止めて欲しいという思いを込めたそれは、今、叶った。
いや、ずっと叶っていたのだ。
彼女が自分へ気持ちを手渡してくれた時から、ずっと……。
―― ……間違いなく救われている、お前に。
征一郎は、蒼を閉じる。
水面の灯りを、それに照らされる彼女を閉じ込めるように。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年09月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年09月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年09月29日 11時00分
